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「タングル」真山 仁

2023/10/24公開 更新
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「タングル」真山 仁


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

カネを出してくれるところと組む

タイトルの「タングル」とは、量子物理学における「量子もつれ」を意味する言葉です。この小説では、量子コンピュータを開発している日本人の大学教授が、シンガポールから開発資金と施設の提供を受けるという話からはじまります。シンガポールからすれば、日本の先端技術をシンガポールの資金と規制緩和で引き寄せ、アジア版シリコンバレーを作ろうというのです。日本人の大学教授からすれば、日本の国や企業がカネを出してくれないのであれば、中国でもシンガポールでもアメリカでもカネを出してくれるところと組むということなのです。


NHK特集の再放送で、東北大学の西澤潤一教授が光通信やサイリスタを開発しているとき、日本の企業が資金を出さなかったことを思い出しました。日本の企業は光通信の将来性にまったく理解せず、開発資金を出さないので、結局、西澤教授はアメリカの研究機関と開発したのです。


・カネを算段してくれ。さもないと、俺は中国と組む(p22)


アジア版シリコンバレー

シンガポールによるアジア版シリコンバレーは、最先端研究施設をシンガポールの島に誘致しようというものです。日本は戦後補償の意味も含めて、東南アジアに開発援助をしてきましたが、日本の岩盤規制で身動きの取れない日本企業が海外に拠点を移すということはありえるものなのでしょう。


この本では、日本側は研究開発した成果は、許可なく製造してはならないというルールを設定しようとし、シンガポール側は「国家繁栄法」という法律で、成果を得ようとするのです。シンガポール側は、日本政府に「国家繁栄法」を認めさせるために、日本関係者を汚職容疑で逮捕します。これは中国でスパイ容疑で逮捕される日本人が多いことへの当てつけなのでしょうか。


・日星両国共同のシリコンバレーをつくるつもりだ・・シンガポールの資金と規制緩和という魔法を注ぎ込むんだ(p37)


量子コンピュータとは

量子コンピュータが本当に物になるのかという議論は別にして、デジタルで計算しているコンピュータをアナログ化する量子コンピュータは、興味深いものです。従来のデジタルコンピュータと比較して、問題によっては圧倒的に短時間で答えを見つけることができる可能性があると言われているのです。


また、日本は規制ばかりで、革新的事業が難しいのも事実でしょう。「出る杭は打たれる」と言われるように日本人は同じ日本人が成果を出すことを許さない妬みの文化があるのかもしれません。小説としては、テレビドラマのような筋書きの説明が多く、出演者に没入することができませんでした。真山さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本では、学生が総理大臣を非難しても咎められない・・・それは、シンガポールでは考えられない。また、日本で愛国心の話なんてしたら笑われたと、留学経験のある部下が言ってました(p213)


・私が、初めて政府の要職に就いた時、これからのエリートは、自らの所管する問題については、すべて自分が命がけで責任を取る覚悟を持て、と、先生はおっしゃいました(p267)


・日本料理の世界では「追い回し三年」って言葉がある・・一番下っ端の見習いのことだ(p168)


▼引用は、この本からです
「タングル」真山 仁
真山 仁、小学館


【私の評価】★★★☆☆(70点)


目次

第一章 ライジング・サン
第二章 ライオン・シティ
第三章 米中旋風
第四章 夢の島
第五章 グッドジョブ
第六章 衝突
第七章 激震
第八章 希望の価値



著者経歴

真山仁(まやま じん)・・・1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収の壮絶な裏側を描いた『ハゲタカ』でデビュー


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