「ベイジン(上・下)」真山 仁


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【私の評価】★★★★★(90点)
■中国で原子力発電所建設を指導する
熱血技術者。
北京オリンピック開催までに
原子力発電所を運転開始させるために
派遣された共産党員。
このまったくキャラの違う
優秀な二人が、ぶつかり合いながら、
原子力発電所を建設していきます。
中国の文化・・・汚職とモラルの低さは、
織り込み済みでしたが、
日本の技術者が優秀であればあるほど、
あの福島第一の事故が
頭に浮かびました。
・原発は、我々に素晴らしい恩恵を与えてくれる。
だが、人間の心に隙が生まれた瞬間、
神の火は、劫火に変わる。(下p284)
※劫火(世界が壊滅するときに、
この世を焼き尽くしてしまうという大火)
■この本では、中国特有のずさんさから
事故が発生しますが、
想定以上の自然災害が起これば、
事故は起こるのです。
安全に停止した東北電力の原子力発電所も、
9mの津波想定に対して
余裕をみて15mの敷地に建設していただけで、
それ以上の津波がくれば
被害は免れないのです。
「風の谷のナウシカ」のように、
人間は原子力を制御しきれないのでしょうか。
・"小さな違和感を見過ごすな、臆病になれ"という
原発マンの鉄則からすれば、
放っておけないものばかりだった・・・
原発という怪物は、人間がわずかでも隙を見せた瞬間、
取り返しのつかない暴走を始める。(上p27)
■中国の権力と金をめぐる争い、
日本にはない大陸の空気の描写に、
著者の筆力を感じました。
純粋に面白く、
原子力について考えさせてくれる
一冊です。
お勧めします。
真山さん、
良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・整理整頓され清潔であれば、汚れや染み、
水溜りを見つけるだけで、異常の印と判断できるからだ。
水滴を見つけたら、事故の端緒と思え!
門田は口うるさく言い続けた(下p214)
・「原発は皆、P(WR)でやるべきなんですよ。
その方が遥かに安全なんだ。何しろPは、
原子力潜水艦のために開発されたんですから、
安全面では絶対なんです」・・・
「核分裂で熱した水で、そのままタービンを
回すなんざ幼稚ですよ。熱水が漏れたら、
とんでもない事態になるんですから」(上p61)
・メルトダウンを防ぐためには、水があればいいんですよね」
・・・消防車の高圧ポンプを使って、
海水で冷やすわけにはいかないでしょうか(下p330)
・日本のライバルメーカーかWCを買収した背景には、
中国大陸での原発建設ラッシュがあると言われていた。
中国は・・・今後は、PWR(加圧水型原子炉)に絞った建設を
進めると発表していた。(下p50)
・汚職や腐敗は、中国にとって文化のようなものだ・・・
「目に余るものだけを、見せしめに取り締まればいい」
が不文律・・・ターゲットは、後ろ盾を失った人間に
限るという至極政治的なものだった。(上p84)
・現場からものが消える事件は後を絶たなかった。
建設資材、鉄筋、セメント、さらに食材や酒まで消えた・・
犯人は間違いなくこの施設関係者なのだが、
咎める者はいなかった(上p232)
・真面目で融通の利かない父は、ある意味、
警察官になるべく生まれてきたような男だった。
しかし中国では、警官とは要領よく袖の下をもらい、
私腹を肥やす職業と同義語だった(下p229)
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【私の評価】★★★★★(90点)
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