「座右の書『貞観政要』-中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」」出口治明
2020/11/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(85点)
要約と感想レビュー
諫言してくれる部下
ライフネット生命社長の出口さんが「貞観政要」をお勧めしていたので、手にした一冊です。「貞観政要」といえば中国の唐の時代に善政を行った第二代皇帝・太宗李世民(りせいみん)の言行録です。「貞観政要」のポイントは、諫言してくれる部下を持ち、多くの人の意見を聞いたうえで判断するというものです。
当たり前のように聞こえますが、トップとなるとゴマすりが集まってきて真実とゴマすりを見分けるのが難しくなってしまうのです。「貞観政要」では、自分の信念に従い、勇気を持って正しいと思うことを上司に諫言(かんげん)すべきであるとし、仮に嘘を言ってもいつかは露見するからだという。
ゴマすりはそれなりに賢いので、よほど丁寧に接していないと、見抜くことはできません・・・直言してくれる人間がいないと、忙しい上司は絶対にゴマすりには勝てない(p128)
野望を果たそうとしてはいけない
組織のトップともなれば、だれも叱ってくれなくなります。気に食わない部下は更迭できる。勢い、何でも口を出したくなるのが人の性(サガ)ですが、一度口を出せば部下は上司のお伺いを立てるようになる。つまり部下は指示待ち族が多くなり、ゴマすり族によって自分の思うとおりになるので、間違いが正されないのです。
こうなると自分の野心のままに突き進むのを止めるものはなくなり、結果、大きな失敗をするのだという。だから、部下にいったん権限を与えたら、その権限は部下のものであり、部下に仕事を任せるべきなのです。成果が不満であれば、その部下を更迭すればいいのです。
君主が心に留めておくべき10の思慮(十思)・・・足るを知る・・・人民を過度に働かせてはいけない・・・大きなリスクを冒してまで、野望を果たそうとしてはいけない(p81)
組織の上司と部下の課題は変わらない
組織には上司と部下がおり、人が作るものがゆえに昔も今も課題は同じなのでしょう。任せすぎれば放任となり、口を出せばやらされ感が出る。その加減が大事なのです。人それぞれで正解は違うので、いろいろ試行錯誤をして自分に合ったスタイルを見出したいものです。
ちなみに、最近のグローバル企業では部下にうつ病患者が出たら、因果関係を一切問わずに直ちに上司を更迭する会社もあるそうです。時代とともに、上司の責任も問われるということなのでしょう。出口さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・タテ軸は、先人の話を聞くことであり、本を読むことです。ヨコ軸は、自らの足で世界を歩き、見聞を広めることです(p164)
・仕事は全体の3割しかないのですから、極論すれば、どうでもいいことです。人間にとっていちばん大事なのは、いいパートナーや友人を見つけて、食べて寝て遊んで次の世代を育てることであり、仕事は、ほどほどでいい(p207)
【私の評価】★★★★☆(85点)
目次
序章 「世界最高のリーダー論」はどうして生まれたか―ものごとの「背景」を押さえる
第1章 リーダーは「器」を大きくしようとせずに、中身を捨てなさい―「権限の感覚」と「秩序の感覚」
第2章 「部下の小言を聞き続ける」という能力―「諫言」の重要性を知る
第3章 「いい決断」ができる人は、頭の中に「時間軸」がある―「謙虚に思考」し、「正しく行動」する
第4章 「思いつきの指示」は部下に必ず見抜かれる―「信」と「誠」がある人が人を動かす
第5章 伝家の宝刀は「抜かない」ほうが怖い―「チームの仕事」の重要なルール
第6章 有終の美は「自分」にかかっている―ビジネスを「継続」していくために
著者経歴
出口 治明(でぐち はるあき)・・・1948年、三重県生まれ。ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。ロンドン現地法人社長、国際業務部長等を経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師等を務める。2006年ネットライフ企画株式会社設立、代表取締役社長に就任。2008年にライフネット生命を開業、2012年東証マザーズ上場。2013年より現職
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