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「仕事に効く 教養としての「世界史」」出口 治明

2024/03/05公開 更新
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「仕事に効く 教養としての「世界史」」出口 治明


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

奈良時代の国際情勢

学校で歴史を学んだことがない本のソムリエは、本を読んで歴史を学ぶしかありません。なんと、出口さんも大学で歴史を学んだわけではなく、本を読みながら歴史を紐解いていったのです。歴史が好きな出口さんは、疑問を持ったら、それを調べてみる習慣を持っているようです。


例えば、日本の7世紀末の奈良時代には持統天皇、元明天皇、元正天皇、孝謙天皇など女性が天皇になっています。男系とはいえ、なぜ日本において女性天皇が続いたのでしょうか。


出口さんは持統天皇と同時期に、唐では武則天(則天武后)が即位し、新羅でも7世紀に善徳女王と真徳女王と二代続けて女性の王が生まれていることを指摘しています。7世紀に白村江で負けた日本は、中国大陸・朝鮮半島を強く意識しており、鹿鳴館時代のように貴族たちは胡服・乗馬服を着て、椅子と机で生活をしていたのです。女帝も中国、韓国での女帝誕生を意識していたのではないか、と出口さんは考えているのです。


「古事記」や「日本書紀」も、俺たちはちゃんとした歴史のある立派な国なんだと唐に読んでもらうために書いたものだろうと思います(p23)

ヨーロッパの歴史はキリスト教の歴史

ヨーロッパの歴史はキリスト教の歴史です。その影響が、日本にも及ぶことがあります。例えば、16世紀にレオ十世が、サン・ピエトロ寺院再建の費用を捻出するために免罪符を発売します。これを批判したドイツのルターの宗教改革でローマ教会は北欧、ドイツの信者を失いました。信者を増やすためローマ教会は、イエズス会を使ってアジアに進出したのです。


16世紀の日本の種子島に鉄砲を持ったポルトガル人が漂着しますが、その6年後にイエズス会宣教師フランシスコ・ザビエルが島津藩を訪れています。この時期にイエズス会が日本に上陸したのは、宗教改革で追い詰められたローマ教会の信者獲得キャンペーンの一環であり、鉄砲の伝来もその影響が考えられるのです。


キリスト教は、原則として専従者を持たないイスラム教とは異なり、大勢の専従者を抱えているので喜捨してくれる信者を獲得しないと生きていけない宗教なのです(p140)

宗教は貧者の阿片

当時も大多数は貧しい被支配階級でした。出口さんは、宗教は不幸な人々の心を癒す「貧者の阿片」だとしています。こうした見方ができるのも、歴史を知ることで、人という生物の特性を知ることができるからでしょう。


今も歴史が作られているのであり、歴史が繰り返すとすれば、人の特性はそれほど変わらないのではないかと思うのです。社会人になるとテストはないので、気軽に歴史を学びたいと思います。出口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・隋、唐は、五胡十六国の中から生まれた国家です。鮮卑という遊牧民の中の拓跋部という有力な部族が最終的に権力を握って樹立した国家です。ローマ帝国に侵入した諸部族の中で、最後にフランク族が残ったのとよく似ています(p22)


・テンプル騎士団・・フィリップ四世は、この赤十字のついて白衣を着る騎士団に目をつけ、諸々(もろもろ)の罪を負わせて捕え財産を没収してしまいました(p196)


・実際にローマと正倉院をつないでいたのはシルクロードではなく、草原の道であり海の道であったと思います(p241)


・銃の出てこない西部劇はありません・・アメリカにはどうしても許せない悪い奴は最後は暴力で片をつけるという文化が、残っている(p295)


▼引用は、この本からです
「仕事に効く 教養としての「世界史」」出口 治明
出口 治明、祥伝社


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

第1章 世界史から日本史だけを切り出せるだろうか
―ペリーが日本に来た本当の目的は何だろうか?
第2章 歴史は、なぜ中国で発達したのか
―始皇帝が完成させた文書行政、孟子の革命思想
第3章 神は、なぜ生まれたのか。なぜ宗教はできたのか
―キリスト教と仏教はいかにして誕生したのか
第4章 中国を理解する四つの鍵
―難解で大きな隣国を誤解なく知るために
第5章 キリスト教とローマ教会、ローマ教皇について
―成り立ちと特徴を考えるとヨーロッパが見えてくる
第6章 ドイツ、フランス、イングランド
―三国は一緒に考えるとよくわかる
第7章 交易の重要性
―地中海、ロンドン、ハンザ同盟、天才クビライ
第8章 中央ユーラシアを駆け抜けたトゥルクマン
―ヨーロッパが生まれる前の大活劇
第9章 アメリカとフランスの特異性
―人工国家と保守と革新
第10章 アヘン戦争
―東洋の没落と西洋の勃興の分水嶺
終章 世界史の視点から日本を眺めてみよう



著者経歴

出口 治明(でぐち はるあき)・・・ライフネット生命保険株式会社会長兼CEO。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。1988年に生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長に就任し、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に退職。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師、慶應義塾大学講師などを務め、2006年、ネットライフ企画株式会社(2年後、現社名に商号変更)を設立、代表取締役就任。2013年より現職。 訪れた世界の都市は1000を超え、読んだ歴史書は5000冊以上。母校京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義で歴史の講義を不定期で受け持った。


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