「語学の天才まで1億光年」高野 秀行
2024/03/06公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(95点)
要約と感想レビュー
語学はあくまでも道具
著者は大学生時代に、幻の怪獣ムベンベを探しにアフリカへ行っていたという。そして現地調査のために、これまで25以上の地元の言語を学んできたというのです。なぜ地元の言語かといえば、現地に溶け込むためには、地元の言語を学ぶのが最短距離で、片言を喋るくらいになれば、それが現地人にウケる!のです。
冒険をしながら、旅先のローカル言語を学び、現地人と交流する醍醐味に著者は目覚めてしまったのです。語学はあくまでも道具であり、話したいことがあれば語学はできるようになるとうのが、著者の成功の方程式なのです。
「目的を達成するためには言語という魔法を手に入れるもの」というRPG意識が根付いてしまったため、むしろ新言語の学習にワクワクしてしまう有様だ(p133)
ネイティブの真似でけっこう通じる
著者の語学の学び方は、ネイティブを先生にしてメモし、辞書を引き、繰り返すというおなじみのものです。多少意味がわからなくても、ネイティブが言うとおりに話せば、けっこう通じるのです。例えば著者がフランス語を学んだときには、1時間の授業の雑談というか先生のリアルなフランス語を丸ごとテープレコーダーに録音して、すべて文字起こししたという。次のレッスンでフランス語の先生にチェックしてもらうのです。
著者は現地人と交流するために語学を学んでいるのであり、「ウケるかどうか」を重視していました。だから、言葉の正しさよりいかに現地の人の普段使いの言葉を記憶するようにしていたのです。そして、実際に外国旅行しながら語学を上達させたいと思ったら、自分よりできる人と一緒に行かないことが、著者のアドバイスです。なぜなら、語学ができる人が近くにいれば、その人に頼ってしまい、自分が語学を学ぶチャンスがなくなってしまうからです。
話したいことがあれば語学はできるようになる(p34)
誰も行けないところへ行く
著者は子どもの頃から世界の秘境で古代遺跡を発掘したり、未知の動物を探索したいと思っていたという。そのせいか、20代の頃も、「誰も行けないところへ行って、誰にも書けない本を書かねば」と行動し続けていたのです。具体的には、アフリカで怪獣を探したり、タイとミャンマー国境の麻薬地帯に潜入して、ケシを栽培したりしています。確かに誰も挑戦しないであろう冒険と、有言実行におののきました。
アフリカで悪徳警官に拉致されたり、インドでぼったくられ、全財産を盗まれたり、冒険らしいエピソード満載です。著者の人生そのものが「冒険」で満ち溢れているのです。 著者の本はフォローしていきます。高野さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・インドの旅・・特に「向こうから話しかけてこる人間は絶対に悪人」と肝に銘じていた(p25)
・授業が始まって数日後には「共産党は「共産党は人民のために奉仕する」と言っているが、実際には「人民が共産党に奉仕する」だ」という例文を作って黒板に書き、私の方がギョッとした(p246)
・クリスチャンの言語研究は特に辺境に強い・・宣教師は辺境の村に入ると、まずモノを配ったり病気を治療したりして民心をつかむ。次に行うのが「聖書の翻訳」である(p280)
▼引用は、この本からです
高野 秀行、集英社インターナショナル
【私の評価】★★★★★(95点)
目次
第一章 語学ビッグバン前夜(インド篇)
第二章 怪獣探検と語学ビッグバン(アフリカ篇)
第三章 ロマンス諸語との闘い(ヨーロッパ・南米篇)
第四章 ゴールデン・トライアングルの多言語世界(東南アジア篇)
第五章 世界で最も不思議な「国」の言語(中国・ワ州篇)
著者経歴
高野 秀行(たかの ひでゆき)・・・1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションや旅行記のほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。1992-93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、2008-09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。
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語学はあくまでも道具であり、多くの方と交流をしたいがために多くの言語を学んでいった姿勢に感服させられました。よい本の紹介をありがとうございます・