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【書評】「文藝春秋SPECIAL 2017年秋号 (学校では学べない世界近現代史入門)」文藝春秋

2018/08/07公開 更新
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文藝春秋SPECIAL 2017年秋号 (学校では学べない世界近現代史入門)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー


なぜヒトラーが権力を持てたのか

近代の歴史について、30以上のトピックをそれぞれ8ページの分量にまとめた一冊です。なぜ第一次世界大戦は起こったのか、なぜ日本とアメリカが戦ったのか、なぜヒトラーが権力を持てたのかなど、一つひとつが独立しているので読んでいて飽きません。


例えば、なぜヒトラーが権力を持てたのかといえば、国会に代わって政府が法律を制定することを認める全権委任法が成立したからです。これでヒトラーに行政権と立法権が集中することになったのです。


ナチスの党首アドルフ・ヒトラーが、大統領バウル・フォン・ヒンデンブルクによってドイツの首相に任命される・・・ヒトラーが打った次の手が、1933年3月23日のいわゆる全権委任法である。これは国会に代わって政府が法律を制定することを認めるものであり、これによって国会は事実上、立法府としての役割を奪われることになった(大竹)(p154)

なぜ日本とアメリカが戦ったのか

この本のトピックを読んで感じるのは、歴史とはメンツで動いている部分があるということです。例えば、日本は中国から撤退のポーズだけでも取れなかったのは、日本は、中国の満州が日本の生命線だと思っていたからです。


満鉄を退職した後の外務大臣松岡洋右は、「満蒙は日本の生命線」というスローガンでキャンペーンを打ち、満州から手を引くなどもっての外という空気を作ったのです。日本はそうした空気の中、満州から手を引くふりさえできなかったのです。


国家が組織として動いているとき、その中で大きな方針変更はなかなかできるものではないのです。全体に責任を持つ人が決断しなければ、愚かな方針でも変更できないのでしょう。


日本は、中国から撤退してアメリカに対抗する意思のないことを示し、ソ連との戦争を準備すれば、アメリカは優先順位の高い敵を打倒するために、日本の支援に回る可能性が高かった(橋爪)(p125)

なぜ第一次世界大戦は起こったのか

また、なぜ第一次世界大戦は起こったのかといえば、ロシアが日露戦争に負けたからだという。日本に敗れ、東側での南下に失敗したロシアは、西側のバルカン半島への介入を強めセルビアやモンテネグロへの介入を強めていったのです。


歴史というものは、学べば学ぶほど楽しくなってくるのだと思いました。たとえその歴史を学んだ私たちがその歴史に学ぶことができないとしても、それでも歴史は作られていくのです。今も世界の歴史が、大きく動いているのだと思います。文藝春秋さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・「倭寇」は「海賊」といわれますが、世界史を眺めると、「海賊」と「商人」はコインの表裏であることがわかります・・・権力が不在になると、自分の身は自分で守らなければならなくなり武装化せざるをえなくなる(出口)(p9)


・16世紀にキリスト教に入信した大村純忠は長崎をイエズス会に寄進してしまいました・・将軍を頂点とした武士の世界の秩序が根底から崩壊する危険性さえあります(磯田)(p11)


・260年続いた「徳川の平和」によって、日本は得たものも多いと思いますが、その間に西欧諸国では産業革命が起こり、国民国家が成立していった。「鎖国」をしていなければ、この差は生じなかったのではないでしょうか(出口)(p13)


・幕末の成人識字率は40%はあったと推定されます。これはヨーロッパの識字率と比較すると、プロイセン・イギリス・フランス・オランダより低く、イタリアよりは高い。ロシアよりはずっと高い(磯田)(p16)


・国民軍が本格的に編成されるようになったのは、フランス革命以降のことである・・・もしマキャヴェリの構想が実現して国民軍が編成されていたら、イタリアはナショナリズムの発祥地となっていたかもしれない(中野)(p39)


・面白いのは、ピアノの進歩です。18世紀には小さな音しか出なかったのが、19世紀も後半になってピアノ線に強度の高い炭素鋼が使われるようになり、それを何トンという力で引っ張って、今のような大きな音が出るようになった(片山)(p78)



【私の評価】★★★★☆(80点)



目次

地球儀の上の幕末
 鎖国か開国か? グローバリズムと日本の選択 出口治明×磯田道史
そのとき世界史が動いた! 現在がわかる最重要テーマ24
 ルターにも想定外だった宗教改革 深井智朗
 リネン、砂糖 ヨーロッパを勝者にした世界商品 玉木俊明
 衰退の運命に抗したマキャヴェリ 中野剛志
 大哲学者ライプニッツが構想した「新世界秩序」 国分功一郎
 アフリカ奴隷貿易と世界資本主義システム 赤阪賢
 もしも七年戦争でフランスが勝っていたら 鹿島茂
 産業革命でイギリス料理は「まずく」なった 小野塚知二
 金融史を変えたイングランド「中央銀行」 岩村充
 西洋近代史は音楽で学べ! 片山杜秀
 幕末日本を直撃した英露グレートゲーム 中西輝政
 「戦争なしの開国」を支えたオランダ 小暮実徳
 ドストエフスキーと「テロルの時代」 亀山郁夫
 大清帝国はなぜ滅んだか? 杉山清彦
 オーストラリアから見た日英同盟 竹田いさみ
 ロシア革命 100年後の教訓 池田嘉郎
 近現代史を動かした5つの戦争 橋爪大三郎
 ゲーム理論で解く 第一次世界大戦の「不合理」 吉野太喜
 世界大戦の"負債"が起こした大恐慌 竹森俊平
 引き裂かれたトルコ革命 今井宏平
 「行政国家」がヒトラーを生んだ 大竹弘二
 文化大革命 毛沢東世界覇権の野望 楊海英
 シリコンバレーを支配するイデオロギーの正体 橘玲
 石油支配を我が手に OPECを創った男たち 岩瀬昇
 冷戦「冷たい戦争」か「長い平和」か 細谷雄一
 「9・11」はアメリカを変えてしまった 宮家邦彦
 2070年「長い20世紀」が終わる 吉見俊哉
もっと知りたい! 必読深掘りブックガイド
 グローバル・ヒストリーとは何か 川北稔
 伝記・評伝 東谷暁/歴史小説 中条省平/科学技術 橋本毅彦/中国を読む 梶谷懐
特別講義 軍事を知れば日本史がわかる 本郷和人
大日本史・最終回 太平洋戦争の真実 山内昌之・佐藤優


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