マネロンの手法事例「マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで」
2020/12/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
15年前と古い本ですので、当時のライブドアの企業買収・株式分割による錬金術や山口組の割引債による海外送金が紹介されています。現在では規制が厳しくなっているはずですので、割引いて読んでいきました。
マネーロンダリングとは、犯罪や裏金を合法的なお金に変換することです。1970年代バチカン銀行が麻薬資金をマネーロンダリングしていた事件では、犯罪を追求しようとした教皇や多くの関係者が暗殺されたという。
・ジェッリは、麻薬資金を洗浄するための大規模なマネーロンダリング装置を必要としていた。それにもっとも好都合なのが、バチカン銀行だった・・・当時、カトリック教会の最大の敵はマルクス・レーニン主義であり、バチカンのお膝元であるイタリアですら共産化の脅威に晒されていた。そのためバチカンは、マネーロンダリングで得た利益で反共組織や反共団体を秘密裏に支援していたのである(p153)
興味深いのは、庶民の憧れるプライベートバンクが特別な商品でお金を増やしてくれるというのは幻想であると断言していることです。そもそも数億といった個人の資金は金融機関から見れば小口でしかなく数十、数百億円を運用する機関投資家でさえ損失を出しているのに、個人投資家を優遇するはずがないのです。
スイスのような伝統的なプライベートバンクは匿名性という守秘義務が守られるということが重要だったのですが、現在は真の所有者を把握し、怪しい取引は報告することが義務付けられています。現在の金融機関はあくまでも合法的な枠内で営業しており、取引は監視されていると考えてよいのでしょう。
・数億円規模の資金した持たないプライベートバンクの顧客は、金融の世界ではただの"ゴミ"である。彼らが機関投資家以上に優遇されるというのは、なんの根拠もない幻想にすぎない(p99)
15年後の現在は、仮想通貨がマネーロンダリングに使われているようです。テロや犯罪はなくならないし、そのための資金の移動もなくなることはありません。今も大量の裏金が流通しています。ぜひ、日本もマイナンバーと預金を紐付けて、資金の流れを把握してもらいたいと感じました。橘さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・北朝鮮・・・バンコ・デルタ・アジアに対する米財務省の制裁理由にも、偽造100ドル紙幣を含む数百万ドルもの現金を受け入れたことが挙げられている。外貨獲得に苦しむ北朝鮮政府の通貨偽造はいまだに行われているのである(p128)
・ドルが唯一の"世界通貨"の地位を得たのは、テロリストや麻薬組織を含め、誰もがドル紙幣を受け取るからである・・・「テロとのたたかい」によって犯罪者やテロリストの資金をドルから切り離せば莫大な額のマネーがユーロなど他の通貨に流れ、やがては新たな世界通貨が誕生するだろう(p140)
・マネーロンダリングの王様は、今も昔も現金のハンドキャリーである・・・SWIFTの例になるように、コンピュータを利用した資金のやり取りは、データさえ手に入れば送金経路を簡単に追跡できる(p186)
・クレスベール証券は、粉飾決算や損失隠しのための特殊な金融商品を販売し、企業の役員や財務担当者に多額のバックマージンを支払う強引な営業で知られていた(p21)
・ニッポン放送株の3分の1を確保するには1000億円程度の資金が必要・・・リーマン・ブラザーズがMSCB(下方修正条項付転換社債)による資金調達を提案する・・・下限転換価額を157円として、毎週1回、平均価格の90%に転換価額を修正する・・・ライブドアの当時の株価は450円前後で、それが174円に下落しないかぎり、リーマンは確実に融資額の10%(=80億円)の利益を得ることができたのである(p87)
・企業買収を行なう際、ライブドアは自社が実質的に運営するファンドに現金で相手先企業の株式を取得させていた。その株式を、相場よりもはるかに高い価格でライブドアの新株と交換すれば、"合法的"に大量の新株を発行できる。その後に株式の大量分割を行ない、株式市場に人為的な品薄状態をつくり出して株価を上げ、高値で自社株を売り逃げるのである・・(違法かどうかは意見が分かれる)(p88)
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
第一章:世にも奇妙な金融犯罪
第二章:プライベートバンクの憂鬱
第三章:北朝鮮はなぜ核兵器が必要なのか
第四章:世界でいちばん短いマネロンの歴史
第五章:誰でもマネロン
著者経歴
橘 玲(たちばな あきら)・・・作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設のメンバー。2002年、金融情報小説『マネーロンダリング』でデビュー
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