「無理ゲー社会」橘 玲
2021/09/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
日本では共産党や朝日新聞がリベラルと自称していますが、本来のリベラルとは「自分らしく生きる社会」であり、自由と自己責任の社会を目指すものです。そして米国ではリベラル化、知識社会化によって、日本では考えられないほど経済格差が拡大し、白人労働者階級の不満が平均寿命の低下となって顕在化しています。
日本においても、米国ほどではないもののリベラル化、知識社会化によって、所得格差が拡大しつつあり、低所得だと結婚できない人も多いという。著者は、こうした社会は、クリアするのが難しいゲーム「無理ゲー」ではないか。「無理ゲー」に絶望している人が増えているのではないかと指摘しているのです。
・「リベラル」の価値観・・・「自分らしく」生きる社会では、社会のつながりは弱くなり、わたしたちは「ばらばら」になっていくのだ・・・自由と自己責任はリベラルな社会の基盤(p32)
こうした経済格差を縮小するために、マイナスの税金によるベーシックインカムや富裕税が検討されています。ただ、ベーシックインカムを採用する場合、移民や在日に支給するのかどうか。支給範囲によって、移民が殺到する可能性もあり、結論が出しにくい問題です。
富裕税についても増税すれば、税金の安いタックスヘブンに財産を移してしまうので、そうした租税回避対策が必須となります。いずれにしろ、アメリカのような自由と自己責任による格差の大きい社会を目指すのか、逆に経済格差を減らすのか、これは政治的な問題なのでしょう。
・1億人を超えるアメリカ人が年収200万円程度の生活をしているのに対し、約1割の上位中流階級(2200万人)の平均所得が22万ドル、上位1%(240万人の富豪たち)の年間平均所得が150万ドルという極端な経済格差(p233)
グローバル化とは、グローバルにルールを統一しようという考え方であり、欧米の格差社会に近づいていくということです。確かにアメリカ大リーグには才能豊かな人材が集まって年収数十億円と夢がありますが、マイナーリーグでは1千万円程度と給与の格差は大きいのです。
「自分らしく生きたい」と誰もが望むと思いますが、その先には自己責任が待っているわけで、逆に極端に平等を目指せば社会主義になってしまうので、そのバランスが大切なのでしょう。
現代社会の課題を示し、やや負の側面を強調して暗くなってしまいましたので、評価としては★3としました。橘 さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・アメリカの白人労働者階級(ホワイトワーキングクラス)だけは平均寿命が短くなっている・・・その原因がドラッグ、アルコール、自殺(p128)
・競争の条件が公平ではない・・・アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)によって、白人労働者が不公平な競争を強いられていると主張する人たちもいる(p9)
・日本では大卒・大学院卒の生涯賃金は2億6980万円で、高校卒の2億910万円より30%多い(2018年)。アメリカはもっと極端で、大卒の収入プレミアムは70~100%(p92)
・知識社会における経済格差は「知能の格差」の別の名前なのだ(p108)
・「自分らしく生きたい」と思う女が増えれば増えるほど恋愛の難度が上がってしまう・・・低所得だと結婚はもちろん彼女もできない(p178)
・母子家庭の母親が働いて得る平均年収は243万円で、児童扶養手当などを入れても世帯年収は348万円にしかならない(p241)
・「情報比較の積極的な効果は希望や刺激であり、消極的な効果は嫉妬心」「下方比較の積極的な効果は感謝であり、消極的な効果は軽蔑」(p262)
・疲弊していた永松は、「シゲ、道に迷ったら知覧に行け。必ず何かが見えてくる」という祖父の言葉を思い出す(p20)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
1 「自分らしく生きる」という呪い
2 知能格差社会
3 経済格差と性愛格差
4 ユートピアを探して
エピローグ 「評判格差社会」という無理ゲー
著者経歴
橘 玲(たちばな あきら)・・・1959年生まれ。作家。早稲田大学卒業。「マネーロンダリング」で作家デビュー。政治や経済についての著作が多い。
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