「感染爆発にそなえる 新型インフルエンザと新型コロナ」岡田晴恵, 田代眞人
2020/03/11|

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【私の評価】★★★☆☆(79点)
内容と感想
■テレビでよく見かける岡田晴恵さんの
一冊です。岡田さんは厚生労働省国立
感染症研究所ウイルス第三部研究員から
白鴎大学教育学部教授となっています。
この本は2013年の鳥インフルエンザ
流行の後に書かれた本で、
この鳥インフルの致死率は3割と
今回の新型コロナウイルスよりも
危険なウイルスであったとわかります。
さらに2013年には中東でコロナウイルス
によるMARS(SARSの親戚)が流行しており、
致死率は4割もあったのです。
これら2013年のウイルス感染は拡大を
阻止できたものの、いずれ同じような
ウイルス流行が起こると忠告しています。
・2013年春、中国において、H7N9型鳥インフルエンザウイルスの、人への感染・死亡報告が相次いだ・・・2013年10月20日時点での見かけの致死率は、136人中45人で33%である(p6)
■この本で強調しているのが、
こうした感染力が強く、致死率の高い
新型感染症への事前対策の不足です。
日本ではH5N1型鳥インフルのワクチンが
3000万人分程度国家備蓄されています。
しかし今回のように新型ウイルスが
感染拡大すれば、ワクチンを打っている
時間的な余裕は限られてしまいます。
どうせ3年でワクチンを廃棄していくなら
医療従事者や発電所や電車の運転者など
社会機能を維持する人に事前接種しては
どうかと提案しています。
費用や副作用の問題もあると思いますが、
仮に致死率5割のウイルスが感染拡大したら
どうなるのか想像力が求められるのでしょう。
・現在の(新型インフルエンザ等)特別措置法には、事前接種や事前対応はほとんど盛り込まれていない。医療従事者や社会機能維持者などの、事業継続要請、指示を受ける職種の人びとに対する、感染防御やワクチン接種などの事前対策が欠落している(p119)
■「起こる可能性があることは、いつか必ず
起こる」という言葉が印象的でした。
今回の新型コロナウイルスの死亡率は
数%とされていますが、これだけの
影響が出ています。
MARSは致死率4割、SARSは1割とも
言われているのですから、
さらに最悪ウイルスの発生も
想定しなくてはならないのでしょう。
岡田さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・高速・大量輸送の実現は・・・地球上の一地域で発生した新しい感染症は、地域に限定した「風土病」に留まることなく、瞬く間に大陸を越えて拡大し、大流行を起こす「疫病」となる可能性が高い(p7)
・インフルエンザでは、症状のない潜伏期の感染者を見つけ出すことはきわめて困難である。この間に空港などの検疫を通過すれば、国内に容易にウイルスが持ち込まれる(p98)
・H7N9型鳥インフルエンザは・・・新型インフルエンザとしてパンデミックを起こすことが懸念されている。もう一つは新型コロナである・・・中東呼吸器症候群(MERS)・・・2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のSARSコロナウイルスと近縁であった(p6)
・MERSコロナウイルス・・・鼻咽頭(びいんくう)サンプルでは陽性と判定できなかったが、気管支・肺胞洗浄液と喀痰(かくたん)でウイルスが検出された(p49)
・2013年春以降、中東地域でコロナウイルスの人への感染事例が相次いで報告されている。重症な肺炎などの呼吸器症状を呈し・・感染者数は少なくとも144名・・そのうち死亡者数は62名にも上り、致死率は4割という重症疾患である。感染者の多くが、重症肺炎とともに急性の肝不全を併発していた(p35)
・SARSコロナウイルス・・・初期に情報を隠した中国では、その後、各地に流行が波及し・・実験室で起こった感染事故により、感染が拡大する事態も生じた・・・8098人が感染し、774人が死亡、致死率は約10%とされる(p39)
・これまで約3000万人分のH5N1型インフルエンザウイルスヘノプレパンデミックワクチンが国家備蓄されてきた。しかし、これは、有効に使用されることなく、3年の使用期限が過ぎると順次破棄され、備蓄の更新が繰り返されている・・希望者に事前接種を行い、最悪のシナリオと想定される、悪毒性のH5N1新型インフルエンザが流行した際に、健康被害を少しでも減らし、医療体制の崩壊を回避し、さらには社会機能を維持するという戦略を積極的に検討すべきであろう(p116)
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▼引用は、この本からです。
岡田晴恵, 田代眞人、岩波書店
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
1 H7N9型鳥インフルエンザ
2 MERSコロナウイルス
3 H5N1型強毒性インフルエンザ
4 新しい感染症とどうたたかうか
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