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ワクチンには必ず副反応がある「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西正夫

本のソムリエ 2021/01/12メルマガ登録
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「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西正夫


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

 新型コロナウイルスのワクチン接種が、日本でも実施されそうです。この本では日本のワクチン事情について学びます。日本のワクチンの常識は、世界の非常識。どこが非常識なのでしょうか。


 例えば、海外では害が十分に少ないということが検証され、行われていたワクチン同時接種が、日本では実質的に許されていませんでした。 ワクチン同時接種が許されたのは、なんと昨年10月から。2020年10月から「注射生ワクチン」以外のワクチン同時接種が可能となっています。


 ワクチンの注意書きに「医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」と記載して、医師の判断の責任として自分の責任は回避される仕組みです。さすが頭の良い厚労省です。


・同時接種にみる行政の怠慢・・・同時接種がすぐにも普及する状況にはありません。国が同時接種の明確な方針を示していないからです・・・厚労省が2007年以降に承認したこれらのワクチンは、添付文書(注意書き)に同時接種が可能である旨の記載があります。目を凝らして読むと、「医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」という表現があります(p153)


 また、日本では定期接種と任意接種の二本立てとなっています。世界ではワクチンは定期接種が常識です。


 日本の「任意接種」とは、どういう意味なのでしょうか?例えば子宮頸がんワクチンを定期接種にすれば年3000人の命を救うことができるとしましょう。それなのに「任意接種」にすると、自分の意思と金で打たなくてはなりません。結果して、子宮頸がんワクチンの接種率は1%未満に下がり、今も年3000人のお母さんが命を落としているのです。


 毎年3000人死亡している病気に対して、ワクチン投与による副反応で1000万人に10人程度の健康被害があるとしてもメリットがデメリットを上回るとして、実施するのがワクチンなのに、日本では任意接種としてほとんど接種されていないのです。ワクチンの有効性は世界的に証明されているので接種を中止するのは合理的ではないので、健康被害の批判を回避するために「任意接種」としているのです。さすが頭の良い厚労省です。

・子宮頸がん・・・日本では年間約1万5000人が発症し、約3500人が命を落としています・・・アメリカの予防接種諮問委員会(ACIP)が2011年10月、すべての男児を対象にしたHPVワクチン(4価)接種を推奨する提言をしました(p61)


 ワクチンは必ず副反応がありますので、海外ではワクチンの副反応については被害者は補償制度で守られます。そして製薬会社は免責。免責の意味は「訴訟をおこせば補償は受けられない。補償を受けたら訴訟は起こせない」ということです。


 ところが日本では国の補償はあるものの、重ねて訴訟を起こすことも可能であり、国の補償も認定基準があいまい。さらには任意接種は補償の対象外です。厚労省が罪深いのは、こうした問題を知っていながら、放置しているということなのです。不作為の罪は問われにくいということなのでしょう。さすが頭の良い厚労省です。


・日本の予防接種は定期接種と任意接種の二つに区分されている・・・海外でこのような仕組みの接種制度を設けているところは、筆者の知る限りではありません(p118)


 日本では厚労省の担当者が予防接種の法律を改正しないと現場は何も変わりません。10年前から言われていたワクチンの同時接種が、やっと去年改正されるというのが実情なのです。新型コロナウイルスでワクチンが注目されると思いますが、コロナをきっかけにワクチンの問題が解決されることを期待します。


 大西さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本国内で通常のインフルエンザ(季節性)に感染する人は、年平均で約1000万人と推定されていますが、このうち死亡する人は5000~6000人(p21)


・世界保健機構(WHO)は1982年に、すべての国で自国民すべてにB型肝炎ワクチン接種を行うよう目標を掲げました・・・歯ブラシの共有、飲食物の口移し、衣服の着まわしなど、家庭内での日常的接触がB型肝炎ウイルスの感染原因になり得ます・・・接種を受けた証明がなければ入学を断る。そんなことが、アメリカの小学校では普通になっています(p67)


・日本小児科学会は2011年6月、厚労省宛てに不活性化ワクチンに筋肉注射を認めるよう求めた要望書を提出しています・・・医師が特別に必要と認めれば、添付文書に記載されていない筋肉注射も可能となります。しかし、それはやはり逃げの一手、方便だと思われてもしかたがないでしょう(p160)


・世の中にはワクチンは重大な副作用が多すぎる、・・といった非難をする人たちもけっこういます・・・接種後脳炎症例の発生頻度・・・日本脳炎ワクチンは4300万回で32例、麻疹が1200万回で5例・・・ちなみに、子ども人口1800万人中、予防接種と無関係に起きる脳炎症例は1000例です・・・筆者個人は、必要だからやむなしと考えざるを得ません(p163)


・小児用肺炎球菌ワクチンが承認されたのは2010年でしたが、その前にこのワクチンの費用対効果を調べた報告が出ています・・・ワクチン価格を一本7000円と設定・・・総額は296億円となります。これが費用です。一方、このワクチンの予防効果で使われなくなる(削減される)各感染症(合併症)の費用は、医療費と生産損失(本人の労働賃金や看護・介護費用など)をあわせた削減効果・・・687億円。差し引き391億円の削減効果が期待できることになります(p191)


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▼引用は、この本からです
「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西正夫
大西 正夫、明治書院


【私の評価】★★★★☆(82点)



目次

第1章 侮れないインフルエンザ
第2章 がんを予防する、治療する
第3章 多様化するワクチン、広がる用途
第4章 日本の予防接種は二本立て
第5章 ワクチンのプラスとマイナス
第6章 ワクチン不自由国日本
第7章 ワクチン新時代


著者紹介

 大西 正夫(おおにし まさお)・・・1946年(昭和21年)、北海道に生まれる。1971年、北海道大学文学部英文科卒業。同年、読売新聞社入社。水戸支局、科学部を経て、2000年、調査研究本部主任研究員。2006年に退職、医事ジャーナリストとして活動。現在、埼玉医科大学医学教育センター客員教授、東京医科大学兼任教授


ワクチン関連書籍

「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰宗太郎
「ワクチンは怖くない」岩田健太郎
「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」村中 璃子
「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西 正夫
「ワクチン学」山内一也、三瀬勝利
「新型コロナワクチン: 遺伝子ワクチンによるパンデミックの克服」杉本 正信


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