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「教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」佐伯 夕利子

2023/11/28公開 更新
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「教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」佐伯 夕利子


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

ビジャレアルの育成改革

スペインサッカーリーグのビジャレアル育成部で、日本人の女性コーチとして活躍した著者から、ビジャレアルの育成の秘密を教えてもらいましょう。著者がビジャレアル育成部のコーチであった期間に、ビジャレアル育成部ではメソッドダイレクターやメンタルコーチを導入した育成方法の改革を行っていました。


改革では、育成部のコーチがウェラブルカメラとピンマイクを装着して、指導している様子をメンタルコーチが1対1で記録しながら、コーチがどう声をかけたか、選手の反応はどうか、選手はどう感じたのだろうか、どうあるべきか議論していったというのです。著者も指導の様子をカメラで記録され、横でメモしているメンタルコーチから、ポジティブなメッセージをどのくらい発しているか、同じ選手に何回声をかけたかなどのフィードバックを受けたという。


そこからわかってきたのは、指導中の著者は「右!」「シュート!」などと眼の前の状況にリアクションしているだけということ。会社で上司が部下に「ちゃんとやれ」「なんでできないんだ」と言っているのとあまり変わらなかったのです。


・育成部に所属する約120名のコーチたち・・メソッドダイレクターやメンタルコーチ・・指導者間で意見を交わし、ディベートを繰り返す(p47)


選手が自ら考え判断して行動できること

著者が改革後に意識しているのは、選手のプレーを「いいぞ!」「ちがう!」と評価するのではなく、選手に問いを発することです。選手が自ら考え、判断して行動できることを期待するのです。また、指導する中で無言の選手がいたら、何を考えているのか、どうしたいのか知る努力をするようにしているという。具体的には一対一の面談を増やしたという。


ビジャレアル育成部の選手には、何を言っても、何をやっても、受け入れてもらえると思える環境を提供しようとしています。選手として失敗できる環境こそが、選手の学びの場となるのです。特にビジャレアル育成部の選手は、将来のスター候補を集めているので、技術的なティーチングよりもコーチング的な指導が合っているのでしょう。


・問いをつくることにこころを砕く。選手たちが「学びたい」と自然に意欲がわくような環境を整備する(p159)


スペインと日本の比較

スペインと日本の比較については、スペインでは指導者が子どもに暴力をふるったら警察沙汰になるので、蹴るとか叩くというのはありえないという。また、スペインでは中学生以上はプロでも、90分以上練習しないという。なぜならば、ゲームが90分だからその時間の中で集中して練習したほうが、よいと考えられているのです。


一方の日本を見てみると、著者には日本の選手は、頑張るし真面目だけれども、子どもたちが自分で思考する習慣がないように見えるという。日本のサッカー選手はコーチから言われたとおり、長時間の練習をやらされて、それをこなしているだけなのです。


確かに日本の教育は、まだまだなんだろうな、と感じさせてくれる一冊でした。日本でも先生がカメラで記録され、メンタルコーチに観察されながら授業をやる日が来るのでしょうか?佐伯さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・何を言ってもダメ出しをされる環境では、人は心のシャッターを下ろし何も意見しなくなります(p63)


・日本の子ども・・禁止事項が多いなかで、「これとこれはいいですよ」と示されたものに従って生きている(p174)


・派閥みたいな小グループが形成され、・・・「ここだけの話」が多いのは、成長できない組織(p53)


・元イングランドのプレミアリーグ選手の60%が引退後5年以内に自己破産(p15)


▼引用は、この本からです
「教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術」佐伯 夕利子
佐伯 夕利子、小学館


【私の評価】★★★★☆(86点)


目次

序章 持続可能な人材育成を目指して
第1章 自分の言動に意識をもつ  reflection 
第2章 「問い」を投げる  question
第3章 パフォーマンスを生む言葉を選ぶ  words
第4章 伸ばしたい相手を知る  knowing
第5章 丸テーブルに変える  equality
第6章 「教えないスキル」を磨く  centred
第7章 認知力を育てる  cognitive
終章 好きだからこそ本質を探究したい



著者経歴

佐伯夕利子(さえき ゆりこ)・・・1973年、イランのテヘラン生まれ。2003年スペインの男子リーグ3部で女性初の監督に就任。翌年よりアトレティコ・マドリード女子チーム監督や普及育成副部長等を務めた。2007年、バレンシアCFでトップチームを司る強化執行部のセクレタリーに。2008年ビジャレアルCFと契約、育成部でスペイン代表を育てる重要なポストを担う。2010年からは女子部統括責任者兼トップ監督に就任するなどクラブをけん引。現Jリーグ常勤理事


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