【書評】「インフルエンザ・ハンター」ロバート・ウェブスター
2020/03/02公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
高い致死率のウイルス
新型コロナウイルスの感染拡大を意識して手にした一冊です。過去のインフルエンザ・パンデミック(世界的な流行)では、「スペイン風邪」で2470~3930万人が亡くなりました。
21世紀に入って出てきた「鳥インフルエンザ」は死亡者数百人。ヒトからヒトへは伝播しないものの死亡率は60%であったという。
インフルエンザやコロナウイルスは常に形態を変化させる性質があり、高い致死率のウイルスが、ヒトからヒトへの感染性を持ったときパンデミックとなるのです。今回はまさに中国発のパンデミックなのです。
1997年・・香港で死亡した男の子の呼吸器から分離されたウイルスが、鳥類由来のH5N1亜型のウイルスによく似ていることを突き止めた・・・感染者18人のうち6人が命を落とした(p112)
新型コロナウイルスは致死率数%
今回の新型コロナウイルスは致死率数%であり、最悪のモンスターウイルスではありません。逆に致死率が低いために、ヒトからヒトへ感染する可能性が高くパンデミックとなる可能性があり、ワクチンを製造するまで時間を稼ぐ必要があるのです。
過去のパンデミックでは数か月で収束するパターンが多いためここ数ヶ月が勝負なのでしょう。収束しなければ、全世界にパンデミックとして広がり、一定数の死者が出ることとなるのです。
米国では人口3億2000万人のうち、毎年平均3万5000人がインフルエンザによって死亡している(p15)
人工ウイルスも作れる
本書では死亡者数でみるとパンデミック・インフルよりも、季節性インフルエンザのほうが重要な問題と指摘しています。なぜならパンデミックよりも季節性インフルエンザによる累積死者が多いからです。
さらに恐ろしいのは科学者がスペインかぜのウイルスを解析し同じようなウイルスを製造したり、改良できるという事実でしょう。中国発のウイルスがそのような人工ウイルスでないことを祈るのみです。
ウェブスターさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・抗インフルエンザ薬の備蓄・・・備蓄の考え方は、開発から接種までに6ヶ月かかるとされるパンデミック用のワクチンが準備されるまでの期間、多数にのぼる患者の治療に利用できるように、十分な量の薬剤を予め確保しておく事前準備対策である(p139)
・SARSはSARSコロナウイルス(かぜの一因となるコロナウイルスと同じコロナウイルス科に分類される)により引き起こされる急性呼吸器感染症である・・・致死率は年齢により異なり、25歳未満では1%未満であったのに対して、65歳以上では50%以上にも上った(p146)
・香港大学のユエン・カクユンは・・・SARSコロナウイルスの自然宿主が香港固有のキクガシラコウモリ、食虫性コウモリであることを明らかにした(p147)
・水鳥における鳥インフルエンザウイルスは主に鳥の腸管で増殖し、糞便とともに水中へと排泄され、汚染された水を介して他の鳥へと伝播されることが周知の事実となっている(p38)
・異なる動物由来の2株のインフルエンザウイルスが1匹の動物に同時に感染すると、新しい交雑ウイルスが誕生する(p69)
・季節性インフルエンザウイルスは毎年、表面抗原の一部分が少しずつずれるように連続的に変化していく。人類の多くが、ある流行ウイルスに対する免疫記憶を獲得してそれに抵抗できるようになると、そのウイルスから派生した変異ウイルスが生き残って次の流行を起こすのである(p19)
・毎年のインフルエンザの流行に対しては、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの両方を接種すべきである・・・ワクチンによる効果は科学的に証明されているし、危険性は非常に低いのだから(p200)
・アヒルの仲間はH5N1ウイルスの感染を受けると、体内でウイルスを増やし、大量のウイルスを外部に排泄するにもかかわらず、全く症状を示さない・・・つまり、明らかに健康に見えるアヒルでも、H5N1ウイルスを生鳥市場に持ち込んで、他の家禽やヒトにウイルスを広げることができる非常に危険な存在なのだ(p122)
・(香港の)街の中にある大型の小売店や生鳥市場は、多くの人にとって便利なものであったが、さまざまな鳥種が同じ籠に入れられ、糞尿や分泌物で汚染された籠が積み重ねられ、次から次へと新しい鳥が搬入され、さらに同じ場所で鳥が解体処理されるという状況は、ウイルスが鳥の間で拡散し、さらに鳥からヒトへ伝播するための完璧な環境を作り出していた(p88)
・公衆衛生的観点から見ると、世界中のすべての生鳥市場を永久に閉鎖してしまうことが理想的である。H2、H5、H7あるいはH9亜型のうち、いずれかの鳥インフルエンザウイルスがヒトからヒトへの完全伝播能力を獲得してしまってからでは、市場閉鎖を行ってももう手遅れになる(p195)
・1918年のスペインかぜインフルエンザウイルスを復元させた研究は、科学者たちが想像の及ばないほどの力を持ってしまったことを示した。今やわれわれ科学者は、ウイルスの遺伝子RNAから感染増殖力をもつ完全なウイルスを作り出せる(p180)
【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
第1章 モンスターの出現――1918年のスペインかぜインフルエンザ
第2章 インフルエンザ研究の夜明け
第3章 オーストラリアの海鳥からタミフルまで
第4章 研究はカナダの渡りガモへ
第5章 デラウェア湾――最適な場所で,最適な時期に
第6章 動物種間のウイルス遺伝子伝播の証明
第7章 ウイルス学者の中国訪問
第8章 インフルエンザウイルスの温床「香港」 ──生鳥市場とブタの処理過程
第9章 世界探究 ──1975~1995年
第10章 動かぬ証拠――The Smoking Gun
第11章 鳥インフルエンザ――H5N1亜型の出現と拡散
第12章 21世紀最初のパンデミック
第13章 SARSとヒトに感染する第2の鳥インフルエンザウイルス
第14章 1918年のスペインかぜインフルエンザへの答えを掘り起こす
第15章 1918年のスペインかぜインフルエンザウイルスの蘇生復活
第16章 パンドラの箱を開ける
第17章 未来へ向けて――十分な備えはあるか?
著者経歴
ロバート・ウェブスター(Robert G.Webster)・・・1932年生まれ。ニュージーランド・オタゴ大学修士課程修了。オーストラリア国立大学にてPhD取得。ウイルス学者。米国セント・ジュード小児研究病院教授、WHOインフルエンザ協力センター長などを歴任。米国科学アカデミー会員。ニュージーランド王立学会フェロー。英国王立協会フェロー
新型コロナウイルス関連書籍
「日本の医療の不都合な真実 コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側」森田 洋之
「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰 宗太郎, 山中 浩之
「インフルエンザ・ハンター」ロバート・ウェブスター
「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」宮坂 昌之
「新型コロナの正体 日本はワクチン戦争に勝てるか! ?」森下竜一, 長谷川幸洋
「医療崩壊の真実」渡辺 さちこ、アキよしかわ
「コロナ自粛の大罪」鳥集 徹
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