新型コロナの基本「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」宮坂昌之
2021/01/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(71点)
要約と感想レビュー
日本の新型コロナ死者数は低い
新型コロナ7つの謎とは、目次のとおり次の7つです。
・風邪ウイルスがなぜパンデミック?
・どのようにして感染?
・症状に個人差があるのはなぜか?
・なぜ日本人が感染を免れたのか
・集団免疫の効果は?
・免疫の暴走はなぜ起きるのか
・なぜワクチンを短期間に開発できるのか
最初の3つについてはテレビなどで解説されており、衆知の事実でしょう。風邪ウイルスが強毒化したMARS、SARSなど既に感染拡大した事例があり、ウイルスは変異しながら感染拡大する可能性を持っているのです。
免疫の暴走はなぜ起きるのか?については、解明できていない点が多いようです。また、症状に個人差があることについては、普通の風邪と同じで自然免疫や獲得免疫の強さが違うことであろうとしています。さらに、日本における感染者数、死者数が他の国と比べて低いことについては、よくわからないというのが実情です。
可能性のある説としては、BCGなどの他のワクチンで免疫が鍛えられている説、似たウイルスに既に感染していた可能性、コロナに強い遺伝子を持っている説などです。新型コロナの毒性が低い日本ではワクチン接種が一般的になれば新型コロナもインフルエンザ並みの対応となっていくものと思われます。
インフルエンザによる年間の死亡者総数は日本では3000人以上、新型コロナウイルスでは1600人程度(2020年10月12日時点)(p76)
ワクチンでは重篤な副反応は不可避
ワクチンが短期間に開発され、欧米でワクチン接種が進められている点については、課題として短期間にワクチンを開発しているため、副反応を確認する臨床試験も短期間に進められていることとしています。なぜなら、これまでのワクチン開発では、動物実験から臨床試験を終えて、最終的に認可されるようになるものは全体の4%程度で、さらにバイアスのかからないランダム化臨床試験(=第三相試験)で時間をかけて慎重に判断されていたからです。
こうして開発されたワクチンでも、重篤な副反応は不可避ですが、確率としては非常に低いのです。しかし、日本ではワクチンは普通の薬とは異なり、健康な人が接種を受けるため、きわめて少数でも健康被害が出ると、大きな不平、不満が出て、一度ワクチンに不満が出ると、他のワクチンにまでその影響が及び、接種されるべきワクチンが接種されにくい状況が生まれてきたという。
例えば、おたふく風邪のワクチン接種では、数千人に1人(0.05%程度)に無菌性髄膜炎が起こりますが、ワクチン接種を受けずに自然におたふく風邪にかかったときには約1%の患者に同じ状態が起こるので、ワクチン接種のほうがリスクは低いのです。
抗リウマチ薬のアラバは2003年・・・投与された患者に間質性肺炎が多発し(約5000名の患者中、25名が間質性肺炎で死亡)、このために一般使用が一時中止されたという例があるのです・・・日本では第四相試験(市販後臨床試験)が行われ、投与量を下げれば安全ということがわかりました(p244)
臨床試験の後にワクチン接種が進められる
新型コロナの感染拡大と死亡者の増加を見れば、若干の副反応で死亡者が出ても仕方がないという判断だと思われます。死亡者の少ない日本では、それに相応した慎重な臨床試験の後に、ワクチン接種が進められるのでしょう。
日本はワクチン後進国と言われているようですが、今回の新型コロナウイルスのパンデミックのおかげで、全国民が知ることになりました。今後、厚労省のワクチン行政の世界のなかの非常識が、修正されていくことになるのでしょう。パンデミックも悪いことだけではなかったのです。宮坂さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・きわめて深刻な感染状況だったところでも、一つの地域内の感染した人のわりあいはせいぜい2割ぐらいでした(p157)
・致死率は第一波が5.8%、第二波が0.9%と、第二波のほうがぐんと低くなっています。この傾向は致死率が高い70歳以上でも同様で、第一波は24.5%、第二波は8.7%・・・第一波のときにはPCR検査体制が不十分だったために軽症患者の多くを取りこぼし、このために全感染者数はもっと多かったかもしれず、このために致死率が実際よりも高く出た可能性は否定できません(p172)
・最近の報告では、すべての重症化例でサイトカインストームが起きているわけではなく、血中のサイトカインが高値を示さないまま、免疫細胞が疲弊して機能デキず、最終的には免疫不全のために死にいたる例もかなりあるようです(p201)
【私の評価】★★★☆☆(71点)
目次
第1章 風邪ウイルスがなぜパンデミックを引き起こしたのか
第2章 ウイルスはどのようにして感染・増殖していくのか
第3章 免疫 vs. ウイルス なぜかくも症状に個人差があるのか
第4章 なぜ獲得免疫のない日本人が感染を免れたのか
第5章 集団免疫でパンデミックを収束させることはできるのか
第6章 免疫の暴走はなぜ起きるのか
第7章 有効なワクチンを短期間に開発できるのか
著者経歴
宮坂 昌之(みやさか まさゆき)・・・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授。1947年長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同・医学研究科教授を歴任。医学博士・PhD。
新型コロナウイルス関連書籍
「日本の医療の不都合な真実 コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側」森田 洋之
「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰 宗太郎, 山中 浩之
「インフルエンザ・ハンター」ロバート・ウェブスター
「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」宮坂 昌之
「新型コロナの正体 日本はワクチン戦争に勝てるか! ?」森下竜一, 長谷川幸洋
「医療崩壊の真実」渡辺 さちこ、アキよしかわ
「コロナ自粛の大罪」鳥集 徹
ワクチン関連書籍
「ワクチンは怖くない」岩田健太郎
「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」村中 璃子
「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西 正夫
「ワクチン学」山内一也、三瀬勝利
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