日本はワクチンの発展途上国「ワクチン学」山内一也
2021/01/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
日本はワクチン後発国
日本は承認されたワクチンが少なく、世界でも有数のワクチン後発国です。その原因は、ワクチンの検査官の数が少ないことだという。
また、ワクチンの歴史をさかのぼると、ワクチンの副作用をマスコミが大々的に取り上げたことで大事件となり、ワクチン接種を中断したり、健康被害救済制度を後追いで充実させるなどしています。
つまり、ワクチンの特性を日本国民が理解せず(誤解)、補償と免責を含めた制度が海外に比べ劣っているということです。
我が国では2010年ごろまで、承認されたワクチンの数が少なく、世界でも有数のワクチン後発国と言われてきた・・・第一には、ワクチンの審査に携わる検査官の数が少なかったこと・・・日本における潔癖主義と、不幸にして怒ったワクチンの副作用事件をメディアが過大に取り上げたこと、また、これに対して行政が適切に対応しなかったこと(p141)
ワクチンの承認が過剰に慎重
そもそもワクチンとは人工的に弱い似た病気を移して強い病気を予防するというものです。つまり毎年1万人が死亡する病気を予防するために、10人の副作用が予想されるワクチンを打つこともあるわけです。仮に1万人の命を救うために10人が命を失うとして、あえてそちらを選択するのがワクチン予防接種ということなのです。
ところが日本では副作用をマスコミが大々的に取り上げ、ワクチン審査官を吊し上げることでワクチンの承認が過剰に慎重になっているという。つまり、日本では10人の命を守るために、1万人は死んでもいい、ということを知らせずに、活動家と一部マスコミが世論を誘導している。その世論誘導によって多くの人を殺しているにもかかわらず、その責任は追求されることはないのです。
我が国ではオープンな場でワクチンや予防接種に関する政策を議論し、勧告する機関がない・・・ワクチン審査官は万が一の副作用事件の発生で責任を追求されることに敏感になり、新ワクチンの承認に過剰に慎重になっている(p141)
ワクチンの承認が過剰に慎重
著者は、長年の接種実績から効果と安全性が確認されている水痘、B型肝炎、及び高齢者用肺炎球菌ワクチンが日本では任意接種である点を指摘して、「世界でも有数のワクチン後発国」と断言しています。水痘ワクチンは日本では2014年から定期接種にしていますが、ワクチンの承認は米国より5年早かったのに、定期接種は18年遅れだという。また、B型肝炎の死亡者数は年間62万人ですが、ワクチン接種で死亡の84%を阻止できるという。
日本人は優秀だと思っていましたが、そうでもないのかもしれません。なぜなら、課題と解決方法がわかっていながら、改善することができないからです。新型コロナでワクチンが大量接種され副作用も出ると思いますが、どのようにマスコミが報道するのか見ていきたいと思います。山内さん、三瀬さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・我が国の年間結核死亡者数は3000人以下に低下しているが、世界の開発国と比べると数倍多い割合で患者が発生している(p107)
・ワクチンが効かない肺炎球菌の増加・・・ワクチンの大規模接種によって、ワクチンに含まれる血清型が追放された空白地帯に、ワクチンに含まれない血清型がのさばってきたわけである(p137)
・ワクチンの元来のコンセプトは・・・「最初に人工的に弱い病気を起こさせて、後から流行するかも知れない、似た恐ろしい病気を予防するもの」である。それ故に副作用ゼロというワクチンはありえない・・単に副作用が出たからと言って、ワクチンを敵視し、接種を中止することは賢明な方策ではない(p218)
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
1 古典的ワクチンの時代
2 近代的ウイルス・ワクチンの時代
3 細菌学の進展と細菌ワクチン
4 新しいワクチン開発
5 動物用ワクチン
6 日本における予防接種の現状とワクチン行政の欠陥
著者経歴
山内一也(やまうち かずや)・・・北里研究所、国立予防衛生研究所、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員などを経て、東京大学名誉教授
三瀬勝利(みせ かつとし)・・・国立予防衛生研究所、国立衛生試験所衛生微生物部長、国立医薬品食品衛生研究所副所長などを経て、現在、(独)医薬品医療機器総合機構専門委員
ワクチン関連書籍
「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰宗太郎
「ワクチンは怖くない」岩田健太郎
「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」村中 璃子
「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西 正夫
「ワクチン学」山内一也、三瀬勝利
「新型コロナワクチン: 遺伝子ワクチンによるパンデミックの克服」杉本 正信
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