「医療崩壊の真実」渡辺 さちこ、アキよしかわ
2021/03/12公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
著者はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンというデータ・指標に基づき病院経営の改善を提言するコンサルタントです。800を超える病院のベンチマーク分析を行ってきたという。
この本でわかるのは、病床もICUも新型コロナ前よりも空いているが、医療従事者は分散しており、余裕がないこと。新型コロナを受け入れる能力があるのに患者を受け入れていない病院もあれば、新型コロナを受け入れる能力が低いのに患者を受け入れている病院もあること。
病院間で情報の共有もなければ、どこかで情報を集約して適切な配分をする司令塔もないように見えるのです。
・コロナ感染拡大で患者が多く押し寄せていたにも関わらず、その重症患者の受皿となっているICU等の稼働率は大きく下がっていた・・・ICU等の患者が減っていたとしても、集中治療室で受け入れるコロナ重症患者は、他のICU患者と比べて、医師・看護師・臨床工学技士など医療スタッフの治療やケアの手間は数倍かかる(p116)
面白いのはテレビでやっている国の緊急事態宣言の基準と医療の現場が乖離している点でしょう。
病床が逼迫しているのではなく、医療従事者が逼迫していること。(完璧を目指すと医療従事者はいくらでも必要となるが、ECMOはともかく酸素吸入くらいできればよいのでは?)
病床の使用率が基準となっているが、データ上では入院している人の3/4が症状のない人であること。(ホテルなど隔離施設も整備されてきたので現在は症状のない人は退院しているのかどうなのか?)
新型コロナを受け入れる受け入れないという判断基準がなく、各病院がばらばらに判断しているように見えること。(国や保健所が指導していないのか、指導しても権限がないのでコントロールできないのか、日本医師会は何をしているのか)
国はすべてを把握して状況に対処しているはずなので、こうした疑問に対しデータを引き出し現実を報道するのがメディアの役割なのではないかと感じました。
・一般病床と同じ議論ですが、ICUで逼迫していたのは「病床」ではなく「医療従事者」なのです(p118)
新型コロナの現状について知りたくて手にした一冊ですが、内容は現在の日本の医療の問題と解決の提言書といった趣でした。まだ十分に自分の中で消化できていないのですが、日本では感覚で判断する人が多いのは事実で、データに基づく議論が必要という点については間違いないと思います。
データから何が導き出されるのかについては消化不良ですが、データから医療を見るという点を評価して★4としました。
渡辺さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・2020年3月から4月・・・コロナ患者を含めた入院患者数は平均15~25%減って・・・病床は足りないというよりも空床が増えていた(p42)
・データでは、新型コロナの入院患者の4分の3は特に深刻な症状が出ていたわけではなく、ただベッドで安静にしていた人だというのが事実なのです・・・酸素吸入をしていない患者さんでもだいたい平均2週間という入院日数が出ています・・・PCR検査で2回連続で陰性にならないと退院できませんでした・・・症状がなくなったら自宅に帰るか、利確施設に行けばいいのではないでしょうか(p165)
・東京都52病院のデータ・・・超~重症患者を受け入れる潜在能力があったが受け入れがなかった6病院・・・集中治療・救命救急専門医が不在なものの、重症患者を受け入れていた7病院・・・連携することができれば、患者はより適切な治療を受ける可能性があったかもしれません(p133)
・集中治療専門医の1人体制病院・・・集中治療専門医が全国で1955人(救急科専門医は約5000人、いずれも日本救急医学会HPより)と、それでなくとも十分ではない中・・"多すぎる急性期病院数"が「専門医の分散」に拍車をかけているという実態がある(p137)
・2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起き、日本でもECMOを使って治療しましたが救命率は36%、一方イギリスのECMOの救命率はその倍の72%・・・日本では、集中治療専門医でもECMOを扱える医師が限られるので、医師と患者の「集約化」がコロナ重傷者の救命率を上げる施策となるでしょう(p138)
・今、日本の医療提供体制で問われているのは、急性期病院を、どうやって急性期医療だけに集中させられるかということですが、それを実行に移すにはかなり難しい・・・「軽症なんで来ないでください」などと断ることはできません(相澤孝夫)(p154)
▼引用は、この本からです
渡辺 さちこ、アキよしかわ 、
エムディエヌコーポレーション
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 新型コロナウイルスが病院に及ぼした破壊的影響
第2章 コロナ前から日本医療は「崩壊」の危機だった?
第3章 需要と供給のミスマッチ
第4章「日本病院会」相澤孝夫氏鼎談
著者経歴
渡辺さちこ(わたなべ さちこ)・・・株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長。看護師として臨床に携わったのち、慶應義塾大学経済学部入学。同大卒業後、米国ミシガン大学へ留学し、医療経営学、応用経済学の2つの修士号を取得。帰国後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社コンサルティング事業部などを経て、2003年より米国グローバルヘルスコンサルティングのパートナーに就任
アキよしかわ(あき よしかわ)・・・国際医療経済学者、データサイエンティスト。カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭を執り、スタンフォード大学で医療政策部を設立する。米国議会技術評価局(U.S.Office of Technology Assessment)などのアドバイザーを務め、米国グローバルヘルス財団理事長、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン会長。米カリフォルニア在住
新型コロナウイルス関連書籍
「日本の医療の不都合な真実 コロナ禍で見えた「世界最高レベルの医療」の裏側」森田 洋之
「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰 宗太郎, 山中 浩之
「インフルエンザ・ハンター」ロバート・ウェブスター
「新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体」宮坂 昌之
「新型コロナの正体 日本はワクチン戦争に勝てるか! ?」森下竜一, 長谷川幸洋
「医療崩壊の真実」渡辺 さちこ、アキよしかわ
「コロナ自粛の大罪」鳥集 徹
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