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「マスコミと官僚の「無知」と「悪意」」髙橋 洋一

2021/03/11公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

「あいちトリエンナーレ」で天皇が燃える映像

「無知」と「悪意」とはインパクトのあるタイトルですが、最近の実例を示したのがこの一冊です。まず、大阪都構想の住民投票前に毎日新聞が「分割コスト218億円増」という捏造試算を報道しています。これは明らかな住民投票潰しでしょう。


具体的には、大阪都構想をめぐる11月1日の住民投票の1周間前の10月26日の毎日新聞夕刊1面に「市4分割コスト218億円増 大阪市財政局が試算」という記事が出たのです。29日には、市財政局長が再び記者会見し、今回の試算は捏造試算だったと謝罪しましたが、初めに報じた毎日新聞からは記事の訂正や謝罪は行われなかったというのです。


また「あいちトリエンナーレ」では、芸術と称して昭和天皇の肖像が燃えるビデオを上映していましたが、左翼に乗っ取られた芸術祭の事実を伝えず、リコールを異なる意見封殺と批判するメディアがあります。これらは世論を誘導する「悪意」を持った偏向報道といえるでしょう。


・2020年8月23日付の毎日新聞(電子版)で「愛知知事リコールは『愛国』か民族派からも疑問の声トリエンナーレ補助金」と報じられたが、典型的な争点ずらしだ・・・左派マスコミは「芸術」として展示されていた昭和天皇の肖像が燃える映像作品についてほどんど報じず、公費支出の是非を問うていることについても言及しない(p35)


2003年に日本学術会議の民営化が議論

さらに、日本学術会議では、あたかも菅首相が強権発動しているように報道されましたが、実は2003年に日本学術会議の民営化が議論されており10年以内の見直しが決められていたのに何も行われていなかったことを菅首相は指摘しています。そうした経緯を知って知らずかまったく報道せず、日本学術会議側の意見を垂れ流すテレビと新聞。視聴者が知りたいのは事実であって、テレビや新聞の意見ではないのです。


起きている事実を把握し、過去にどのような経緯があり、他の国ではどうなっているのか調べれば、普通の頭があれば当たり前の判断ができるはずです。メディアにそれができないのであれば、経緯と他国の事例は自分で調べればいいので起きた事実だけを報道してもらえれば十分ではないでしょうか。


・日本学術会議では、菅政権が強権的な人事を行っていると誤解した人が多かったかもしれない。マスコミ報道が日本学術会議側の言い分ばかり報道したからだ・・・菅首相は・・・過去の省庁再編議論の際に日本学術会議の必要性やあり方が議論されてきたとも指摘している。この省庁再編議論とは、2003年当時の経緯であり、そこでの議論の際に10年以内の見直しが決められたが、見直しが行われた様子はうかがえない。(p45)


福島第一処理水の風評被害

福島第1原子力発電所の処理水についても、漁業関係者が風評被害を懸念していると報じられていますが、ある意味メディアが風評被害をあおっているのです。一部メディアや中国は汚染水という表現を使っていますが、日本政府は処理水と表現しているのです。


過去の経緯をまったく伝えず、一方の意見を検証せずに垂れ流し、一部を切り取り偏向報道さえするテレビや新聞各社はプロとして(確信犯かもしれませんが)恥ずかしくないのでしょうか。


最近、見るのはBS放送だけになりました。なぜならBS放送は起こった事実だけを伝えようとする傾向が強く、偏向報道が少ないからです。朝のワールドニュースも興味深い。高橋さんはYouTubeでも情報発信されているようなので見ていただきたいと思います。高橋さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・国家公務員全体の定年延長・・・2013年、2017年、2018年の3回にわたる閣議決定を経て現在に至る・・・安倍政権が黒川弘務東京高等検事長を定年延長し検事総長にするために法改正すると一部野党と一分マスコミの主張があるが、間違いだ。というのも、法施行日は2022年4月1日だ。黒川氏は1957年2月8日生まれで現在63歳で、65歳の誕生日は2022年2月8日なので、あり得ない(p32)


・日本でマイナンバーの導入が遅れたのは、左派党野党がプライバシーを理由として反対してきたからだが、今度は定額給付金の手続きが遅いと批判しているのはいかがなものだろうか(p172)


・財務省周辺は「緊縮財政のドイツを見習うべきだ」と言ってきたが、そのドイツでさえ、2020年7月から12月までの期間限定で、付加価値税の税率を19%から16%へ引き下げる消費減税を行う。今こそ、これを見習うべきだ(p116)


・10年くらいのスパンで考えると、自公政権は1度や2度は必ず弱くなり、その間に政権交代もあり得るかもしれない。そのときが財務省の狙い目である。政権運営に不慣れなところをつき、民主党時代の与野党合意による諸費税増税と同じ夢をもう一度と願っているだろう(p48)


・メディアに「実名告白」として、ふるさと納税に異を唱えたら左遷させられたという人の記事が出ている・・・異を唱えたのは2014年だといい、第2次安倍政権での改正のことだろう。2008年や2011年には表立って反対せず、2014年になって反対したのだとしたら、役人的にいえば決まったものに反対するに等しい。菅氏の立場からすると、経緯を理解していない役人だと見えたかもしれない。ただ、「左遷」というが、そのポストから事務次官になった例もあり、必ずしも左遷ポストとはいえないのではないか(p190)


▼引用は、この本からです

髙橋 洋一、産経新聞出版


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第1章 マスコミは逃げるのか
第2章 消費増税の嘘
第3章 財務省論法は破綻している
第4章 霞が関は大丈夫か
第5章 コロナ禍は日本飛躍のチャンス
第6章 規制改革を掲げる菅首相の真価



著者経歴

高橋洋一(たかはし よういち)・・・(株)政策工房会長、嘉悦大学教授、内閣官房参与。1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)、数量政策学者。1980年、大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(官邸・総理補佐官付)などを歴任。小泉純一郎内閣・第1次安倍晋三内閣で経済政策のブレーンとして活躍。2020年10月、菅義偉内閣の内閣官房参与(経済・財政政策)に就任。2010年1月から夕刊フジで「『日本』の解き方」を好評連載中。


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