【書評】「インフルエンザなぜ毎年流行するのか」岩田健太郎
2020/03/10公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
日本では抗生物質の使い過ぎ
インフルエンザについて学ぼうかと手にした一冊でしたが、内容は海外経験豊かな感染症医が伝える日本医学会への警鐘でした。
まず、日本では抗生物質の使い過ぎがひどい。抗生物質が必要のない患者に抗生物質を与えている。インフルエンザに抗生物質は効かないのにです。
さらに腸内菌を殺し副作用が大きく、体内に吸収されにくい第3世代セフェム(抗生物質)は、米国ではあまり使われていないのに日本では使われている。日本の医師は勉強が足りないと断言しています。
2016年に熊本地震が起きた時、ぼくはウイルス感染であるインフルエンザに抗生物質が出されている一例を見て、暗澹たる気持ちになりました(p179)
梅毒は米国ではパートナーを探して治療を促す
海外に学ぶべき点はまだあります。例えば、梅毒はセックスで感染するので、米国ではパートナーを探して治療を促すのに、日本の保健所は患者数を数えているだけ。これでは梅毒は減らないでしょう。
子宮頸がんを予防するHPVワクチンは効果と副作用の少なさが証明されているのに、日本では副作用が強調されて接種されていない。わずかな副作用を恐れて、救える多くの命を失い続けているということなのでしょう。
エイズHIV感染者は毎年1400人も新規患者が発生しており、性教育が大事なのに日本の学校では性教育が不十分だという。
「コンドームという言葉を使わずに性教育の授業をやってください」と言われることを実効性のない性教育の例としてあげています。日本人の特性の問題なのか教育界の問題なのか。
感染症法の梅毒報告は無記名報告です。つまり、報告を受けた保健所は、実は誰が梅毒に罹患したのか、知らないのです。知らないということは介入、対策を立てられない・・つまり、国は梅毒の数を数えているだけ・・僕がいたニューヨーク市では・・梅毒患者が見つかると、ニューヨーク市保険局に報告し、保険局はパートナーを捜して連絡し、診察と治療を促す(p161)
近藤誠は正しいものもあるが
最後に『患者よ、がんと闘うな』で有名な近藤誠氏の『ワクチンの副作用の恐怖』について感染症のプロとして分析しています。
その結論としては、近藤氏の意見には正しいものもあるが、医学論文の解釈がおかしいものが多数あり信用できるものではないとしています。解釈がおかしい点については意図的とすれば犯罪的であり、意図的でなければ医学者として重大な能力の欠落があるとしています。
海外経験の多い先生らしい直接的で面白い分析でした。もう少し岩田先生をフォローしてみます。岩田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・日本でとくによく使われているのが「第3世代」と呼ばれるセフェムです・・・3世代フェセムは・・・腸の中にある大事な「常在菌」を殺してしまうために、副作用の下痢が問題になるのです・・・ちなみに1世代のセフェムは腸の中の菌を殺しにくいのが特徴です・・未だに日本では3世代のセフェムがたくさん使われています。日本の医師が不勉強なためです(p108)
・フルオロキノロン製剤、またの名をキロノンといいますが、日本でとても人気がある抗生物質の一種です・・アメリカのFDAはキロノンについて・・原則、使うな・・キノロンは中枢神経、要するに脳に異常を起こすことがあります。けいれんや意識障害です。また、末梢神経障害も起こします(p170)
・結核。診断すると法律で保健所に届け出しなければならないんです・・・でも、なぜか書類が2枚なんですよ、2枚・・・この21世紀に、そもそも紙ベースで入力しなければならない無駄自体ほとんど信じられないのに、同じことを2回書かせるとか、ほんと、何考えているんでしょうね!(p36)
・子宮頸がんはHPV感染が原因ですから、ワクチンで感染を予防できればいいのです・・ところが、このHPVワクチン、日本ではほとんど普及していません・・・医師の西岡久寿樹氏などは、これをHPVワクチン関連神経免疫異常症候群と呼ぶよう提唱しています・・・それは稀な現象であり、統計的有意差をもって現れる存在でないことは過去の研究が示しています・・このような間違った態度をとっている行政が世界でも日本だけ、というのがぼくとしては日本人として、なんとも悲しいのです(p201)
・近藤誠氏の『ワクチンの副作用の恐怖』・・近藤氏はワクチンの副作用による死亡には非常に神経質ですが、感染症による死亡リスクについてはあまりにも無神経です・・近藤氏が指摘する、2200万人が新型インフルエンザのワクチンを接種され、そのうち131人が翌年3月までに亡くなっているというデータも・・・ワクチンとの「因果関係」に落とし込むのは乱暴すぎます・・高齢者、特に80歳以上の方の死亡が特に多かったのですが、80代の方をたくさん追跡したら、そのうち一定数の方が冬の間にお亡くなりになるのは、むしろ自然なことではないでしょうか(p251)
・近藤氏の医学論文の解釈には重大な誤謬が数多く存在します。知らずにやっているとしたら医学者の能力に重大な欠陥がありますから、彼の書物は信用に値しません。知っていてやっているのであれば近藤氏はとても悪質なデゴマークなので、やはり信用に値しませんし、その場合は医学という学問や患者への誠意を著しく欠いているのですから、この業界から即刻退場願うよりほかありません(p253)
・寿司屋も料亭も「自分のところで発生したアニサキス症に気づいていない」こともあるのです・・冷凍したら寄生虫はみな死んでしまう・・冷凍してから解凍して寿司や刺身を食べればいいのです(p60)
・学校で教えられていない、でも本当は学校で教えなければならないことは・・例えば、お金の教育です・・・いじめ教育も・・そもそも現代の日本では大人社会からしていじめ体質です。事務所の言うことを聞かないと「干される」芸能人・・・健康教育・・・「望まない妊娠」を回避するためには、ちゃんとコンドームとかピルのことを教えなければいけません(p204)
【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
第1章 インフルエンザはなぜ毎年流行するのか
第2章 感染症予防のウソ、ホント
第3章 抗生剤は有効か?免疫力はどう上げる?
第4章 感染症の対策、どうなってるの?
第5章 深刻な感染症の問題(
著者経歴
岩田健太郎(いわた けんたろう)・・・1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授
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