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「99・9%が誤用の抗生物質 医者も知らないホントの話」岩田健太郎

(2020年3月27日)|本のソムリエ メルマガ登録
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【私の評価】★★★★☆(85点)


■感染症の専門家が問題提起するのは、
 抗生物質が適切に使われていない、
 ということです。


 抗生物質は、ワクチンとともに
 感染症治療の武器ですが、
 使いすぎると耐性菌ができてしまう。


 抗生物質はできるだけ
 必要なときだけ使用することが
 求められているのです。


 しかし実際には、感染症の専門家は、
 非常に少なく、そもそも「感染症科」が
 設置されている病院自体少ない。


 そうした中で、一般の医師も
 感染症への意識が低いことが、
 抗生物質の乱用の原因と推定しています。


・肺炎を治療していた泌尿器科医に、「ぼくは尿路感染はたくさん診てますから、肺炎くらいは治療できますよ」と言われて・・・感染症はこれくらい「なめられている」のです。「ついでにできる」と思われているのです・・・「感染症専門家」・・・製薬メーカーと協力して臨床試験を主催したりするのですが、そこに「癒着」が生じます(p236)


■特に、日本で大量使用されている
 抗生物質の経口の三世代のセフェムの
 使い方には、疑問が多いという。


 なぜ、抗生物質が効かない風邪に
 経口の三世代のセフェムが
 処方されるのか。


 経口の三世代のセフェムは
 飲んでも吸収されないのに、
 なぜ少量で飲み薬として出すのか。


 念のためという理由で
 三世代セフェムを処方する医師も
 いるようですが、三世代セフェムには
 腸炎や低血糖の副作用の可能性が
 あるのに、なぜ念のためだけの理由で
 処方するのか合理的理由は少ないという。


 本来、肺炎などに注射で大量投与して
 つかうべき三世代のセフェムがムダに
 処方され、耐性菌を増やしていることに
 著者は不満なのです。


 著者は、多くの医師が
 製薬メーカーの営業マンの
 カモになっているだけだと
 断言しています。


・三世代のセフェムは、命を奪うおそろしい肺炎、急性喉頭蓋(こうとうがい)炎、髄膜炎治療の切り札です。それを、少量の経口薬にして大量に使用しているのが、日本という国です・・耐性菌が増えるリスクを「わざわざ」冒しているのです(p189)


■著者の言いたいことは、
 勉強不足の医者が多いという
 ことなのでしょう。


 もちろん学会などで専門知識は
 共有されていると思いますが、
 専門家と製薬会社の癒着もある。


 英語の論文を読むことのできない
 製薬会社の営業マンの言うことを
 ただ信じてしまう医師も
 多いのでしょう。


 そうした状況を少しでも
 良くしたいという著者の
 思いが伝わってくる一冊でした。


 岩田さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・2006年に発表されたメタ分析(臨床研究のまとめ)では、抗生物質はかぜの症状を抑えるのに、少し、役に立つが、薬の副作用に苦しむ人が増えてしまう、という結論でした。その副作用の多くは、腹痛や下痢など・・(p36)


・日本の医者の多くは、元の論文をきちんと読んだりしません・・英語力そのものを有していない医者も多いのです・・・で、営業マン=MRの薦めるままに、高額な新薬に飛びつくのです。例えば、糖尿病の治療薬ジャヌビア(シタブリプチン)・・(p200)


・CRPばかりを見て患者を忘れてしまうと、患者はとっくに治っているのに、CRPだけを抗生物質で治療する、という滑稽な事態に陥ってしまう・・・逆もまた真なりでして、感染症が治っておらず、細菌も死んでいないのに、「CRPが下がった」という理由で抗生物質を止めてしまう例も多い(p78)


・軟膏や湿布薬などを右側に貼るのか、左側に貼るのか、処方箋に記載漏れがあると、薬局から電話がかかってきて・・薬局は、このような瑣末なことをこと細かくチェックするよう厚生労働省に求められるのですが・・・子どもにテトラサイクリン系の抗生物質が処方されている、というような本質的な問題については、ノーチェックだったりするのです・・経口三世代セフェムは99.9%誤用なのですから・・(p226)


・死亡率をかえって高めてしまいかねない厳密な血糖コントロール、死亡率を高めてしまいかねないステロイド大量療法(パルス療法)、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)にエラスポール・・どんどん薬を足していくのです。必要性がある、なしにかかわらず、です・・胃の粘膜を荒らす痛み止め(ボルタリンなど)を出し、その副作用を抑えるために胃薬を出します。胃の粘膜に影響しない痛み止めを出せばよいのに(アセトアミノフェンなど)(p283)


・多くの肺炎がレントゲンで診断されています。しかし、これまた多くの医者が、そのレントゲンで診断した肺炎患者さんにCT検査をしているのです。すでに診断は付いているのですから、CT検査は不要です(多くの場合)(p105)


・世界保健機構(WHO)は、・・・子どもに重大な下痢症を起こすロタウイルスのワクチン接種を、世界のすべての国で行うよう、推奨しています・・残念ながら、このワクチンは本書執筆時点で定期接種にはなっておりません(p45)


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岩田健太郎 、光文社


【私の評価】★★★★☆(85点)


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■目次

第1章 かぜに抗生物質は必要ない
第2章 21世紀の感染症の世界
第3章 「診断」という知的営為
 臨床医、リッチな世界観を持つべし
第4章 臨床をなめんなよ
 現場の医療レベルが上がらない、その理由
第5章 経口三世代セファロスポリンは、99・9%が誤用
第6章 日本感染症界の「黒歴史」
第7章 もっと「感染症のプロ」を
 日本の感染症専門医、その信頼性について
最終章 さらば、「足し算」の医療
 ポリファーマシー(多薬剤処方)の問題


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