「邪悪な世界のもがき方: 格差と搾取の世界を株式投資で生き残る」鈴木 傾城
2025/01/21公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
グローバル企業の株式を長期保有
バブル期に株式投資で資金を蓄積してセミリタイアした著者の投資法は、株式1/3,現金1/3,金1/3というリスク分散を意識したものでした。現在は、株式の比重を増やし、グローバル企業の株式を買って長期保有するようにしているという。
なぜかといえば、成功しているウォーレン・バフェットやカルロス・スリムなどの投資家は、優良企業の株式を大量に買って長期保有することによって資産を増やしているからです。仮に資金が小さくても、成功した投資家と同じことをすれば同じ結果が得られるはずで、優良企業の株式を個別株あるいはインデックスで購入するのが資金を増やす秘訣なのです。
「優良企業の株式を大量保有する」という行為こそがこの資本主義の中での唯一絶対の処世術である(p91)
株式相場は予想できない
著者は株式の短期売買を否定しています。よく「安く買って高く売る」と言われますが、株式が安いときは,だいたい「株など買えそうにないとき」なのです。どこまで下落するのか底が見えないので、「安いときに買う」ことのできる人は度胸のある人です。
2014年頃に石油株が安いのは誰もが知っていましたが、買っていたのはウォーレン・バフェットくらいでした。当時バフェットはマスコミに「時代遅れ」と嘲笑されていたのです。
そもそも株が上がるのか下がるのか、安いのか高いのか判断するのは難しいし、不可能です。経済評論家の予想は面白いくらい当たりません。当たるのであれば、専門家は評論せずに、自己資金で株式を買えば大金持ちになっているはずだからです。
このように短期の相場がわからない株式だからこそ、利益を上げ続ける優良企業の株式を買い続け、持ち続けることが唯一の道というわけです。
分かっているのは,これから相場がどのように上がっていくのか下がっていくのかも,誰も予想できないということだ(p76)
8人が全世界の半分と同じ資産を持つ
この本の問題は、タイトルのとおり「たった8人が,全世界の人口の半分と同じ資産を持っている」ことを強調し、格差のある現代社会を邪悪なものと表現していることでしょう。また、政治家が常に金持ちの減税を行っていると批判し、政治家自身が金持ちだから減税しているのだと断定し、富裕層との格差は凄まじい格差になっていると根拠もなく煽っています。
さらに3%の配当がもらえる株式で100万円を運用すると,40年後に複利で326万になることを示し、「40年後の格差が約3.25倍になっているということを意味している」という表現は投資リスクを無視した議論です。「社長は,過労死寸前まで働いている従業員よりも生活が豊かだ」と批判する著者は、過去になにかトラウマを持っているのではないかと感じました。
著者の提案は、資金を貯めて優良企業の株式に投資することですので、現代社会は誰でも投資家になれる「機会の平等」が実現された素晴らしい時代と表現できるはずです。
私たちは資本主義の世界に住んでいるので,「機会の平等」を求める社会に暮らしているが,これも空想家の戯れ言である・・富裕層の子供は,良い環境,良い食事,良い学校に入ることができて,親の資産,親の人脈,親の支援をたっぷりと使うことができる(p15)
暴落時に買い込む
社会は不平等であり,労働は最弱の資本であると書いている著者は、同じように考えるヒネクレた読者を呼び込むためにあえて煽っているのではないかと感じました。
いくら格差に文句を言っても、いくら資本家を批判しても、自分も株式投資をすれば資本家になってしまうのです。資本家になれば、株式の価値が上がり下がりする状況に直面し、いかに資本家がリスクを持って株式を保有しているのかわかるはずです。それをヒネクレた人たちに体験してもらいたいのでしょう。
そういう意味では、著者が「現代社会を非正規雇用が増え,リストラも珍しくなくなり、金利はゼロで預金しても増えない」と煽るのも悪くないのかなとも思えました。
なお、ウォーレン・バフェットは株式市場の暴落に備えて現金の保有比率を高めています。株式は暴落時に買いましょう。鈴木さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「株主」にならなければ,もうグローバル企業が支配する世界で生き残ることすらできない(p95)
・「総悲観の中で安く買う」というのは,逆に言えばそういったときに全財産を賭けて買えるほどの決断力がなければならない(p60)
・暴落時に大量に買い込むのが望ましい。長期保有するので買い込むのは「利益を生み出し続ける優良企業」が良い(p199)
・自分が全力投球できる場所を探して,そこで自分の能力を発揮することだ(p188)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
第一章 日本人は生き方を見失った
第二章 次のショックは必ずある
第三章 ドラゴンの背に乗る
第四章 変わらないことの威力
第五章 丸ごと飲み込む
第六章 邪悪な世界の中で
著者紹介
鈴木 傾城(すずき けいせい)・・・作家、アルファブロガー。1966年、東京生まれ。20歳の頃にタイに旅行に行き、そのまま社会からドロップアウトする。バブル期に株式投資で資金を蓄積し、セミリタイア。以後、本格的に東南アジアの歓楽街・貧困街に沈没する生活に入り、2000年よりサイト『ブラックアジア』を主宰、カルト的な人気を得る。2009年より時事を扱うサイト『ダークネス』を立ち上げ、3年で一億PV超達成、アルファブロガーとなる。
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