「相続の落とし穴!共有名義不動産: 想い出がきれいなうちにトラブル解決」松原 昌洙
2024/10/29公開 更新

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【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
共有名義不動産とは
共有名義不動産について調べていました。建物や土地が親族で共有されていたりすると、共有者同士で不動産をどうするかでもめることが多いのです。例えば、長男は土地を売りたい、次男は売却価格が安すぎる、三男は売らずに自分が住みたい、といった具合に意見が合わないのです。家族だからこそ、こじれるのです。
このように共有者間で意見が分かれると、折り合うのが難しく、何も進まなくなってしまいます。共有を解消する一つの方法は、一人が共有の持分をすべて買い取り、共有を解消することでしょう。問題はその価格です。ここでも価格でもめるのです。
土地を売りたい・・売却額には不服・・俺が住む・・いかに身内であってもこじれるときは大いにこじれます(p23)
不動産の適正価格とは
不動産の価格の参考値としては、公示価格(実勢の90%)や相続税路線価(公示価格の80%)、固定資産評価額(公示価格の70%)があります。 特に、相続税路線価は相続・贈与で評価額の指標となるので、この価格が基準となります。
しかし、共有者同士で話し合っても、売却価格はなかなか折り合わないことが多いというのです。素人で専門知識があるわけでもなく、感情的なものもあるのでしょう。
そこで著者のお勧めは、20万円くらいお金がかかりますが、不動産鑑定士に評価してもらい、その価格で売買することです。不動産鑑定士に査定してもらったのが1500万円であれば、それを基準に持分売却であることを考慮して3~7割減の500~1100万円などの幅で交渉していくわけです。
持分の売却というのは全体売却時に比べて減価されるのが一般的です。おおよそ時価よりも3割程度目減りします(p125)
共有持ち分を第三者に売る方法
それでも共有不動産でいざこざが折り合わないときに、どうすればよいのでしょうか。実は共有名義不動産は、自分の持分だけを第三者に売却することができます。買い取るのは買取業者か、投資家となりますが、著者はそれを仲介しているのです。
買取業者は安く共有名義の不動産を購入して、うまく整理できれば儲けることができます。その一方で、時間もかかるし、裁判になる可能性もありリスクが高いので、実勢価格の30~50%などと安く買い取るわけです。
不動産収入がある場合には、不動産投資として共有不動産を購入する投資家がいるかもしれません。
著者は仲介業者なので、持分を売りたい人とこうした投資家や買い取り業者とを仲介することで、確実に手数料をいただくというビジネスモデルと考えられます。
共有名義不動産の場合買い手は限られていて、主に投資家と買取業者になります・・収益不動産であれ共有した瞬間から持分相応の家賃収入を獲得できる(p69)
親族全体のメリットを考える
著者は不動産を親族間で安く売買すると、贈与税が発生することを説明し、適正価格での取引きを勧めています。そして適正価格とは、不動産鑑定士が査定したもので、価格が折り合わない場合に第三者への売却を推奨しています。
例えば家賃収入があれば、希望していた金額よりも高い額で投資家に購入してもらえることもあると説明しているのです。私は著者が仲介業者であることから、割り引いて理解するべきだと感じました。
なぜなら、第三者に売却すれば、親族間の関係は決定的に悪くなってしまうので、避けるべきだからです。
また、親族全体で見れば、第三者に売るということは外部に利益が出ていくということです。私は仮に安い価格であっても、贈与税を払う必要があっても、親族内で売買し、不動産による利益を親族内に確保しておいたほうがよいと考えます。
だとすれば、第三者への持ち分売却は、交渉の手段として査定額を利用する程度にするべきだと思うのです。
不動産鑑定士が評価した適正価格よりもかなりの安値でお兄さんに売ろうとしていました。・・税務署から贈与と見なされ、お兄さんが多額の贈与税を負担することになってしまいます(p143)
共有不動産にはするな
このように共有不動産の共有解消がいかに難しいのか、構造がわかってきました。共有不動産の問題は、相続がきっかけで顕在化することが多いようです。そうなる前に、事前に手を打てるなら打ちたいものです。
また、いずれにしろ問題となったら必要により税理士、不動産鑑定士、司法書士、弁護士などに相談する必要はありますが、何を重要視して判断するのか決めるのは自分なのだと感じました。親族全体としてメリットのある形でまとめたいものです。松原さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・家族信託・・自分(被相続人)が将来認知症になってしまったり、病気や怪我によって、財産運用の判断を下すことが困難になってしまうときに備え、指名した家族の誰かに自身の財産管理を任せます(p57)
・共有物分割請求訴訟・・原則として現物分割が採択されますが、分割が不可能だったり、分割すると目的物の価格が減少する恐れがるときは、競売が実行され、代金が持分に応じて分配されます(p75)
・相続登記・・経験豊富な司法書士に依頼するのが得策といえるでしょう(p220)
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
第1章 相続トラブルはひとごとではない
第2章 相続トラブル回避のために覚えておきたいこと
第3章 親から相続した住まいでモメています
第4章 放置したままの空き家や空き地、どうにかしたい
第5章 共有している収益不動産、どう処理する?
第6章 地主とのトラブル、回避できませんか
第7章 いざというときのために知っておきたい大切なこと
著者紹介
松原 昌洙(まつばら まさあき)・・・株式会社中央プロパティー代表取締役。1970年生まれ。2011年に、業界で唯一共有名義不動産の仲介を扱う株式会社中央プロパティーを創業。弁護士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家とともに問題解決に取り組む。現在までに2000件以上のトラブル解決をサポート。その実績から、共有名義不動産問題の第一人者として知られる。
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