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「ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?」川口マーン惠美

2017/09/20公開 更新
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ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?(祥伝社新書)


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

 ドイツ在住の著者が教えるドイツにおける日本に関するマスコミ報道の実情です。ドイツでの日本の報道は、中国・韓国の言い分そのまま報道され、日本側の主張の完全無視だという。竹島、尖閣問題は日本がこれまで韓国、中国にとってきた対応の結果であるというスタンスらしいのです。


 例えば2012年12月16日のZDF(オンライン版)の記事では、ニコラ・アルブレヒトという女性特派員が「景気の停滞に悩んでいる日本国民は、安倍のナショナリズム的プログラムに喜んで逃避している」などと報道していたという。《ZDF》はヨーロッパで一番大きなテレビ局でありながら、日本には特派員を置かず、日本のニュースも北京から発信しているので、すっかり中国の工作員にコントロールされているのです。


 また2012年には、全国的な新聞《ディ・ツァイト》に『恥辱の岩』という尖閣諸島についての記事が載ったという。その内容は、「尖閣諸島は中国にとって、「恥辱」を拭い去ることができるかどうかの試金石で、種を蒔いたのは日本人」だというのです。普通のドイツ人なら、「なるほど!それがこの不可解な領土紛争の背景か」と思うような内容だったという。


・中国共産党は、途上国でのメディアの主導権を確立するために、70億ドルを費やしている。最近の出来事としては、国営テレビ放送《CCTV(中国中央電視台)》・・140カ国で数億人の視聴者を持っている・・《NHK》は国民から視聴料を取っている半国営放送なのだから、日本をこき下ろす番組だけでなく、海外に向けての啓蒙番組を作るべきではないか(p197)


 これらは中韓の工作がドイツマスコミへの浸透度が高いこともあるのでしょう。また、ドイツマスコミが中国を拠点として、アジアの情報を発信しているということもあるのでしょう。ドイツが中国寄りであることは、こうしたマスコミを利用した中国の工作の結果であるのです。


 ドイツのマスコミの報道についての話と、ドイツ人の歴史認識には新鮮味がありました。ドイツ人は、日本は侵略国家で(太平洋戦争)で日本人は残虐(南京大虐殺)で卑怯な国(パールハーバー)と思っているのです。しかも、いまだに慰安婦問題に謝罪もしない傲慢ぶりだと見ているらしいのです。


 特にドイツ人は、世界中で、中国人の次に南京虐殺の話が大好きな国民で、もちろん中国のでっち上げた超残酷ヴァージョンを盲目的に信じているというのです。残念です。川口さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・《ARD》のほうが堅苦しい・・同じ事件を扱っても《ZDF》は少しだけ大げさに報道する・・たとえば、福島原発の事故の際、あることないことを言って危機感を煽ったのが《ZDF》だった(p20)


・《シュテルン》・・最初は感嘆の的だった東北の被災者の礼儀正しい態度が、あっという間に、どんな不幸にも文句を言わず、抗議の声もあげず、我慢ばかりしているのはちょっと変じゃないかという見方に変わった。耐えることに慣らされた従順すぎる国民(p43)


・ドイツ人は自分たちの脱原発の決定に誇りを持っている。しかし、実際のところ、ドイツの原発はまだ止まっているわけではない。17基のうち9基は、今でも稼働している。これを2023年には止めようと言っているだけだ(p50)


ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?(祥伝社新書)
川口マーン惠美
祥伝社
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【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

序章 ドイツメディアの種類と傾向
1章 原発事故を、ドイツはどう報じたか
2章 尖閣と慰安婦を、ドイツはどう報じたか
3章 安倍政権の政策を、ドイツはどう報じたか
4章 中国・北朝鮮を、ドイツはどう報じたか
終章 雅子さま報道をめぐって



著者経歴

 川口マーン惠美(かわぐち まーん えみ)・・・1956年大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。1985年、ドイツ・シュツットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業。シュツットガルト在住。


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