「日本はこうなる!」糸川 英夫
2014/02/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
要約と感想レビュー
日本だけが景気が良いのは危険な状況
1970年代までの日本の経済成長は「東洋の奇跡」と言われました。敗戦から20年程度でGDP世界二位になってしまったのですから、「畏るべし日本」と考えるのも当然でしょう。ところが、この本では1985年に「このままでは日本は危ない」。いずれ限界がくる、と警告しています。
さらには、世界から嫌われるくらいなら、長期の不況になったほうが日本のため、とさえ言っています。世界中の国が不景気の中で、日本だけが景気がよくなれば、世界で日本が孤立し、危険な状況となるというのです。むしろ、不況と低成長は、日本にとって反日感情が高まるのを防いでくれるというのです。
・イギリスの『ネイチャー』誌の特集記事は、サブタイトルに「世界市場における日本の成功は、西側諸国の羨望の的である」と書いている。この羨望(エンビー)という感情は、容易に嫉妬、嫉視につながる。また、嫉妬や嫉視は憎しみに直結する(p141)
日本だけが景気が良いのは危険な状況
糸川さんは1985年の時点で、日本の進むべき道を提案しています。日本には資源がない、リーダーが出にくいという欠点があります。だからこそ、ユダヤ人に学ぶべきであるというのです。イスラエルには資源がない。周囲を敵に囲まれている。そうした環境で生きのびるコツをユダヤ人から学ぶのです。
日本が太平洋戦争で負けたのは、高級将校が能力ではなく好き嫌いで出世させたからだと分析しています。逆に、分析的、論理的に物を考え、こうすればこうなるという思考をするユダヤ人のような人間は出世できなかったのです。戦争遂行能力ではなく、かわいいやつ、いうことを聞くやつ、自分になついているやつが出世して戦争に負けたのですが、今度はユダヤ人のような人を抜擢して、経済戦争を勝とうということなのでしょう。
・アメリカに比べると、ヨーロッパのほうがはるかに日本に近い。土地が制限されているし、資源も制約されている。日本が、これから手を組む相手は、ヨーロッパのなかから選ぶべきだろう。なかでも、イスラエルが一番よいというのが私の考えである。(p232)
日本だけが景気が良いのは危険な状況
日本人の植民地支配は、相手の文化を認めず、日本化をすすめてしまったことで、半永久の反感を買った、失敗であったとしています。日本の植民地である台湾と併合した朝鮮では、朝鮮県、台湾県として小学校では日本語を主力国語として教えていたのです。日本が、朝鮮民族や漢民族から反感を買うようになったのは、これら民族の持つ言葉を圧殺した事情によるところが非常に大きい、と糸川先生は考えているのです。今の中国、韓国を見ると、まったくその通りなのだと思います。
さらに液晶、半導体などのテクノロジーは、すぐに真似されるので危ない!という眼力にも非常に鋭いものがあります。天才は、このような視点で世の中を見ているのか!と非常に参考となる一冊だと思いました。糸川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・私が述べたのは、「経済はしょせん、お鍋である」・・日本は、経済という大きなお鍋を作ったんだから、ここで料理を研究すべきだ。・・テクノロジーという「お鍋」のなかにマイケル・ジャクソンの歌を作って入れたから成功した(p170)
・世界中、どこにでもいる日本人・・・日本は外地の日本人をいざというとき救えない(p40)
・ドイツ人の言う「生活の質」をわかりやすく説明すると、たとえば、通勤時間は、十五分か二十分でなくてはならない・・・午後の三時には、大体において会社は終わる。午前七時始業、午後三時終業というのがドイツの会社である(p46)
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目次
第一章 無頓着な日本人
第二章 ロス五輪にみる日本人の宿命
第三章 なぜ日本人は欧米人に嫌われるのか
第四章 日本と日本人のビッグ・トレンド
第五章 種族工学の発想と視点
第六章 日本人が選択すべき道はこれだ
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
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