【書評】「高橋是清―立身の経路 (人間の記録)」高橋是清
2026/04/03公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
昭和恐慌での緊縮財政
私の高橋是清のイメージは、金輸出再禁止と積極財政で昭和恐慌を脱したというものです。
昭和恐慌では、デフレ不況の中で大蔵大臣井上準之助は金本位制に復帰し、円高維持・金流出防止のため高金利・緊縮財政を行いました。
当時の主流の考えは、金利を高くすれば通貨供給量が減り、物価が安くなって、輸出が増えるので経済が復活するというものでした。したがって、井上準之助大蔵大臣は、緊縮財政により健全な国家財政を作り、高金利で物価を安くし、競争力の高い企業が生き残り、日本経済は復活すると考えたのです。
しかし実際には、デフレを悪化させ、物価下落→企業利益減少→雇用悪化→消費冷え込み→物価下落というデフレスパイラルにより、さらなる景気悪化、企業倒産、農村疲弊という地獄が待っていたのです。
金利が上がれば人が金を使わなくなるというが・・・百姓が金利が高くなったからといって物を買うことを止める訳にはいかぬと思う・・・金利を上げ兌換券を縮小すれば経済界が立ち直ると単純に考えるとこれは大なる間違いである(p220)
昭和恐慌での積極財政
大蔵大臣となった高橋是清は、金利を下げれば民間の経済活動を活発化させると考えました。また、金利を下げることで通貨供給量が増え、インフレになるという当時の経済学者の懸念については、通貨供給量とインフレに相関はないという最新の欧米の理論を知っていたのです。
そこで高橋は、大蔵大臣就任直後に金本位制を放棄しました。円の信用が下がり円安となります。そして「積極財政」を行うのです。国債を発行し、その大半を日本銀行に直接買い取らせたのです。
新聞にもこの我が国の物価の騰貴はひとえに兌換券の膨張にありという論がながく盛んである・・今日欧米ではこの貨幣数量説をもって物価を解釈せんとするはまるで間違いであるということになっているのである(p214)
借金はインフラに使う
現在の日本に当てはめてみると、過度の円安を避けるために日本銀行の利上げを主張する人がいます。これは円高にして金利を上げるという井上準之助大蔵大臣と同じ主張です。あと足りないのは緊縮財政であり、高石首相の積極財政を「財源が・・財源が・・」と潰せば昭和恐慌と同じになります。
高橋是清は、借金(国債)は無駄に使うのではなく、鉄道や港湾などの国の経済活性化につながるインフラに投資すれば怖いことはないと主張しています。
税金を払う財源は国民の経済活動であり、その経済活動を活発化させることが真の財源というわけです。
欧米人の好んで投資せんと欲するは主として特許事業にして,即ち鉄道,電気,瓦斯(ガス),鉱山等(p116)
高橋是清は暗殺される
そういえば、新型コロナ禍で安部政権は100兆円を超える緊急経済対策を行い、その財源となる国債は日銀に買い入れさせました。安部晋三は現代の高橋是清であったというわけです。二人はまた同じように暗殺されるのです。
最近のメディアは円安批判と日銀の利上げ期待報道ばかりですが、アメリカと財務省で日本は経済成長させないという暗黙の了解でもあるのでしょうか。国家財政の健全化ばかり主張する財務省に井上準之助の亡霊を見るような気がしました。
古い本なので、当時の雰囲気が伝わってきました。人はそれほど進歩していないのかもしれません。経済については、もう少し調査を進めます。高橋さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・養祖母はまた朝夕非常に規則正しい生活を送っていた・・・殊に朝は最も早く起きる習慣で,東の空が薄明るくなると必ず起き・・・この習慣は今に残って予は早起きする(p28)
・大資本を供給する者は即ち富豪である。富豪なる者が,平生貿易上の戦いにおいて必要・・しかるに徒(いたず)らにこの富豪を征伐するというような空気がむしろ政府の或部内に在りはせぬかと疑われる節がある(p65)
・金を溜めるということは,人生の副産物であって,本来の目的はカネを溜めること以外になければならぬ(p75)
・嘆かわしいのはかく金融の緩慢なるに拘わらず,比較的確実なる新事業の起こらないことである。ここに至って我が国に真正の事業家の少ないことが分かる(p132)
▼引用は、この本からです

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高橋是清 (著)、日本図書センター
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第一編
予が偽らざる全生涯の告白
異郷に奴隷に売られたる以来予の一貫せる処世主義
第二編
教育中毒論
金銭に対する正当の観念
青年は力量の全部を消費するな
就職難を感ずるは青年の罪なり
模範とすべき欧米実業家の長所
現代青年早婚の弊
金銭に対してあくまでも潔白なる英国人
すべての方面に無秩序なる日本人
仕事はかくの如く為すべし
破壊されつつある日本特有の美点
借金の最も有効なる使用方法
第三編
外債募集に対する腹芸
外国資本家の放資する日本の事業
悪徳重役駆逐策
会社を破壊せしむる株主
不景気論
銀行の放資する標準
内国債整理論
満州の富源開拓機関
我が国は清国に対して債権者たりえるや
海外に正貨を残置する理由
東北地方はかくのごとくして振興せしめよ
第四編
邦家の興亡は即ちこの点にあり
使う者と使わるる者の具備すべき要素
官立学校卒業生と私立学校卒業生優劣論
自己を頼め
機会は作るべからず来るを捉えよ
第五編
予が採用する行員の標準
銀行の集中主義と分立主義
関税実施後の影響いかに
すべからく輸出事業を盛んにせよ
過去の金融趨勢を論じて将来に及ぶ
通貨論
教育論
著者経歴
高橋是清(たかはし これきよ)・・・嘉永7(1854)年、幕府御用絵師の子として江戸に生まれ、仙台藩足軽高橋家の養子となる。藩の留学生として渡米して苦学。文部省、農商務省を経て、日本銀行に入り、横浜正金銀行を経て、日銀副総裁に就任。日露戦争外債募集に成功した。日銀総裁に昇任後、山本権兵衛内閣の蔵相となり立憲政友会に入党した。大正10(1921)年、首相・政友会総裁に就任。都合七度蔵相を務める。金融恐慌ではモラトリアムを実施、恐慌を沈静させた。また世界大恐慌では、金輸出再禁止、国債の大量発行など積極財政による景気刺激策を推進した。昭和11(1936)年の二・二六事件で暗殺された
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