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「生を踏んで恐れず―高橋是清の生涯」津本 陽

2022/02/04公開 更新
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「生を踏んで恐れず―高橋是清の生涯」津本 陽


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

 高橋是清の生涯を追った一冊です。高橋是清は、昭和の金融恐慌の取り付け騒ぎを支払猶予令を発布してこれを鎮め、日露戦争では欧米での戦費調達に成功したことで有名です。危機のときに、引っ張り出されるのが高橋是清なのです。


 高橋是清は、服装を気にしない、地位を気にしない、自分の命も金もそれほど気にしない。さらには人に興味がないという変わった人です。仕事で何度も会っているのに、名前を見ても誰かわからなかったことがあったというエピソードが伝わっています。


・是清は・・・めったに陳情者に会わず、たまに会っても相手の名前や顔をまったく覚えない。他人への興味がないためである(p8)


 そうした変わった性格の一方で、英語が堪能で、金融にも現場感覚を持っているうえに、外国人をも恐れず、逆に好かれるタイプであったようです。さらに仕事においては、一生懸命であるべき姿を臆することなく提案し、相手が上司であろうが、誰であろうと、必要であれば議論をしていたようです。


 例えば、日本銀行の建設担当となったときは構造変更、資材の仕入方法の改善、業者の競争意識を引き出すなどにより、建設工事の遅れを取り戻しています。また正金銀行では派閥の対立で行内の業務に支障をきたすほどになっていましたが、派閥を解消し、ここでもサービス改善を行い、取引先を増やしています。


・いかなる場合でも、何か食うだけの仕事はかならず授かるものである。その授かった仕事が何であろうと、常にそれに満足して一生懸命にやるなら、衣食は足りるのだ(p188)


 高橋是清は226事件で青年将校に殺されています。軍部の予算膨張を認めず、軍部の脅迫をまったく相手にしなかったことで、殺されたのです。「正論を言って軍部を恐れず」という人だったわけです。だからこそ多くの人に好かれ、ピンチのときに引き出され、軍部に嫌われて殺されたのです。高橋是清らしい人生であったといえるのでしょう。


 こうした人が存在したこと自体が、日本人として誇らしいと思いながら、こうした人が排除されるようになると日本も終わりなんだろうな、と思いました。津本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・金融恐慌は突然にやってきたものではない・・・国民も銀行業者も自己の利益のみに急で真に堅実な投資に目覚めていないのである(p45)


・彼(是清)は山岡にいった。「日本ではじめて商標登録、専売規則の作成をやる。おもしろい仕事だ。家族を食べさせられるだけのサラリーを貰えれば、雇で結構だよ」(p108)


・日露戦争は、白色人種と黄色人種の戦いである。またロシア帝室とイギリス王室は親戚の間柄であるため、イギリスが日本の軍費を調達することをためらっているという噂があった(p219)


・力をもって立つ者は滅び、徳をもって立つ者は栄えるというのが、私の信条である。日本軍も現在のような行動をつづけるうちには、亡びるだろう(p305)


▼引用は、この本からです
「生を踏んで恐れず―高橋是清の生涯」津本 陽
津本 陽、幻冬舎


【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

陽気なダルマ宰相
不敵な少年
浮きつ沈みつ
転身
日露の風雲
日本勝った
二・二六



著者紹介

 津本 陽(つもと よう)・・・(1929―2018)小説家。和歌山市生まれ。本名津本寅吉(とらよし)。東北大学法学部卒業後、大阪の肥料メーカーに13年間勤めるが、30代半ばに退職し郷里に戻る。その後は不動産会社を設立、代表取締役に就任。そのかたわら小説を書く。


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