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「松下幸之助の予言―三度の不況を乗り切った日本人の信念」松下幸之助、津本 陽

2012/01/06公開 更新
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松下幸之助の予言―三度の不況を乗り切った日本人の信念 (小学館文庫)


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 松下幸之助の発言から、将来の日本についての発言を抜粋した一冊です。経営の神様といわれた幸之助ですが、日本国という組織の将来に不安を持っていたようです。だからこそ、松下政経塾を創設したのであり、いろいろな場所で提言をされていたのです。


 そして、畏るべきは、二十一世紀がアジアの時代となり、日本と中国がアジアのリーダーとなることを予測していたことでしょう。


・二十一世紀は、アジアの時代です。学問的、理論的に研究したのではなく、私の長年のカンでいうのですが、・・・日本と中国とが、アジアに繁栄をもたらすためのリーダー役を務めなければいけない。(松下幸之助)(p40)


 そしてまた、幸之助は日本の赤字国債の膨張に非常に憂いていました。松下幸之助の理想は、累積赤字ではなく、累積黒字によって税金のない国家を作りあげることでした。


 現状とは正反対で、そんなことできるの!?というアイデアですが、少しずつ黒字を出して積み上げれば、利息で税金をゼロにできるとしているのです。1000兆円も赤字を積み上げることができるのですから、1000兆円黒字を積み上げることも可能と考えていたのです。


 国を興すのが指導者であれば、国を亡ほすのもまた、指導者です(p83)という、幸之助の言葉が、心に重く感じました。「見識」という単語がありますが、これほど人によって落差のあるものはないかもしれません。恐るべき松下幸之助の「見識」。これはとても真似できないと確信しましたが、少しだけでも真似したい。


 幸之助さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・かりにいまの貨幣価値で一千兆円の積立金ができ、それを年利五パーセントで運用すれば、五十兆円の国家収入が得られます・・・このようにひとつひとつ洗い直していくと、百年先には税金がいらなくなる(p47)


・国民は政府に甘えており、政治家も国民を甘やかしている・・・しかし、国民といえども、まちがっていれば、まちがっている、と叱らなければいけません。それが教育であり、政治だと思います。(p90)


・職能教育をしたらいいんですよ・・・必要としない人に無理に大学教育をほどこそうとするから、問題が発生してくる。勉強が嫌いや、仕事をするほうが好きやという者にまで、無理に勉強させることはない。(p125)


・天皇のおられる御所には、堀らしい堀もなかった。しかし、二千年の間、天皇家はつづいてきた。ここんところはよく考えないといけませんな(p70)


・「叱りがいのあるやつを叱るので、それは期待されている証拠やと思え」と、幸之助は常にいっていた(p25)


・物の値段が宝石のように高くなったら土くれだと思って売り払え。物の値段が土くれのように安くなったら宝石だと思って買え(『史記』「貨殖列伝」)(p115)


▼引用は下記の書籍からです。


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 "無税国家"の実現を国民目標に
第2章 伝統精神を生かした日本式民主主義とは
第3章 新指導者論―指導者の気魄とは
第4章 日本は驕り高ぶることなかれ
第5章 危機の打開に「災い転じて福となす」の実行を
第6章 "技術偏重"を脱して"人間精神復活"へ
第7章 二十一世紀の船出には漁師の「知恵と力」を
第8章 二宮尊徳流「楽観思想のすすめ」
第9章 三度の不況を乗り切った私の信念



著者経歴

 津本 陽(つもと よう)・・・(1929―2018)小説家。和歌山市生まれ。本名津本寅吉(とらよし)。東北大学法学部卒業後、大阪の肥料メーカーに13年間勤めるが、30代半ばに退職し郷里に戻る。その後は不動産会社を設立、代表取締役に就任。そのかたわら小説を書く。


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