【書評】「これからの「善い企業」の条件 ビジネスの力で社会を変えるB Corp経営への挑戦」黒田由貴子
2026/04/09公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
あらゆるステークホルダーへの責任
アメリカの「B Lab(ビーラボ)」という非営利団体が運営する国際認証「B Corp(Bコープ)」の考え方を説明した一冊です。すべてのステークホルダー(従業員、顧客、地域社会、環境、株主)に対して責任ある行動を取る企業を「B Corp」として認定しているという。
その認定基準には、各階層の構成員に,女性,外国人,障がい者,性的マイノリティが含まれることを重要視していたり、地球温暖化対策も含まれています。SDGsやCSR(企業の社会的責任)活動やサステナビリティ経営の考え方に近いと感じました。
ちなみに著者が創業したピープルフォーカス・コンサルティングは「毎年の売上の1%を世界の子どもたちのために使う」というポリシーを定めて、「B Corp」の認証も取得しているという。つまり著者の「善い企業」の定義は、「B Corp」の認証に近いものなのです。
BIA(B Impact Assessment)・・・B Labという団体が実施しているもので,認証された企業は「B Corp」を名乗ることができます・・環境面・社会面・ガバナンス面において高い基準のパフォーマンスを発揮していること(p54)
「善い企業」の例
著者が紹介する「善い企業」の例は、次のとおりです。
アメリカの有機食品を中心に扱うスーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」は、途上国の貧困撲滅のための財団への寄付を行っています。
イギリスの「ザ・ボディショップ」では、自然派化粧品を売るだけでなく、動物保護活動、容器の再利用、自然エネルギー活用、男女平等などの活動を行っています。
アメリカのアイスクリームブランド「ベン・アンド・ジェリーズ」も「利益を社会に還元する」というミッションで、フェアトレードや、安全な原材料を優先して使用しています。
つまり、仕事だけではなく、社会を良くしていこう!という活動をしている企業が「善い企業」というわけです。
ホールフーズ・マーケットは,・・「どの役員の報酬も全社員の平均の19倍を超えない」という上限を設けました(p77)
現代奴隷や男女格差
この本では、現代奴隷問題として、アメリカ国務省が、日本の「外国人技能実習制度」は安い賃金で、劣悪な生活環境で働かされていると勧告した事例を紹介しています。
また、日本のジェンダーギャップ(男女の格差)は148か国中118位と格差が大きいことを指摘しています。さらには、人間の奴隷制は問題だが、動物虐待が今後問題となるとも書いています。
確かに著者の主張に正しい部分が多いのですが、こうした国際認証が商売として成り立つのは、株主の利益を最大化するというアメリカの一般的な考え方への反省があるように感じました。
また、多様性への配慮もアメリカでは1960年代まで黒人差別があり、1970年代以降は、黒人を優遇するようになり逆差別が問題とされているくらい過去の過ちへの反省があるのでしょう。
日本でもジェンダーギャップ(男女の格差)をなくそうという方向になっていますので、女性なら誰でも出世できるという逆差別が生まれることが予想されます。「外国人技能実習制度」も批判を避けるために、一定の条件で永住できる「育成就労制度」に移行することが決まってしまった点も心配です。
アメリカでは・・株主からの信認義務により,「経営者は株主の利益の最大化を優先しなければならない」ことが法律で義務づけられている(p59)
ピープルフォーカスのブランチャード事業
たぶん著者は、こうした認証制度よりも、その内容について参考となる点が多いと主張しているのだと思いました。
とはいえ、ISO9000やSDGsのように会社として採用しようとすると、どうしても表面的な正義を押し通すような形になって、建前的な内容に感じました。トヨタが品質管理のISO9000認証を取得しないように、本気でやっている企業は認証を必要としないのです。
それよりも著者の創業したピープルフォーカス・コンサルティングが、「1分間」シリーズのブランチャード事業を独占ライセンス契約している点のほうが興味深く感じました。 黒田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「利益は事業における意思決定の根拠ではなく,妥当性の尺度(p12)
・世界では,中国の新疆ウイグル自治区問題が話題で,アメリカではここで産出された疑いのある商品の販売自体が違法行為となった。どれだけの日本企業がこの厳しさを感じ取れているのか(p133)
・今,私たちは100年前の人々が奴隷制を行っていたことに対して・・憤ります。しかし,100年後の人間は,今の私たちに対して「動物の扱いがとんでもない。あの頃の人間はなんて残酷だったんだろう」と言うに違いないと思います(p52)
▼引用は、この本からです

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黒田由貴子 (著)、プレジデント社
【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
第1章 B Corp 先駆的なステークホルダー経営の実践
第2章 従業員に対する責任を果たす
第3章 コミュニティに対する責任を果たす
第4章 環境への責任を果たす
第5章 顧客に対する責任を果たす
第6章 ステークホルダー組織経営のガバナンス
第7章 社会的・環境的課題に対してポジティブな変化を生み出す
第8章 BIAを活用して組織開発を進める
著者経歴
黒田由貴子(くろだ ゆきこ)・・・株式会社ピープルフォーカス・コンサルティングの創業者。1994年から2012年まで代表取締役を務めた。創業前は米国系大手経営コンサルティング会社とソニー㈱に勤務した。慶應義塾大学経済学部卒業。ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得。2010年より複数の上場企業の社外役員に就任している。また、難民支援のNGOの理事に就任。多摩大学サステナビリティ経営研究所 教授(フェロー)。
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