【書評】「なぜか「惹かれる企業」の7つのポジション 変化の時代を生き残る「ソーシャル・ポジショニング」」菅 順史
2026/04/10公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
世界の潮流
著者は博報堂のクリエイティブ・ディレクター、PRディレクターです。博報堂のPR戦略局は何でお金を稼いでいるのかな?と手にした一冊です。
最初は営業プレゼンの流れと同じで、「社会の潮流が変わってきている!」という警鐘(脅し?)から入ります。
多くの企業ではSDGs(環境、社会、ガバナンス)に配慮しながら、地球や社会の持続可能性についてサステナビリティ報告書を作成しています。その流れの中で、炭素排出量や、女性の管理職比率などを取引先選定の条件とする企業も現れ始めているわけです。
本当に地球温暖化しているのか疑義もありますが、社会の流れに逆らうのは、企業としてリスクでしかないわけです。例えば、プラスチンク製品を使っている場合、「プラスチックは環境に悪い」と世論が高まれば、ボイコットの対象になってしまうかもしれません。
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、2021年のテーマとして「グレート・リセット」を予定していました・・・経済成長を中心とした社会から、人々の幸福を中心とした社会への転換(p26)
「7つのポジション」とは
この本では「社会をよくする独自の視点」を「USV」(Unique Social Vision)と呼んでいます。「USV」はパーパス・ブランディングやソーシャルデザインと類似のものであり、「7つのポジション」で分類してわかりやすくしているのが博報堂流ということなのでしょう。
例えば、大塚製薬の新型コロナウイルス感染拡大の影響でインターハイが中止となるなかで、全国の高校部活制たちを応援する「明日へのエールプログラム」は応援者ポジションとなります。
イーデザイン損保がIoTセンサーを無償で提供して運転特性を診断し、結果をフィードバックして事故のない世界を目指すのは挑戦者ポジションです。
ユニ・チャームの生理用品ソフィが「生理について気兼ねなく話せる社会をつくろう」と実施している「#NoBagForMe」プロジェクトは破壊者ポジションとなります。
そして、世界の一流大学がネット上で無料オンライン講座を公開するMOOCは民主化ポジションというわけです。
社会に応援される「7つのポジション」・・応援者、挑戦者、破壊者、民主化、新世代、シンボル、逆張り(p32)
流れを作る
世界の潮流は、流れに乗ることもあれば、流れを作ることもあります。
流れを作った事例としては、出張・経費管理のクラウドサービスを提供するコンカーは、「経費精算に伴う日本の経済損失は年間2.2兆円」と発表し、スマホでの領収書の電子化の規制緩和を推進しました。
弁護士の齋藤貴弘氏は、夜間の観光市場やエンターテイメント市場の経済効果をナイトタイムエコノミー推進協議会を設立し、最終的に風営法は改正され、ダンスクラブの24時間営業につながったという。
著者の場合は、シリコンバレーで、「私は紅茶派です」ということが、ひとつのアイデンティティになっていると聞き、日本で「紅茶派宣言」というコンセプトでキャンペーンを展開したという。
言葉を作り出すのも、流れを作りやすくなります。身近な例では、女性の交流会は「女子会」、リゾート地でテレワークを活用して働くのは「ワーケーション」という言葉も作られたのです。
当時のアメリカでは、食事は昼と夜の2食が一般的でした。そこでエジソンは・・・朝にトースターを使ってパンを焼き食べる習慣を発明しました(p167)
経験と他社事例の積み重ね
企業経営の視点からすれば、正しいかどうかは別にして社会の潮流からズレすぎると、ボイコットの対象となってしまうリスクもあるので、広告代理店の提案としては、こうならざるをえないのでしょう。
個人的には「地球温暖化キャンペーン」の本質は何なのか、ESG(環境・社会・ガバナンス)にジェンダー平等、多様性が加わってきた政治的背景は何かなど、根本的な部分に興味が向いてしまうのですが、自分が理系だからかもしれません。
やはり広告代理店としては、経験と他社事例の積み重ねが強みなんだろうと感じました。菅さん、よい本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・パタゴニアは売上の1%を自然環境の保護・回復のために寄付する「1%フォー・ザ・プラネット」という活動を続ける(p143)
・大手家電メーカーのワールプールが立ち上げたのが「Care Counts」・・・家で選択できずに汚れた服を着て友達に会うのが恥ずかしいことが原因で、学校にいけない子どもがいる・・学校に洗濯機と乾燥機を設置(p125)
・イギリスでは室温を18度以上に保てない家は売ったり貸したりできない法律がある(p93)
▼引用は、この本からです

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菅 順史 (著)、日本経済新聞出版
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
はじめに 社会の中に居場所はあるか?
第1章 社会の中に居場所をつくる「ソーシャル・ポジショニング」
第2章 社会から応援される企業の「7つのポジション」
第3章 「ソーシャル・ポジショニング」を実践する4ステップ
第4章 「社会発想」を身につける5つのキーワード
第5章 「推し」を社会変革エネルギーへ
あとがきに代えて 「8つ目のポジション」をつくる
著者経歴
菅 順史(かん のぶひと)・・・株式会社博報堂 戦略CD/PRディレクター。1987年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、2010年、株式会社博報堂に入社。PR戦略局を経て、2013年に「生活者発想」を掲げる博報堂のシンクタンク・博報堂生活総合研究所へ異動。その後、クリエイティブの部門に異動し、現在は生活者エクスペリエンスクリエイティブ局で戦略CD兼PRディレクター。これまでにACC TOKYO CREATIVITY AWARDSやPRアワードグランプリ、グッドデザイン賞などを受賞。
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