「日本創成論」糸川 英夫
2019/11/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
要約と感想レビュー
■戦闘機はやぶさ開発に関わり、
日本のロケット開発の父と言われる
糸川先生の一冊です。
バブル経済のピーク1990年に
書かれているだけあって
奢れる日本への警鐘となっています。
当時の日本は盛田昭夫と石原慎太郎が
「「NO」と言える日本」を出版し
話題となっていました。
日本の奢りのピークと言えるでしょう。
石原慎太郎氏は国際的な問題を
作り出す能力を持っているようです。
・「「NO」と言える日本」・・仮に日本が、半導体をソ連に売ってアメリカに売らないと言えば・・量子物理学が誕生する過程で、日本人はなんらの寄与もすることなく、しかし、量子物理学の上に立った半導体では世界一の金儲けをした・・日本に対する欧米の反感をいたずらにかきたてるものでしかないからだ(p86)
■こうしたエコノミック・アニマル
と世界からの批判される状況に
ローマに滅ぼされたカルダゴを
例に日本人に警告しています。
欧米では日曜日は思索の時間として
デパートもスーパーも閉まって
いる。
日本では経済効率だけを考えて
土日のみならず24時間営業の
店もある。
これでは日本人がエコノミック
アニマルと思われても
仕方がないではないか。
休みも取らず、娯楽もせず
経済的繁栄しか頭にないカルダゴ人が
なぜローマに滅ぼされたのか
考えてほしいということです。
・経済的繁栄しか頭にないカルタゴ人は、日曜日にも休まずにせっせと働いた。カルタゴには、当時のギリシアやローマの都市には必ずあった劇場や競技場などの娯楽施設がなにもなかった(p48)
■国の借金を増やし続けている点についても
出口政策がなければバブルでしかない
と警告しています。
今になって読んでみると
糸川先生には未来が見えている
ように感じます。
さらに驚くべきことに
糸川さんは中島飛行機で
ジェット・エンジンを世界最初に
開発していたという。
恐るべし糸川先生。
糸川さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本にはもともと哲学の風土がなく、絶対神をもつ宗教がなかったため・・欲望のままに突っ走ってしまい、その結果、今日の事態を迎えている・・金儲け、それは麻薬のようなものである(p142)
・日本はいま、世界からうとまれ、のけ者にされつつある・・・逆境への道を余儀なくされることは間違いなかろう。そうすれば、日本はいやでも考えざるをえなくなる(p258)
・日本人は外国に行ってある珍しい製品を見たとき、自分もそれと同じものをつくろうと考える。ところが、ユダヤ人は本能的に、その倍の大きさのものとか、半分の大きさの、あるいは逆の作用するものなどを考える(p156)
・日本の社会では、「一応、規則ではそうなっているが、この際、こうしたほうが丸くおさまるから」というほうがずっと通りがよい(p42)
・不景気になったら国民からお金を借りて公共投資でどんどん事業を増やす・・・すると税収入が増えるから、それで借金を返せばいい・・・しかし、借りた金を好き勝手に使って、返さなくてもいいとなったら・・よぶんな通貨が増えるということにほかならない・・コンドラチェフは60年ごとに大きな波がやってくるという。1930年(昭和5年)の世界恐慌から数えて1990年はちょうど60年になる(p199)
・ジェット・エンジンの原理は、ホイットルが1939年に考え出したことになっている。これが世界の定説だ。ところが、あなた(糸川英夫)はそれより二年早かった。世界で最初にジェット・エンジンの原理を考えたのはプロフェッサー・イトカワだと、歴史を書きかえなければならない(p104)
・学会の国際会議などで議長をやらされることもあるから、最初にどんな挨拶をしたらいいかとか、進行はどんな手順でやったらいいかといったことを、前の会議で議長をやった人のを必死になって聞いた・・・私は英語を覚えるのに映画を使った・・「クレイマー、クレイマー」という映画を私は六回見た(p223)
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★☆☆(79点)
目次
第1章 ナルキッソスの報い
第2章 科学者の視点
第3章 高貴なる精神
第4章 人間としての第3の顔
第5章 聖典『トーラー』の戒め
第6章 静かなる思策と対話を
第7章 拝金主義との訣別
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
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