糸川英夫がコンサルタントとして助言「逆転発想のビジネス哲学」
2020/10/08公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
ロケット開発から経営コンサルへ
1995年、糸川先生が83歳のときの書籍であり、糸川先生の未来への伝言といった趣の一冊です。糸川先生は55歳で東大教授職を辞し、「組織工学研究所」を設立。組織やビジネス分野の研究を行っていました。なんと、ダスキンのキャッチフレーズ「May I help you?」が糸川さんのアイデアだったというのに驚きました。
著者の考えは、モノを売るためには、お客様が何を求めているのか、それを徹底的に掘り下げて把握することが大切ということです。だから、著者は、ダスキンのキャッチフレーズを作るにあたって、ダスキンの使命とは奥さんの生活を楽にすることと考えたわけです。
「ダスキン」という会社がある・・・創業社長が「組織工学研究所」へ訪ねてきて、キャッチフレーズになるような言葉を考えてほしいといわれた・・・「ダスキン」を買った奥さんの生活が楽になるかどうかに社運を賭けるとなれば・・・営業用ライトバンのボディにすべて「メイ アイ ヘルプ ユー?」で英語で斜めに書くことにしたのである。この字体も私が書かせてもらった(p92)
中国の次はアフリカ
驚くべきことは、25年前に中国共産党の危険性を指摘し、中国の次はアフリカであるとしていることでしょう。つまり、いずれ中国ビジネスが政情不安でどうなるかわからない。
中国で一定の利益を回収したら、次はアフリカに行く前提でビジネスを行うべきだと提言しているのです。「中国はあくまで中継ぎ」と言い切る糸川先生の視点に驚愕しました。
日本企業の中国への進出が活発になっているが、その一方で、中国の政権が今後どうなるのか、不安を感じる・・・中国という山の向こうにアフリカという山があり、最終的な目的地をアフリカに定めるのである。あらかじめ中国を終点ではなく中継点と捉え、中国での商売が一定の水準に達したら、アフリカに行くことを前提にして、ビジネスの段取りを整える(p189)
10年ごとにテーマを変える人生
世の中には未来が見える人が存在するのだなと感嘆しました。その一人が糸川さんなのです。糸川先生は、飛行機→ロケット→脳波→ビジネスと新しい分野に挑戦してきました。これも自分に刺激を与えるための戦略だという。
そして、人生の選択においては「自分の社会的責任は何か」と考え、「自分だからやれること、自分しか気がつかないことをやる」ことにしてきたという。
ここまでの理系の天才といえる人は糸川さんだけです。小惑星イトカワをニュースで見るたびに思い出したいものです。糸川さん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・こうやって信頼関係を築きながら化粧品を買ってもらうと、先方は死ぬまでその化粧品を変えないという。「是非、お買いください」なんてことは一言も言わない(p23)
・「マーケットからの発想」とか「お客様の立場にたって」などともっともらしくいう会社は多いが、残念ながらそれが"空念仏"であることは、会社の受付を見たらすぐわかる(p98)
・中島飛行機に入った・・・そこで思いついたのが、会社の先輩の失敗譚(しくじりばなし)を集めることだった(p43)
・資本主義の欠点は「社会的責任」に対して重きを置いていないことにある。大事なのはすべからくカネであり、カネを増やすことが、資本主義における成功なわけだ。そのために人間をどんどん切り捨てることは、人類の不幸ではないのか(p62)
・教典の中にチベット仏教の神髄・・・<もし、あなたに深い妬みと反感を持っている人がいて、あなたの名誉を傷つけるようなことをいったり憎むようなことがあったら、その人はあなたの最高の師なのだと思いなさい・・・そういう人からあなたが学ぶことは無限にあるはずです>私は頭をガツンとやられたような思いがした(p162)
・「出るクイは打たれる」ではないが、世間にはとかく人の足を引っ張る人間が多い。引っ張られ転倒して怪我した人間は当然、相手を憎む。しかし、その一方でそういう自分の気持ちの貧しさに忸怩(じくじ)たる思いにかられ、自己嫌悪に陥るのである(p164)
・留学した人間は、自分が学んだ町を美化しがちだが・・・消費するのみで生産活動をしていないからだよ。遊ぶだけなら楽しいのも当然・・・私は遊びで海外旅行をしたことはない。生産活動を伴わない旅行は無意味だと考えるからだ(p195)
・1929年に例の世界恐慌が勃発する・・・大方の人間が60歳で定年を迎えるように、60年というのは世の中の世代が交代する区切りである・・・その60年前、1870年にはロンドンで恐慌が起きている・・・60年で価値観が逆転しパニックがくるという私の予測も1990年に大暴落が起き、バブルの崩壊という形で実証された(p56)
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1章 知ること
第2章 分析すること
第3章 創りだすこと
第4章 行動すること
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングへ
メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』] 3万人が読んでいる定番書評メルマガです。 >>バックナンバー |
|
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする