「海賊とよばれた男(上・下)」百田 尚樹
2012/11/29公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(94点)
要約と感想レビュー
■出光興産の創始者、出光佐三の
生涯を記した一冊です。
母が若い頃、出光のガソリンスタンドで
働いていたらしいので、
ご縁を感じながら読みました。
驚くのは、出光興産の出発は、
石油業界に興味をもった出光佐三に
日田重太郎という資産家が金を出したこと。
それも別荘を売ってお金を作り、
投資ではなく、
「おまえに、あげる」
お金を譲渡したというのです。
・「なあ、とことんやってみようや。わしも精一杯応援する。それでも、どうしてもあかなんだら-」日田は優しい声で、しかし力強く言った。「一緒に乞食をやろうや(上p230)
■出光佐三は、何度も倒産しそうになりながら、
油を改良し、売り先を探して
満州、朝鮮にまで進出しています。
商売は常に先行者の商圏を
機動力で奪っていく。
まさに海賊です。
何度も危機を迎えますが、
銀行が融資で出光を支えています。
それは、出光の可能性だけでなく、
消費者重視、社員尊重の経営思想が、
すべての人を引き付けたのだと思います。
・「これは好機です。高く売りましょう」と言う店員がいたが、鐡造は「馬鹿っ!」と一喝した。「国岡商店が軽油の備蓄を増やしたのは投機のためではない。消費者に安定供給するためではないか。今後、二度と卑しいことを言うな!(上p263)
■戦後も、無一文から千人の社員と共に、
銀行の応援で立ち直ります。
メジャー、役所、業界の抵抗を受けながら、
民族系石油会社として、備蓄タンク、
タンカー、製油所を建設していきます。
一貫しているのは、
日本国家のために、国民のために
石油を安価に提供するということ。
たった一人の理念から企業が興る。
そして、
一つ判断を間違えれば倒産という
創業の怖さを感じました。
百田さん、
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「愚痴をやめよ」・・・「日本には三千年の歴史がある。戦争に負けたからといって、大国民の誇りを失ってはならない。すべて失おうとも、日本人がいるかぎり、この国は必ずや再び立ち上がる日が来る(上p16)
・ガソリンがなければ、車に乗らないで、歩けばいい。足はそのためにある。灯油が足りなくてストーブが使えなければ、外套を着ればいい・・いちばん大事なことは日本人の誇りと自信を失わないこと。(下p348)
・政府や業界から目の敵にされるのは、兄である鐡造の独特の経営方針に理由があると思っていた。そのひとつは他社のように官僚の天下りをいっさい受け入れなかったことだ(下p315)
・国岡商店はイランの石油輸入に成功して、巨額の金を得た。一気に業界第三位に躍り出た。・・・ここで店員たちが驕り高ぶれば、国岡商店は滅ぶ(下p264)
・五十年は長い時間ではあるが、私自身は自分の五十年を一言で言いあらわせる。すなわち、誘惑に迷わず、妥協を排し、人間尊重の信念を貫きとおした五十年であった、と(下p291)
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★★★(94点)
著者経歴
百田 尚樹(ひゃくた なおき)・・・1956年大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」等の番組構成を手掛ける。2006年『永遠の0』で作家デビュー。他の著書に『海賊とよばれた男』(第十回本屋大賞受賞)等多数。
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昨年度の本屋大賞にも選ばれた話題作でもあります。
とにかくスケールが大きな人物であり、また大きな
目的(大義)により信念を貫く姿に日本は作られた
と考えさせられます。
そのような生き方に共感をして、また大きな抵抗
にあうも、それを跳ね返すことを信じぬくことに
人間の無限な可能性があると思いました。
また、主人公を学生のころより支え、常に理解者
として応援する人物にも大きな感動を覚えました。
それぞれの人物に大きな役割がそれぞれに存在する
ことと、真剣な生き方と覚悟に感動しました。
日本の礎を作り、また現代社会でも国民がその歴史を
最認識する本でもあると思いました。