「山本七平の智恵―日本人を理解する75のエッセンス」谷沢 永一
2012/09/26公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
「「空気」の研究」で有名な山本七平さんの考え方を解説した一冊です。山本さんは、特殊な文化を持った日本人というものを分析したのです。日本人が特殊だって?そう思われた方はぜひ読んでみましょう。
日本人は狭い土地に定住して住んでいますので、その仲間内でうまくいくことを重視しています。そして、付き合いは長期になることから、内輪の論理が優先するということなのでしょう。
・いわば日本全体が一つの温泉の大浴槽であって、生まれながらにみんあそこへ同じ温度のなかでほぼ似た体温で浸かっているから、その同じ温度の湯のなかにいる者同士が話し合ってこそ会話が成立する。・・・外からものを言えば、これは異端者ということになる(p23)
日本の特殊性が、特に大きな影響を与えるのが外交です。
日本人の内輪の論理で言えば、強いものは弱いものをいじめてはならない、他の人の迷惑になることをしてはいけない、自分のエゴ丸出しははずかしい、ということになります。
しかし、日本の外に出てみると、国際社会では、強いものが弱いものをいじめる、他人の迷惑は関係ない、自分のエゴ丸出し、といった国が多いのです。だから、国家間の紛争になると、日本が相手のことを思って穏当な処理をすると、相手は「これはもう少し押せる」と勘違いしてしまう。
そこで相手の強気に日本は当惑し、傷つき、怒り、「こんなに相手に配慮したのに!」「こんな相手とは付き合えない!」と逆切れしてしまう。相手からすれば、「これくらい大丈夫かな~」「日本はどう出てくるかな~」と思っているので、びっくりするのでしょう。
・アメリカ側から見ていると、日本民族というのは恐るべき耐久心がある、どれだけ攻めて、日干しにしていっても、断固として持ちこたえる国だと思われた。極端にいうと、それだから原爆が落ちたのである(p37)
日本の組織の話にすれば、普通にしているだけなら日本はとても住みやすい国だと思います。ところが、何か変化が求められたとき、なかなか議論が進まない。
これは論理よりも感情が先行する。何を言っているか、よりも誰が言っているかで決まってしまう。全員の合意を重要視する。「オレは聞いてない!」などと言う人がいる。提案の内容よりも、配慮を大切にする文化なのです。
・感情移入というのは、相手に対して存在権を認めない議論になる・・・自分は絶対にあらゆる害を受けてはならない存在である、その害を与えたものは絶滅されるべきである。まさに粉砕である。「フンサーイ!」というのを見るにたびに、ああ、日本人だなあと思って懐かしくなる。(p142)
外国から見ると、日本人とは礼儀正しく、粘り強く、勤勉な国民に見えると思います。それは事実ですが、そうなっている別の理由もあるわけです。ああ、日本って良い国だと思います。世界が日本人だけならね。
谷沢さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・仮に外交の話にすると・・・先方には先方の意思がある。もし先方が何らかのエゴとか要求をもった瞬間に、「その国は信用できない」ということになる(p47)
・上司は部下のことを聞かれたときに、「いや、彼はなかなかしっかりやってますよ」と言う。どうしてもそれも言えない場合は、「彼はマイペースだからね」と言う。・・・「いい人だからね」と言われたら終わり(p146)
・明治の頃、東京帝国大学の助手をしていた人が世界的な発見をした。そうしたら東京帝国大学は「こんな生意気なヤツは大学に要らん」といって叩き出した。・・・そのときにその助手は「私、こんなことを発見いたしましたが、大先生のお名前で発表してください」と言うべきだったのである(p127)
・ちょっと出すぎた努力家というのは絶対嫌われる・・・人事もそうである・・・「当然、オレだ」と思っているのが静かに出てきて、「このたびははからずも。全くびっくり、 何の心の用意もありません」と言う。(p55)
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【私の評価】★★★★☆(87点)
著者経歴
谷沢永一(たにざわ えいいち)・・・関西大学名誉教授。文学博士。昭和4年、大阪市生まれ。昭和32年、関西大学大学院博士課程修了。関西大学文学部教授を経て、平成3年、退職。サントリー学藝賞。大阪市民表彰文化功労。大阪文化賞。読売文学賞。毎日書評賞。専攻は日本近代文学、書誌学。評論家としても多方面で活躍
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