「人間通」谷沢 永一
2015/01/07公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(73点)
要約と感想レビュー
六十六歳となった関西大学名誉教授が、人生で早く知っておきたかったことを綴った一冊です。
人間というものは、完璧ではなく得意、不得手がある。そうした中で、組織の中でリーダーとなる人は人の心がわからなくてはならないと言っています。
・組織の要となり世の礎となりうるための必要条件はただひとつと言える。それは他人の心がわかることである。ただそれだけである。(p17)
そして、人間というものは、一生を通じて自分を認めてくれ、認めてくれと叫んでいるようなものなのです。
人が昇進すれば、自分の境遇を比較し、嫉妬の思いが心を満たす。それが悪い影響を与える場合もあれば、個人の努力を促す場合もある。なんと人間とは、欲深い動物なのでしょうか。
・人間が生涯をかけて最も強く追い求め欲しがるものはなにか。詰まるところはただ一筋、自分が世間から少しでも高く認められる評価である(p41)
最後に、人から舐められる人は、本業に真剣に取り組むべしと助言しています。
人は自分の居場所を上げるために、人を見下したい欲求がある。そうした本性を跳ね返すためには、真剣に取り組む姿勢を見せなくてはならないということです。
谷沢先生、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・舐められる・・・相手がこちらを貶めるために何か仕掛けてくる場合は、相手が切り込みに成功すると自信を持っているからであり、それは自分が平素から舐められているゆえである・・本職に精を出して気を張りつめていなければならなぬ(p38)
・根回しは単に面子を立てるだけではない。その人の自覚を高め遣る気を起こさせえる手立てである。人を心の底から喜ばせる素晴らしい措置なのである(p68)
・現代はあまりに書物が多すぎる・・・その主題に関係があるらしい本を一冊残らず全部買ってタクシーで帰ったらよい。恐らく十万円もあれば大丈夫だろう。それを高価いと思う根性が間違っている(p101)
・官僚は上に弱く下に強い・・・独立自尊の気概を以て事業を起そうとする可愛気のない型には、手をかえ品をかえ意地悪の限りを尽くす(p146)
・官僚が保持する特権である通達なるものは稀代の毒薬として作用する。平成二年三月、大蔵省銀行局長土田正顕は俗に総量規制と呼ばれる短い通達を全国すべての金融機関に発した(p154)
人間が何事かにひたすら努め励むのは、自分の名前を世に広めてもてはやされたいからである。人間は息をひきとるまで生涯をかけて、私を認めてくれ、私を認めてくれと、声なき声で叫びつづける可憐な生き物なのだと思われる。
私が新入社員の頃、優秀な某先輩は、すごい時間をかけて自前で業務の計算プログラムを作成しました。毎日、夜中まで残業して、数ヶ月かかったそうです。
その先輩が一番うれしかったのは、完成したプログラムについて所長にその報告したとき、「あなたの名前をちゃんとマニュアルに入れておきなさいよ」と言われたことだそうです。
自分の名前が製作者として残ることと、「あなたこそが名前を残すべき人である」と所長から認められたことがうれしかったのでしょう。
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★☆☆(73点)
目次
人と人
組織と人
言葉と人
本と人
国家と人
人間通になるための百冊
著者経歴
谷沢永一(たにざわ えいいち)・・・関西大学名誉教授。文学博士。昭和4年、大阪市生まれ。昭和32年、関西大学大学院博士課程修了。関西大学文学部教授を経て、平成3年、退職。サントリー学藝賞。大阪市民表彰文化功労。大阪文化賞。読売文学賞。毎日書評賞。専攻は日本近代文学、書誌学。評論家としても多方面で活躍
読んでいただきありがとうございました!
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