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「プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?」北野 幸伯

2012/04/09公開 更新
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プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?


【私の評価】★★★★★(94点)


要約と感想レビュー

プーチンは中国と手を結ぶ

テレビを見ていると「中国が靖国参拝を批判して・・」「韓国議員が竹島訪問・・・」「ロシアがグルジアを攻撃・・・」「拉致被害者の安否を・・・」「沖縄米軍基地の移設が・・・」「北朝鮮のミサイル発射・・・」等、いろいろな国際関係の報道がされています。でも、新聞を読んでもテレビを見ても、どうも今ひとつ外交というものがよくわからないという人のための一冊です。


まず、国家間の外交とは、思ったよりも単純な理論で動いているとこの本は教えてくれます。その理論とは「国益」であり、国益とは金儲けと安全なのです。そして、世界の歴史は「覇権争奪戦」の歴史であり、歴史を振り返ってみると、「No.1国家とNo.2国家は、つねに決着がつくまで争っていた」のです。


ロシアを中心に見てみると、エリツィン時代の1998年のロシアの資源は新興財閥のものとなり、欧米は会社ごと買収しようとしました。しかし、2000年に大統領となったプーチンはマスコミ・政治を支配し、欧米による買収を阻止し、新興財閥から資源を取り戻したのです。するとその後、キルギス、グルジアで選挙を批判するデモからチューリップ革命が起こったのです。


これは偶然ではなく、必然なのです。ロシアの資源を支配できなかったアメリカが、別の手段を使ってロシアの周辺国に傀儡政権を作ろうとしたのです。それに対しプーチンは、中国と手を結び、上海協力機構を強化し、軍事演習を実施しました。さらに石油のルーブル取引を開始し、外貨準備のドル比率を下げたのです。明らかにアメリカとの戦いを選んだということです。


プーチンが大統領選に勝利したのは2000年3月。・・プーチンは、就任早々「革命的改革」に乗り出します。それが、「連邦管区」の設置。・・連邦政府は、連邦法に違反した首長を解任できる権利をもつ(p44)

またプーチンの時代が戻ってくる

プーチンからメドベージェフ大統領となり一時、欧米、ロシア間の雰囲気はよくなりますが、またプーチンの時代が戻ってくるというのが著者の見立てです。これからどうなるか、あなたなら予想できますね。プーチンは、仮想敵国・中国との同盟を決意しました。ロシア人のアメリカ観・中国観を一言でいうと、「アメリカを憎み、中国を恐れる」のです。結果、ロシアは欧米と対立するしかないのです。


こうした流れで見ていくと、アメリカと中国との覇権のぶつかりが、必然だとわかります。そして、アメリカの一極支配を終わらせようとするプーチンが中国についてしまいました。北野さんの驚異的なところは、10年前にリーマンショック(アメリカの没落)を予言したことです。そしてまた、アメリカと中国・ロシア連合の対立の予言は当たるのでしょうか。


北野さんは、「平和な時代」が過ぎ去ろうとしていると警告しています。なぜかというと、「アメリカが日本を守れなく日」が近づいているのです。ドル体制は弱体化し、アメリカ国内には石油に代わる資源がありあまっているとすれば、アメリカには、もはや戦争する理由がなくなります。欧米の時代は終焉を迎え、アジアの時代が始まるというのですが、その中心には中国がいるのか、それとも日本なのでしょうか。


中国の国家ライフサイクルを見ると、中国は日本の30年遅れですから、2018年末から2020年ごろに、日本の「バブル崩壊」に相当するできごとが起こると北野さんは予言しています。北野さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・グリーンスパンさんが、「米軍によるイラク開戦の動機は石油利権だった」、それは「誰もが知っている事実」と語っている(p139)


・中東産油国で反米の国もあります。その代表がイラクとイランでした。しかし、アメリカはイラクを攻撃し、傀儡政権をつくった。残るはイランです(p290)


・尖閣諸島中国漁船衝突事件・・・アメリカが「尖閣諸島は安保条約の適用対象」と宣言した効果は大きかった。中国は、日本のことを「屁」くらいにしか考えていないでしょうが、アメリカと戦うことはできません(p248)


▼引用は下記の書籍からです。
プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?
北野 幸伯
集英社インターナショナル
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【私の評価】★★★★★(94点)


目次

第1章 神への道─プーチンはいかにしてロシアの絶対権力者になったのか?
第2章 米ロ新冷戦─プーチンはいかにアメリカを没落させたのか?
第3章 休戦─米ロはなぜ和解したのか?
第4章 最終決戦─プーチンはどうやってアメリカに「とどめを刺す」のか?



著者経歴

北野 幸伯(きたの よしのり)・・・1970年生まれ。国際アナリスト。ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学卒業後、プーチン大統領の元ブレーンとともに日露ビジネスコンサルティング会社IMT設立。1999年からメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」を発行。イラク戦争、北朝鮮情勢、次はイランなど次々と予測を的中させる。モスクワに28年滞在。2018年、日本に帰国


ロシア関係書籍

「諜報国家ロシア-ソ連KGBからプーチンのFSB体制まで」保坂 三四郎
「ロシア やはり恐ろしい闇の歴史: 教科書に載らない暗黒の履歴とは」歴史の謎を探る会
「ロシア皆伝」河東哲夫
「ロシアについて 北方の原形」司馬 遼太郎
「ロシア闇の戦争―プーチンと秘密警察の恐るべきテロ工作を暴く」アレクサンドル・リトヴィネンコ
「プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?」北野 幸伯


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