「齋藤孝のざっくり! 美術史 5つの基準で選んだ世界の巨匠50人」齋藤孝
2022/09/13公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(75点)
要約と感想レビュー
こんな美術史の授業を聴きたい!
前日に続き美術つながりで、この本を手にしました。齋藤さんは文学部の教授ですが、そんな枠は取っ払って、自分が学生だったらこんな美術史の授業を聴きたい!という内容になっています。
本当に「うまい」画家としてはレオナルド・ダ・ビンチ、デューラー、レンブラント、フェルメール、円山応挙など納得の画家ばかり紹介されています。「スタイル」を持っている画家としては、ゴッホ、モネ、セザンヌ、ピカソ、ルノワール、シャガール、マティス、エル・グレコと有名どころがならびます。
「アイデア」「一本勝負」ではダリ、クレー、ボシュ、アンディ・ウォーホル、スーラ、クリムト、ポロックなどと抽象的なものが増えてきます。後半はこの抽象絵画をいかに楽しむのか、ということを論議しています。ポロックなどは、もう私にはわからない。「なんじゃコリャ」と笑うしかないのです。
・抽象絵画鑑賞・・・思い切って「おもしろいじゃん」とまずいってしまうのです(p266)
抽象絵画をいかに楽しむのか
面白いのは、印象派が生まれたのは、チューブ絵具が発明されて絵具の色では個性が出せなくなったので、画法で個性を出そうとしたという話があるということでしょう。同じ論法で考えれば、写真やテレビという技術が発明されたので、写実では個性が出せなくなったので、キュビズムや抽象絵画が出てきたとも考えられるのです。
アンディ・ウォーホルにいたっては、自分で描くわけではなく、写真をシルクスクリーンで複写する作業さえ自分でやっていないのです。技術の発達により、絵画とは何なのか、画家の個性とは何なのかと考えているうちに、抽象絵画に行き着いてしまったというふうに感じました。
・ウォーホルは、自分のアトリエを「ファクトリー」と呼び、若者たちを使って作品を制作するという、芸術というよりはビジネス的な生産を行っています(p222)
美術を楽しむ
今は画家の名前でネットで検索すれば、簡単に代表的な作品を見ることができるので美術を楽しむには良い時代だと思います。そして、現物を見に行ってもいいし、自分で作品を作ってみてもいい。極端に言えば、キャンパスに絵具を投げつけて乾かせば作品になるのです。自分なりの美術を楽しみましょう!
齋藤さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「サモトラケのニケ」の実物をルーヴルで見ましたが、見てまず驚かされるのは、なんといってもその大きさです。あれはもともと船の舳先につけられたもの(p24)
・フェルメールの絵から感じるのは、布の暖かさだけではありません。陶器の常タサや、水のもつ潤い感・・(p84)
・セザンヌの青はどうやってつくるのか、画家がみんな盗もうとしたけれど、本人は絶対見せなかったといいます(p296)
・マルクスが資本主義的世界における労働のあり方を批判・・・ミレーの描く世界では・・・働いていること自体が一つの瞑想にもなっている(p154)
【私の評価】★★★☆☆(75点)
目次
序章 5つの基準で勝手に選ぶ美術の巨匠50人
第1章 本当に「うまい」画家ベスト10
第2章 自分だけの「スタイル」を確立した画家ベスト10
第3章 絵の中に「ワールド」を作った画家ベスト10
第4章 奇想天外「アイデア」の画家ベスト10
第5章 「一本勝負」で生き残った画家ベスト10
第6章 抽象絵画を見るための身体技法―「わからない」から「おもしろい」へ
終章 美術とは何か?―見えないものを見るためのレッスン
著者経歴
齋藤孝(さいとう たかし)・・・明治大学文学部教授。1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科学校教育学専攻博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』] 3万人が読んでいる定番書評メルマガです。 >>バックナンバー |
|
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする