「中国が台湾を侵略する日」宮崎正弘×石平
2022/03/12公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
ロシアがウクライナに侵攻しましたが、これまではどちらかといえば中国が台湾に侵攻するのではないか、と心配されていました。アメリカも軍備をアジアにシフトして、イギリス、ドイツも空母や軍艦をアジアに派遣していたのです。この本では、ウクライナ侵攻前の中国の危険性について、二人の論客から教えてもらいます。
一つはっきりしていることは、中国は経済も軍事も政治も一貫性があるということです。つまり「台湾は中国のものである」という目標を達成するめに、アメリカ大統領バイデンの息子に賄賂を渡す。発展途上国に資金援助するときには、「ひとつの中国」の政策を支持することを条件とする。台湾侵攻のための海軍力、ミサイル戦力を強化していく。このように中国は、一貫性を持って行動し続けているのです。
・息子ハンター・バイデン氏が経営する投資会社へ中国から巨額の資金が流れ込んでいるのは周知の事実です(石平)(p22)
中国の台湾侵攻の可能性に対して、アメリカ、EUの対応は、まず明らかな弾圧、民族虐殺である新疆ウイグル自治区の問題を追求しています。具体的な制裁も実施しています。また、中国による台湾侵攻を牽制するために、台湾への武器供与、「航行の自由作戦」実施、南西諸島へのミサイル部隊の配置、海軍力の強化を行っています。EUもイギリスの空母、ドイツ、フランス、オランダのフリゲート艦がインド・太平洋に派遣しています。
さらに世界の半導体製造の半分を占めているというのTSMCの工場をアメリカ、日本に建設することにしています。最悪の事態を想定して、できることは何でもやっていかなくてはならないのでしょう。
・世界最大の半導体メーカーのTSMC(台湾積体電路製造)に最新工場をアメリカに建設させるのです。アメリカは最悪の事態を想定して着々と手を打っています(宮崎)(p66)
こうした現在の状況を羅列してわかるのは結局、中国が台湾を侵攻するのかどうかは、習近平しだいということです。習近平は今回のウクライナ侵攻から何を学ぶのでしょうか。短期間に占領できなければ、世界から孤立すると考えるのか、ウクライナと違って台湾はもともと中国の一部なのだから問題ないと考えるのか。
台湾がウクライナのようにならないように、日本がウクライナのようにならないように核シェアの検討も含めて準備したいものです。宮崎さん、石さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・トランプ政権・・・新疆ウイグル問題を「ジェノサイド」(民族虐殺)と認定・・・EUもウイグル弾圧関係機関への制裁を決議しました。ところが、日本はまだやっていません(宮崎)(p33)
・H&Mやナイキ、アディダスが、強制労働で収益を稼いでいる「新疆綿」を使わないと宣言し、アマゾンも新疆綿の使われている商品の取り扱いを止めると中国側メディアが報じました(石平)(p129)
・『外交青書』・・・2012年までは「台湾は重要な地域」・・・2013年に安倍晋三政権が誕生してから「台湾は重要なパートナー」に昇格、2015年からは「基本的価値を共有する『大切な友人』」という表現でしたが、2021年度版からは「極めて重要なパートナー」とランクが飛躍しています(宮崎)(p35)
・トルコは、中国からワクチンを貰った代償として、自国内にいるウイグル人の監視を強めています。トルコとしては劇的な譲歩です(宮崎)(p147)
・尖閣諸島に中国人が上陸したぐらいで日本国民は怒らないと思います。朝日新聞なんかが「冷静に対処せよ」とキャンペンも張るでしょうから・・・犠牲者がでたり、その映像が流れたら世論も変わるかもしれない(宮崎)(p192)
・2010年にエクアドルは、10億ドルの融資契約を中国国家開発銀行と交わしましたが、その際に「エクアドルの政府機関が中国に不利益になる行為」をした場合、債務不履行とみなして貸し手が全額返済を求められることにしたといいます(宮崎)(p108)
・一帯一路・・・アフガニスガンで銅鉱山開発をしている中国人を、アフガニスタン軍1万5000人がゲリラの襲撃に備えています。その兵隊に払う給与の半分を間接的に日本は出しています(宮崎)(p117)
【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
第1章 「四面楚歌」の中国に狙われる日本
第2章 嘘で塗り固められた中国経済に崩壊の兆し
第3章 中国だけが繁栄する「一帯一路」に世界が反発)
第4章 コロナより怖い「中国一人勝ちの脱炭素」の罠
第5章 中国経済は「台湾侵攻」で甦る?
著者経歴
石平(せき へい)・・・評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。
宮崎 正弘(みやざき まさひろ)・・・1946年金沢生まれ。学生時代、日学同の機関紙である「日本学生新聞」編集長。早稲田大学中退後、雑誌『浪漫』企画室長を経て、貿易会社を経営。評論家、作家として中国全土をくまなく踏査、中国経済の実態報告に定評がある。
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