「なぜ中国は日本に憧れ続けているのか」石平
2021/12/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
中国で「精神的日本人」が逮捕されたという記事を思い出して、手にした一冊です。その記事は「旧日本軍に憧れる中国人が、旧日本軍のコスプレを楽しんでいるなどして逮捕された」というもの。中国では1990年から江沢民がはじめた反日教育や抗日テレビドラマなどの30年にもわたる洗脳によって、日本人は非情で憎むべき民族と考える中国人が多いのです。その結果、反日教育を受けた世代が、中国社会で実務を担う30代、40代となった現在、日中関係がどうなるのか、不安になります。
実際、著者が中国に帰省すると、友人との雑談の中で、日本人を抹殺しなければならない、日本に原爆を投下しよう、日本人は豚以下だ、などの罵詈雑言で盛り上がることが、よくあったというのです。そうした中で、どうして「精神的日本人」のような中国人が出現するのかといえば、元々、中国人は日本人に憧れていたのではないかと、著者は考えるのです。
・Cくんが興奮気味に言い放つ。「原子爆弾だけではダメだ。恨みを晴らすには、やはり一人ずつ殺したほうがよい。今度、東京大虐殺するとき、俺の腕前を見せてやるぞ」と、Dくんは片手で人の首を切る仕草をしている(p126)
中国人は古代から、海の向こうに仙人の住む「三神山」という理想郷があると考えており、不老不死の薬を求めて、東の海に繰り出して行ったと記録されています。そして古書には「倭国(日本)」は素朴で、正直であると記載されるなど、当時中華思想として周辺の民族を野蛮な劣等なものと見下していたのと比べると、日本に対してまったく別のイメージを持っていたという事実があるのです。
また、鑑真のように中国からの多くの渡来僧が日本に移り住み、した多くの中国人が日本を第二の故郷として移り住んでいるいう事実。中国四川省生まれの著者が確信しているのは、現在でも実際に日本を旅行した中国人は、中国で考えていた日本人の印象との違いにびっくりし、日本を好きになるということからも、日本は中国人にとって、生活しやすい理想郷であるということなのです。
・『随書』・「倭国伝」・・・当時の日本人の国民性・・・人々の性質は素朴で正直であり、雅やかでさえある・・・原文は「有雅風=雅風あり」(p43)
日本人はウイグル人と同じくらいお人好しなので、日本が住みやすい国であることは、事実なのでしょう。その新疆ウイグル自治区では、中国に騙されて自治区となったために、100万人とも言われるウイグル人が強制収容所に収容されています。「我が闘争」の中で日本人を二流民族とこきおろしていたヒトラーと組んだ日本人は、現代社会も反日教育を続けてきた中国に日中友好の名のもとに政府開発援助(ODA)で資金援助し続けてきました。邱永漢は「まだまだ騙せる日本人」と表現していましたが、お人好し日本人はそれだけ素晴らしい存在なのです。
米中対立の中で、お人好し日本人がどのように立ち回るのか、興味深いですが、その対応が日本の未来を決めるのでしょう。石さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・魏志倭人伝・・・高句麗については「男女の風俗は淫らである」と書かれたのに対し、日本人については「倭人の風俗には節度がある」(p38)
・1990年代から江沢民政権の行った反日教育の結果、日本を憎んだり嫌悪したりする中国人は現に多くいよう(p4)
・天安門事件・・・反日の洗脳教育を行って日本という国を「憎むべき外敵」に仕立て、国民の愛国情念を煽り立て・・・あらゆるメディアや媒体を総動員した凄まじい洗脳教育であった
(p113)
・中国の国家・・・「義勇軍行進曲」は、「敵国」であるはずの日本で作れれた・・・共産党員である彼(聶耳)は反共の国民政府によって逮捕される恐れがあった・・聶耳は日本にいる兄を頼って逃げてきた(p98)
・今でも元号を使っている日本、今でも1300年前からの伝統を現代生活に融合させているこの日本は、文化的喪失感の強い中国にとって、まさに羨ましくてたまらない存在なのである(p9)
・教育熱心な先生がた、親切な公務員、緑豊かな景色、料金をぼったくりしない観光地、良好な治安や日常生活」。・・・このような日本の良さは、まさに祖国中国の現状とは正反対なものであろう(p194)
【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
第1章 2000年前から中国に憧れられる国日本
第2章 中国人が模範にした明治日本
第3章 中国はいかにして「反日国家」になったか
第4章 日本人との同化を望む「精神的日本人」の誕生
第5章 中国は今、日本の何に憧れているのか
第6章 習近平政権のアジア支配戦略と反日的体質
著者経歴
石平(せき へい)・・・評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。
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