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「なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか 中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる」石 平

2020/08/07公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

 2015年に執筆された中国の目指す太平洋への覇権と、その必然性について指摘した一冊です。当時、2013年の習近平とオバマ大統領との初会談で、習近平が「太平洋は広い。米中両大国を十分に受け入れる余裕がある」と発言していました。


 私は「何を言っているの?」と意味がわかりませんでしたが、中国は本気で計画を進めました。中国は2014年から南シナ海を埋立て、人工島に航空基地と軍港を建設し、完成させたのです。


・中国は尖閣諸島に対する領有権や東シナ海・南シナ海の広範な海域に対する覇権を自分たちの「核心的利益」と主張し・・・アメリカが中国の「核心的利益」さえ認めてくれれば、中国も太平洋地域におけるアメリカの利益を「尊重=容認」してあげる。これこそが中国の持ち出した「新型大国関係」という言葉の真意(p167)


 中国人であった著者が伝えたいことは、中国の皇帝は、周辺諸国から認められた「本当の皇帝」でなくてはならないということです。もし、「本当の皇帝」になれなければ、中国国内で権力を維持できない。


 だから、過去の中国の皇帝は、「本当の皇帝」であることを証明するために、皇帝就任後に周辺諸国に侵攻してきたのです。これは中華と自称する中華人民共和国の避けられない枠組みなのでしょう。そして、現在も中国は、チベット、ウイグル、ベトナム、インド、南シナ海と侵攻し続けてきたのです。


・彼らが「本物の中華皇帝」になることができなければ、別の誰かに取って代わられ、その身すら滅ぼされる、という歴史を何度も繰り返してきたからである(p5)


 中国の「革新的利益」が西太平洋の覇権であるとすれば、アメリカはそれを許さないでしょう。一方、中国側にしても、西太平洋の覇権を確立しなければ、自らの身の破滅につながると認識しているはずです。


 中国の軍備拡大や2010年7月から施行された国防動員法など、中国は戦争への準備を着実に進めています。米中ともに衝突は不可避だとわかっていたはずで、歴史はその通りに進んでいるのです。石(せき)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・中華人民共和国の最高指導者となった毛沢東と鄧小平はともに、政権を握ってからすぐさま対外戦争を起こした・・・毛沢東が参戦したのは朝鮮戦争であり、鄧小平が発動したのは「ベトナム国境戦争」(p61)


・新疆ウイグル地域とチベットの占領をもって、中華人民共和国はかつての清王朝が直接統治する範囲よりも広域な領土拡大に成功し、清王朝以上の版図をもつ大帝国を復活させた。もちろんそれだけで毛沢東共産党は満足しなかった(p117)


・1978年12月、ベトナムは中国を後ろ盾にしているカンボジアのポル・ポト政権に対する軍事的攻撃を仕掛け、それを滅ぼしてしまう・・・新しい中華帝国の「二代目皇帝」となった身として、とうてい看過できることではない・・・だからこそ、鄧小平は戦う以外になかった。自らの進める「改革・開放路線」が緒についたばかりで経済は依然として疲弊していたにもかかわらず、対ベトナム開戦を決意したのだ(p134)


・相手のほうが強かったときには、屈辱の「逆朝貢」も辞さずに相手を手懐ける。しかし、いったん帝国自身が強大化して周辺民族を押さえつけるほどの力を身につけたときには、ただちにその正体を露わにして侵略を進め、周辺の国々を滅ぼして自国の一部にしてしまう(p54)


・ベトナムにあった歴代王朝は、史上最強ともいわれる唐帝国や明帝国に対して反抗的な姿勢を貫き、中華秩序への反乱をたびたび起こして歴史的大勝利を収めた・・・そして目下、南シナ海の領有権問題をめぐってベトナムは中国と激しく対立している・・・「歴史は繰り返す」という感慨を禁じえない(p74)


・フランスがベトナムを中華秩序から切り離させた6年前から、明治政府は電光石火の素早さで琉球処分を成し遂げたのだから、近代において中華秩序の一角を最初に崩したのは、じつは日本なのである(p86)


・中華人民共和国の指導者たちはフランスやイギリスなどかつての西洋列強に対しては「歴史問題」など持ち出さず「友好」を語るだけだが、唯一日本に対しては「歴史の清算」を口にする。その理由の一つはやはり、日本こそが中華帝国の二千年の夢を徹底的に打ち破って中華秩序を崩壊させた最大の「犯人」であることを、中国の指導者たちがよく知っていることにあろう(p91)


・2010年7月から施行された国防動員法は・・・いったん有事となれば、18歳から60歳の中国公民(女子は55歳まで)は国防勤務に当たらねばならないし、必要な戦略物資は民生用も含め、徴発される。さらに、金融・交通・運輸・郵政・電信・新聞出版・放送テレビ・ネット・医薬衛生・食糧供給・エネルギー・水源・商業貿易が統制下に置かれる(p148)


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▼引用は、この本からです

石 平、PHP研究所


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次

序章 「習近平アジア外交」に見え隠れする中華思想の亡霊
第1章 2000年の帝国史が教える「中華秩序」の実体と虚構
第2章 「中華秩序」を粉々に破壊したのは近代日本だった
第3章 毛沢東が失敗した中華帝国の再建、鄧小平の隠忍自重戦略
第4章 パックス・アメリカーナ in アジア VS 新中華秩序
終章 日本民族は「アジアの最終戦争」をどう乗り越えるべきか



著者経歴

 石平(せき へい)・・・評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。


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