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「私たちは中国が世界で一番幸せな国だと思っていた」石平、矢板 明夫

2018/07/16公開 更新
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私たちは中国が世界で一番幸せな国だと思っていた


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

 中国で大学卒業後、来日し、日本国籍を取得した石さんと、日本人残留孤児2世として来日し、松下政経塾から産経新聞に入社した矢板さんの対談です。二人が伝えたいことは、中国共産党こそが日本を悪魔として中国人民を洗脳している、悪の枢軸ということです。


 天安門事件以降、江沢民政権は、日本が軍事国家化しており、日本人を野獣のような国民として何十年も洗脳してきました。中国人民は情報統制されているので、それが嘘なのかどうかわからないのです。中国人は、日本人が狂暴な民族であり、憎むべき国であると信じこまされているのです。


・私なりに分析すると、天安門事件であれほど若者達を殺した共産党が求心力を取り戻すためには、愛国主義を掲げるしかないわけです。愛国主義を掲げると、反日もやらなければならない。なぜなら、敵のない愛国主義は盛り上がらないからです。だから日本を敵として仕上げる(石)(p117)


 二人が恐れるのは、中国社会では文化大革命のように架空の敵を作り上げ、抹殺することで権力を掌握してきた歴史があることです。中国人でさえ、裏切りに合い、投獄されることもあれば、事業を乗っ取られることもある。中国社会は憎しみと悲しみの大地であり、殺されないためには嘘も方便であり、場合によっては嘘で相手を抹殺することでしか生き残ることができない社会なのです。


 もう手遅れかもしれませんが、日本も抹殺されないよう注意しなくてはならないのでしょう。ナチスドイツのように、ユダヤ人を敵視して、抹殺しようとした歴史があるし、現在中国は、新疆ウイルぐ自治区で人口の2割近い100万人のウイグル人を強制収容所に収容して、犯罪者として臓器提供ドナーとして活用していることを認識しなくてはならないのです。


・密告社会に身を置いていると、結論としては誰も本音を言わなくなる・・共産党の宣伝を疑問視したりすると、周りに密告する奴がいる・・・人民を支配するにはうまくできている仕組みです(矢板)(p38)


 現在の中国は、反腐敗キャンペーンで、役人が賄賂を取らなくなり、事業が進まなくなっているという。経済成長に停滞感があるなかで、さらに中国人民に不満が溜まっています。二人が恐れるのは、中国共産党がクリミアと同じように台湾や尖閣諸島を侵攻することによって、そうした不満を緩和させようとするのではないか、ということです。石さん、矢板さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・私がまず衝撃を受けたのは、日本の警察官が交番にいる人を殴っていないことでした(矢板)(p58)


・90年代の江沢民政権になって、中国で「反日教育」が盛んになり、日本人は中国人をいじめるとか教えていましたが、私のアルバイト先の厨房にいる日本人はみんな親切にしてくれた(石)(p97)


・許せないのは、中国人に反日感情を抱かせるように仕向けた共産党の悪辣さです。江沢民が来日した1998年そのころの中国の日本に対する言説は嘘、捏造の限りを尽くしていました。中国国内の新聞を読む中国人には、日本では髭を生やした軍人たちが東京を闊歩している。軍国主義が完全に復活している(石)(p119)


・テレビドラマで、中国の東北部の真冬の大雪のなか、馬に乗って日本兵としてやってきて、ある村に入った。そこに若い娘がいる。ドラマのシーンでは、日本兵はすぐに馬から降りて、彼女をレイプすることになっているわけです(矢板)(p123)


・反腐敗キャンペーンが政治経済の活力をすべて失わせた・・・賄賂を贈れば、問題をすぐ解決してくれた。しかし、いまは誰も賄賂を受け取ってくれない。そのかわりに誰も仕事をしてくれない(石)(p178)


・日本人12人がスパイ活動を行ったとして、拘束されました・・・8人が起訴されています・・温泉を探してくれと依頼されて中国に来た日本人をスパイと言って捕まえるのは、常識的には考えられない・・「村山談話を継承し発展する会」の理事をやっている方が中国でスパイとして拘束されるのだから、もう恐くて中国には行けない・・(矢板)(p196)


・習近平は・・ロシアに専門家を派遣して、ロシアがクリミア紛争でクリミアを支配下に置いたプロセスを詳細に研究させている(矢板)(p208)


・堂々と「沖縄独立シンポジウム」を北京で行っていることに日本政府が抗議しないのはおかしいよ・・・東京で台湾独立問題のシンポジウムを開催したら、中国大使館の人間がすっ飛んできて、猛烈に抗議しますね(石)(p214)


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【私の評価】★★★★☆(86点)


目次

第1章 暗黒の少年時代
第2章 毛沢東がつくった恐怖の二七年間
第3章 日中が蜜月だった八〇年代
第4章 人生の転機、アイデンティティの克服
第5章 反日と愛国の源流
第6章 王岐山を支配下においた習近平が狙うのは太子党
第7章 強権政治の裏にある指導者たちの不安
第8章 成長なき経済の悲劇
第9章 習近平最大のばくち、台湾併合



著者経歴

 石平(せき へい)・・・評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。


 矢板明夫(やいた あけお)・・・産経新聞外信部次長、元北京特派員。日本人残留孤児2世として、1972年、中国天津市生まれ。15歳のときに日本に引き揚げ。千葉県出身。1997年、慶応大学文学部を卒業。同年、松下政経塾に入塾(第18期生)、アジア外交が研究テーマ。その後、中国社会科学院日本研究所特別研究員、南開大学非常勤講師を経験。2002年、中国社会科学院大学院博士課程修了後、産経新聞社に入社。さいたま総局などを経て2007年に中国総局(北京)特派員。2016年秋に本社外信部編集委員、2017年4月から現職


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