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「経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか?」野口 悠紀雄

2021/04/20公開 更新
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「経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか?」野口 悠紀雄


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

新型コロナの経済への影響

昨年の10月に書かれた新型コロナによる経済への影響を分析した一冊です。著者は大蔵省から大学教授となっているので、経済学者の視点となっています。


新型コロナの影響は、鉄道・航空、飲食、旅行、映画・演劇・遊園地などの一部の業界の売上を激減させました。特に飲食店やタクシー、美容・理容・エステ、レジャー関連など従業員規模が小さく給与水準の低い産業に被害を与えています。


その一方で、上記以外の業界や公務員はそれほど影響がなく、実質3割は苦しみ、7割はそれほど影響がない状況だという。


3月の家計調査・・・需要が大きく減少したのは全体の約3割・・・外食食事代(対前年同月比30.3%減)、飲食代(53.5%)、教養娯楽(20.6%)、宿泊費(55.4%)、パック旅行費(83.2%)。映画・演劇等入場料(69.6%)、遊園地入場・乗物代(86.8%)などだ(p18)

ロックダウンしないスウェーデン

驚くのはあまり報道されていないことですが、日本と同じように強制的なロックダウンを行っていないスウェーデンの状況です。もともとスウェーデンでは高齢者が体調悪化した場合、余命や予後の生活などを考慮して、胃ろうや点滴といった延命処置をせずに、自然な死を迎える老人が多数だという。


今回のコロナウイルスについても高齢者は後回しとし、余命が少なければICUに入ることはなく、ある意味、後期高齢者を見捨てているのです。高齢者は余命が少ないのですから、合理的といえば合理的ですが、苦しくて死にたくても死ねない日本とあまりに対照的でびっくりします。


スウェーデンでは、集中治療室に入れる人々に年齢制限を設けた。後期高齢者は、コロナウイルス感染が疑われるような症状が発生した場合には、救急病棟やICUに行くことはない・・・延命の可能性は低いからだ(p86)

若い人の新型コロナ死亡率は低い

日本の株式が昨年3月に底を打って上昇していることについて、著者は実体経済から離れた動きとして理解できないとしています。「株価は美人投票」と言われるように、元大蔵官僚の著者でも株価の変化はわからないのだなと妙に納得してしまいました。


日本人で65歳未満の人々の場合には、新型コロナウイルスによる死亡リスクは、自動車で通勤する場合の死亡リスクとほぼ同じほど低いという。それでも日本は、経済をある程度破壊しても、高齢者だけ死亡率の高いコロナウイルスの拡大を防ぐ道を選びました。日本の経済が死亡しないように期待したいものです。野口さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・休業者数は4月に600万人になったあと5月には400万人強に、そして6月には200万人強に減少した。しかし、潜在的な失業者であり、影響が長引けば現実に失業者となる危険がある(p5)


・「特別定額給付金」として一律10万円を支給するための事業費は、事務費を合わせて12兆8803億円だ・・・他方で、預金通貨の増は90兆円を超える。だから、預金増の大部分は、政府の支出というよりは、金融機関の融資の増加によるものだ(p170)


・実体経済から離れた株価の動き・・・経済が将来のかなり近い時点で回復するという期待がある。また、治療薬やワクチンの早期開発に対する期待があるのかもしれない(p184)


・銀行が持つ外債の約4割は投資適格級の中でもっとも格付けが低いトリプルB格であることなどを指摘した。さらに、金融機関によるドル調達の不安定化も指摘されている・・・日銀が国債を買い上げたので、日本の銀行は国債価格下落に怯える必要はない。だから、日本で金融危機が起きることはないと信じたい(p192)


・1人当たりGDPや労働生産性で韓国が日本を抜いた・・・日本の1人当たりGDPは、4万1501ドルであり、OECD平均値より約1割低い。アメリカの66%であり、第1位のルクセンブルクの約3分の1でしかない。アイルランドの約半分でしかないのを見て、多くの日本人は驚くだろう(p253)


▼引用は、この本からです
「経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか?」野口 悠紀雄
野口 悠紀雄、ダイヤモンド社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

第1章 日本経済が受けた打撃(1)休業者の激増
第2章 日本経済が受けた打撃(2)激減した企業利益
第3章 迷走を続けた政治の対応
第4章 不適切な政策が多すぎる
第5章 財政支出増でインフレにならないか?
第6章 実体経済から離れた株価の動き
第7章 ニューノーマルへの移行を妨げるもの
第8章 生産性の引き上げが急務



著者経歴

野口悠紀雄(のぐち ゆきお)・・・1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。


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