「「超」アメリカ整理日誌」野口悠紀雄
2008/07/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
アメリカ生活の長い野口さんが、日米の比較をしながら、ものの見方を教えてくれる一冊です。「岡目八目」と言いますが、外に出るからこそ、わかるものがあるのでしょう。
競争の国アメリカでは能力のない人はリストラされ、すぐに貧困層に落下する危険があるといいます。その一方で、能力がある人が、レジを打っている日本は、能力のある人を活用していないともいえるので、けっして喜べないことに思えます。
・「驚くほどの能力の人に、日本の店で会う」と先に述べた。しかし、よく考えてみれば、彼らが注文取りをしたり、玄関で靴を並べたり、勘定係をするのは、もったいないことだ。・・・能力のムダづかいであり、社会全体の労働力が適切に配分されていない証拠である。(p43)
こうした能力に応じた仕事が分配されていない、能力に応じた窮余になっていない状態を変えていくためにも、日本のビジネス全体の効率化が必要なのではないでしょうか。
より少ない人でサービスしていくことも大事だし、能力の高い人は高給で高いレベルの仕事をしてもらうのです。収入が増えれば、小子化対策にもなるでしょう。
著者に言わせれば、お役所こそ最大のサービス産業であり、その効率化が最大の課題なのでしょう。
・日本で収め続けた多額の住民税は何に使われたのか?治安維持やゴミ処理などの基本サービスを受けたのは事実だが、それ以上に特別のサービスは何も受けなかった。住民税の大部分は、市役所職員の給与に消えてしまったのだ。(p239)
しかし、リストラや業務の効率化には思い切った改革が必要となります。反対する人も多いし、協力が得られるかどうかもわからない。「戦争を止めることができなかった」日本には、改革ができないのではないか?というのが著者の意見で、なんとも寂しいものです。
・「やめる」選択肢こそ重要・・・公的年金制度の最も基本的な論点は、「現制度の維持がそもそも可能なのか」ということだ。すなわち、基本的な選択は、年金制度の廃止である。・・・年金改革はすでに手遅れになっている。(p139)
考え方の幅を広げてくれる一冊でした。良いと思えることも見方を変えると悪いともいえるわけです。さらに笑える話もあり、視野が広がるので、本の評価としては星3つとしました。
この本で私が共感した名言
・今をときめくインターネット検索でのリーダー企業、ヤフーとグーグルの創業者のうち、二人が外国生まれだ(ヤフーのヤンは台湾、グーグルのブリンはロシア)(p77)
・アメリカの医療費は・・・きわめて高額だ。西海岸の場合、保険でカバーされていないとすると、風邪で病院に行っても、また虫歯一本治療するのにも、数万円かかる。・・・盲腸で四日間入院すると150万円程度になる(p106)
・輸入制限による産業保護は、消費者が支払う価格を上昇させるだけではない。関連産業は保護に甘えて改革と進歩のための努力を怠り、衰退していく。(p180)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★☆☆(72点)
著者経歴
野口 悠紀雄(のぐち ゆきお)・・・1940年生まれ。1964年大蔵省入省。1972年エール大学留学。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。
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