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「オリジン(上・下)」ダン・ブラウン

2018/05/28公開 更新
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オリジン 上オリジン 下


【私の評価】★★★★☆(89点)


要約と感想レビュー

 『天使と悪魔』から始まったラングドン教授を主人公とするサスペンス小説シリーズ第5弾です。ラングドン・シリーズでは、「宗教」と「科学」を背景に事件が起こります。


 今回も、無神論者であるラングドン教授の教え子が、神が存在しないという証拠を発表するという計画から事件が起こります。"神は死んだ"という証拠を発表しようとする教え子にはどんな運命が待っているのでしょうか。


・"神は死んだ"・・ニーチェが記した最も名高い三語の文だ・・神を消し去る者は・・自分が神となるしかない(上p337)


 宗教の中には、人間は進化したのではなく、神が作ったということを神話としているものがあります。宗教の聖典に書いてあることが神話として事実であり、それに従わないものは異端であり、断罪されるべきであるという考え方もあります。


 例えば、人工中絶を禁じた教えを守るため、人工中絶する医者を殺害する事件もおきています。現代は、そうした宗教と科学が正面からぶつかり合い、科学が宗教を圧倒しようとしているように見えます。科学が宗教の矛盾を、明確にしてしまったのです。


・ガリレオのような者をだまらせようとヴァチカンが手を尽くしたにもかかわらず、結局のところ、ガリレオの科学は勝利した(上p47)


 宗教の矛盾が明らかになりつつある時代だと思いました。科学を取り入れた宗教、教義の違いで争わない宗教が求められているのかもしれません。名探偵コナンよりは練られたストーリーでしたので、★4とします。


 ブラウンさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・われわれはどこから来たのか。われわれはどこに行くのか・・その答えが宗教によってちがうので、どの答えが正しいか、その神の物語が唯一の真実かをめぐって、文化圏同士の争いが起るのです(上p123)


・最も凶悪なテロリストは、爆弾を組み立てる者ではなく、箍(たが)がはずれた大衆の憎しみに油を注ぎ、末端の者を暴力行為に走らせる扇動者だ。権力を持つ邪悪な人間がひとりいれば、弱い立場の人々の心に宗教的不寛容や国家主義や憎悪を植えつけ、世界に破壊をもたらすことができる(下p135)


・スペイン国憲法では、国王は"スペインの統合と永続の象徴"とされる・・多くのリベラル派はいまも国王は宗教と軍が幅をきかせた過去の圧政の遺物であるとし・・(上p284)


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【私の評価】★★★★☆(89点)



著者経歴

 ダン・ブラウン・・・フィリップス・エクセター・アカデミーを経て、アムハースト大学を卒業。母校フィリップス・エクセター・アカデミーの英語教師を勤めながら作家業を開始。2003年に発表した小説『ダ・ヴィンチ・コード』が大ベストセラーとなる。父は数学者、母は宗教音楽家。妻は美術史研究者で画家。


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