「日本の論点2018~19」大前研一
2018/05/18公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
■元マッキンゼーの
大前研一さんの一冊です。
コンサルタント時代には
通勤中に世の中の問題に対する解決策を
考えていたという。
この本も現在の日本の課題を示し、
現状を説明し、それに対する
打ち手を示しています。
国内問題から外交まで
これだけ幅広いことに対して
持論を主張できる分析力に驚きます。
・農家を食い物に巨大化してきた農協の問題点・・農協が売っている肥料や農薬は国際価格に比べて明らかに高く、ホームセンターやアマゾンで買ったほうが圧倒的に安い(p64)
■圧巻なのは北方領土問題でしょうか。
日本のマスコミはあまり報道しませんが、
なぜ日本が四島一括返還に
こだわるのか。
なぜ沖縄は返還されたのに
アメリカ軍基地が維持されたのか。
そうした経緯を示しながら、
北方領土問題はアメリカの干渉と
ロシアとの交渉の中で
沖縄方式で返還されるのではないか、
と予想しています。
・北方領土問題・・「特別な制度の下での共同経済活動」という方向性が示された。「特別な制度」とは、主権を分けて経済活動を優先させる沖縄返還方式を意味している、という見方もできる(p131)
■そして、印象的なのは大前さんは
解決策を考えるのは簡単で、
それを実行することが難しいことを
知っていることでしょう。
正しいことをすれば嫌われる。
押せば、押し返される。
冷徹でなければ改革はできない。
それが世の中なのです。
大前さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本の企業はホワイトカラーの仕事、特に間接業務の生産性向上に取り組んでこなかった・・間接業務の大半を占めるのは定型業務で、これはほとんどAIやICTで代替できる。私の経験上、人員を4割カットしても定型業務に支障はきたさない(p41)
・ゴーン氏が三菱自(動車)を立て直せるかどうかだが、それほど難しくないと思う・・三菱の系列の人たちは三菱自のクルマを買う・・努力しなくても5%売れるのだからセールスも気合いが入らない。上は上で三菱重工や三菱商事からトップが降りてくるから、生え抜き社員は気合が入らない・・組織が緩んでいるのに技術力は高い・・前の日産の状況と非常によく似ている(p107)
・新しい原発は造れないが日本にある58基の原子炉の廃炉を30年、50年かけて根気強くやれば、東芝も三菱重工も飯のタネはある。もっとも、そのような仕事しかない原発ビジネスに若く優秀な人材が集まるとは到底思えない(p101)
・ドゥテルテ大統領は、「麻薬犯罪者は殺していい」という超過激な麻薬撲滅運動を展開・・「国民の敵」を作り出し、その敵と対峙する姿勢をアピールして熱狂的な指示を生み出していく。独裁的なリーダーの常套手段である。トランプ大統領も移民やマイノリティを敵視て「あいつらがアメリカ人の職を奪っている」と訴えて、白人労働者階級から熱狂的な指示を得た(p14)
・中国共産党が日本軍を追っ払って中国人民を解放したというのは、共産党一党支配を正当化するためのねつ造された歴史に過ぎない・・外務省はこれを放置してきた。外務省のチャイナスクールや親中派の日本のメディアを中共財布が懐柔と恫喝で黙らせてきたからだ(p142)
・南シナ海・・国際法廷の判決には法的拘束力がある。中国もフィリピンも国連海洋法条約を批准していて、同条約に基づいて行われた仲裁裁判の判決を遵守する国際法上の義務を負っている。しかし国際法廷は判決を強制執行する権限がない・・「オレのものだ」と2000年も言い張れば自分の領土になる、と中国は思っているのだろう(p193)
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
▼引用は下記の書籍からです。
プレジデント社
売り上げランキング: 20,333
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
巻頭言 AI時代こそ、自分の人生に対し自らハンドルを握れ
SideA 日本の主役交代
Strategy01デジタル化による「破壊」は産業の突然死さえ引き起こす
Strategy02パンク寸前の宅配現場を救うラストワンマイルの「配達一元化プラン」
Strategy03「爆買い」バブル崩壊、百貨店業界は旅行代理店もどきの「苦肉の策」も
Strategy04小泉進次郎氏に贈るわが農協改革プラン、それは「地域農協の株式会社化」だ
Strategy05迷走50年、幕藩体制を引きずる日本の空港「非効率の極み」
Strategy06再生可能エネルギー固定価格買い取り制度は破綻している
Strategy07東芝を沈めた原発事業「大誤算」、だれの責任か?
Strategy08どん底の三菱自動車「再建の顔」としてゴーン氏は欠かせない
Strategy09殺人的な暑さの日本の真夏、アスリートファーストが聞いて呆れる東京五輪
Strategy10安倍vsプーチン、北方領土をめぐる密室会談の中身を語ろう
特別寄稿 わが日本の近現代史観
なぜ、日本はアメリカの呪縛が解けないのか
SideB 世界の主役交代
Strategy11「現金お断り」のショップも出現、世界で加速する「キャッシュレス革命」
Strategy12 20年後に主役が変わる自動車産業のガラガラポン革命
Strategy13トルコは難民流入の防波堤、その「崩壊」という悪夢におびえる欧州
Strategy14「泥沼」の中東情勢、テロと国家の戦いはまだ続く
Strategy15Strategy01南シナ海仲裁裁判敗訴した中国が引き下がらない理由
Strategy16中国とロシアが「北朝鮮」を本気で制裁しない理由
Strategy17ロシア疑惑に揺れるトランプ政権「崩壊の足音」
Strategy18公約はほぼ手つかず、トランプ政権発足後100日の通信簿
Strategy19トランプ大統領よ、アメリカの一人勝ち現象は30年来、進行中だ
Strategy20勝算は絶望的、「裏切り者」となったイギリスのEU離脱交渉
特別対談 樫本大進 vs 大前研一
著者経歴
大前 研一(おおまえ けんいち)・・・1943年生まれ。経営コンサルタント。マサチューセッツ工科大学博士。日立製作所、マッキンゼー日本支社長を経て、1992年に「平成維新の会」を設立。1994年マッキンゼーを退職し、「一新塾」「アタッカーズ・ビジネス・スクール」を設立。現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授、スタンフォード大学経営大学院客員教授等を務める。