【書評】「経営者の大罪―なぜ日本経済が活性化しないのか」和田秀樹
2018/04/26公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(82点)
要約と感想レビュー
日本ブランドを高める
精神科医でありながら、評論家として多くの著作を持つ和田さんの一冊です。今回は、「経営」に絞ったネタを集めています。
まず、簡単に海外に工場を移転する経営者を叱っています。「どこの国で作らせても同じだ」と考えているから、平気で工場を海外に移転できるというわけです。日本人の従業員への誇りと信頼がないというわけです。
また、安く作って安く売るのでは儲からないのです。信頼性と高品質の日本ブランドはどこに行ったのか、ということです。例えば、ドイツのメルセデス・ベンツは、円高でも「円高還元セール」をやりません。価格が高くても買ってくれるなら、それでいいわけです。
日本企業が、そのブランドイメージを自ら台無しにしています。グローバルな世界で生き残るには「安売り競争」に参加するしかないと思い込んで、人件費の安い国に工場を移転する。これでは、先人が作り上げてきたブランドイメージを守れません(p34)
依存性の高いビジネスは覚せい剤に近い
また、犯罪スレスレのビジネスや、パチンコ、ケータイ、ゲーム、アルコールといった依存性の高いビジネスを批判しています。パチンコなどは、どんなに生活が厳しくても、やめようとしない依存性の高い娯楽なのです。
極端ですが、これらは覚醒剤を販売しているに等しいとまで言っています。本当にお客さまが幸せになるサービス、商品を販売するのが、経営者ではないのか、ということなのでしょう。
パチンコ、ケータイ、ゲーム、そしてアルコール。近頃のテレビを見ていると、こうした依存性の高い商品やサービスのCMばかり目に付きます(p97)
国家の経営
この本でいう経営とは、国家の経営をも含むようです。和田さんの提案は、内需拡大重視、つまり消費税増税反対、所得税増税賛成です。消費税を上げれば、消費不況はさらに深刻化します。和田さんは、それなら所得税を上げて、金持ちが日本から海外に逃避するほうがましと考えているのです。
また、現代の植民地経営は株式を通じて行われることから、日本人が株式を購入するよう勧めています。実は、日本はほかの国にくらべると外国人株主の割合が低いのですが、流通株は3~5割が外国人株主になっているというのです。
"見識がある"という言葉は、和田さんのためにあるのかもしれませんね。 和田さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・経営者自身が犯罪スレスレのアコギやり方で利益を追求することが少なくありません・・不道徳なやり方でも「利益を上げた者が勝ち」ということになれば、社会全体のモラル低下は避けられないでしょう(p198)
・日本では、視聴率の高い番組や時間帯ほどCMの料金が高くなります。それに対してアメリカの場合、知的レベルの高い層がよく視聴する番組ほど、高く売れる(p43)
・(日本では)多くの企業が、知的レベルの高い人が見向きもしないような低俗な番組に高い料金を払って、CMを垂れ流している・・まともな常識のある人が見れば、「この会社はこんな番組を平気でスポンサードするのか」と軽蔑し、ブランドイメージはかえって下がるでしょう(p44)
・日本の自殺者数は三万人を下回ったことがありません・・東日本大震災の死者・行方不明者を超える「大惨事」が毎年起きていると考えると、きわめて憂慮すべき状態といえるでしょう(p82)
・血圧やコレステロール値など、健康診断の検査値を正常にするために与えられる膨大な薬が、果たして本当に患者のためになっているのかどうか・・マスコミは高血圧や糖尿病など生活習慣病の危険性を煽り立て、医者は正常値に戻す薬を処方し、製薬会社を大儲けさせているのです(p101)
・1万人を対象に行ったアコード試験によれば、血糖値を正常化させたグループよりも、血糖値をやや高めにコントロールしたグループのほうが、死亡率が低いという結果が出ました(p101)
・日本は韓国とのあいだに竹島の領有問題を抱えています・・もし、日本国内で韓国製品の「不買運動」が起きたら、どうなるでしょうか・・これは韓国にとって、かなり堪えるはずです(p59)
祥伝社
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【私の評価】★★★★☆(82点)
目次
序章 かつての経営者と、いまの経営者の違い
第1章 誰が日本ブランドを凋落させたか
第2章 内需の弱い国に未来はない
第3章 社員を死に追いやる経営者たち
第4章 会社への「信用」を破壊した経営者たち
第5章 なぜ消費者は、お金を使わないのか
第6章 なぜ「高齢者」に目を向けないのか
第7章 なぜ、日本が市場で弄ばれるのか
著者経歴
和田秀樹(わだ ひでき)・・・1960年大阪府生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、東京大学付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学を専門とする
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