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「犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人」ペマ・ギャルポ

2018/04/25公開 更新
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犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る 侵略に気づいていない日本人


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

 中国の自治区となったチベットでは、これまで120万人が中国の抑圧により死亡したという。チベットが中国に侵略されたのは、共産主義の中国に共鳴し、協力したチベット人がいたことが原因です。そして、侵略の兆候があったときに防衛力を強化しなかったことだと反省しています。


 今の日本でも中韓のために活動する日本人がいることは、チベットと状況が似ています。自衛力強化に反対する勢力が多いことについても、チベットと似ている状況に警鐘を鳴らしています。


・国家権力と資本家から、民衆や労働者を解放するという正義を掲げた共産主義革命は、現実にはチベットに見られたような民族虐殺や伝統破壊、そして政治犯収容所に代表される最悪の抑圧体制を実現し、民衆を抹殺していったのだ(p169)


 また、中韓は国際条約をいつでも破るということが、歴史的な事実です。自分の都合が良ければ条約を守ればよく、自分に都合が悪ければ条約を破ればよいというのが、中韓の基本スタンスです。


 相手が強ければ、頭を下げて相手を安心させ、相手が弱くなれば相手の頭を叩くのです。相手が歴史問題で譲歩するなら、事実か嘘かは問題ではなく自分の利益になれば、何でもするということなのでしょう。


・中国という国は、その時々の自分の都合、相手との力関係で、簡単に前に決めた条約などは破るか、まるでそんな事はなかったように振る舞うのだ。それなのに日本は、「日中友好」という幻想にあまりにもとらわれ、常に裏切られ続けてきたように思える(p148)


 チベット人の反省と危機感は、日本人にとっても貴重だと思いました。国を失ったイスラエル人が反省しているように、パレスチナ人も反省していし、チベット人も反省しているのです。一度国家を失えば、その国の人たちは侵略者から見れば、テロリストとなります。そうした冷徹とした現実があるのだと思いました。


 ギャルポさん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・辛亥革命後、清国に変わって成立した中華民国もまた、チベットに対しては覇権主義を露わにし、チベットはますます日本に協力を求めるようになる(p42)


・ワンゲルらは、チベットを追放されたのち、改革の実現を夢見て中国共産党に入党し、結局中国のチベット侵略を呼び込むことになってしまう(後に彼らは、分離主義者、独立派として、中国から批判、弾圧される対象となる)(p47)


・国が侵略にさらされたときに、それに備えるための内部改革、そして国防体制をとらなかったことが、チベットが、やすやすと中国の侵略に敗れたことの一つの原因であることを、私たちチベット人が冷静に見つめなければならない(p50)


・チベットを滅ぼしてしまった原因の一つとして、国内の団結力のなさ、国際感覚のない一国平和主義、外交交渉の不手際などがあったことはチベット人として率直に認めざるを得ない事実である(p63)


・チベット側の代表団団長だったアボ・アワン・ジグメは、この後、徹底的に中国側に立つ行動を取るようになる。同じ民族の中に、中国に内通する人間を作り出していくのも、中国の得意なパターンである(p51)


・「日中友好」・・・日本がしばしば行ってしまうように、片方だけが友好の意思を持っても、それは相手に付け入られ、利用されるだけである。「日本は隣国と仲良くならなければならない」「対話しなければならない」と言うならば、相手の「隣国」の側も同じ姿勢と意思を示してくれる必要がある(p120)


・日本人にとって、国家間の条約は原則守るためにあるとしても、中国にとっては全く異なる。条約を破ることなど、彼らは全く何とも思わないし、むしろ破るためにあったことは、このチベットの例を見ても明らかだ(p54)


・例えば日本のNHKなどを見ていると、これは果たして、本当に日本の公共放送なのかという疑問を持つことすらある・・NHKの番組はしばしば第三者的な、中立報道に名を借りて日本の立場を明確にしない放送をしている・・国際感覚の欠如なのだ(p111)


・現在(2017年末)これほど北朝鮮情勢が緊迫化しているというのに、例えば防衛力の増強、防衛予算の増額の必要性が、2017年の衆議院議員選挙でもほとんど議論にならなかったことは、実は国際的には異常なことなのだという認識を日本国民も政治家も持つべきではないだろうか(p118)


・天安門事件当時、私にとって大変残念なのは、当時の西側諸国の多くが中国に対し一定の経済制裁で抗議の意思を示したのに、日本がむしろその流れに逆行してしまったことだった(p144)


・なぜ日本のみが歴史問題で抗議を受けるかといえば、それは、日本は歴史問題を持ち出せば譲ると見られているからであり、事実、戦後の歴史は正直にそれを証明しているのだ(p181)


・2015年、ユネスコは、中国の申請した「南京大虐殺」を記憶遺に登録した・・記憶遺産とは、一次資料として世界が納得できる資料でない限り登録対象ではないはずなのに、何ら客観的証拠のないものをユネスコが認めたことはおかしい。しかし、同時にそれならば、はるかに証拠もあり、国際的にも異論のない、チベットや通州の虐殺も、登録される可能性はあると思っていた・・ユネスコはこの二件とも登録は認めなかった(p188)


・ワイドショーは、議員の不倫か、あるいは森友学園、加計学園の問題、そしてそれ以前は、稲田防衛相在任時に中東における防衛日誌が一部紛失したのではないかなど、私から見れば、本質的とはとても思えない問題の議論に終始し、国家をどう守るべきかというテーマはほとんど論じられなかった(p231)


・1992年4月、当時の中国国家主席、江沢民が訪日した。後に彼が徹底的な反日教育を行い、天皇陛下に対しても人民服で晩餐会に訪れるなど非礼な態度を取ることは今では周知の事実だが、このときは「本年の天皇訪中を中国人民は心から歓迎したい」と正式に天皇陛下を招請した。日本はこのときは宮澤喜一内閣だったが、自民党内でも、また世論も反対論が根強かったはずなのに、金丸信自民党副総裁、そして橋本恕中国大使からの強い要請で、10月に訪中が実現した(p145)


・南京事件は、確かに東京裁判で提起されたものだが・・慰安婦問題に関しては、80年代までは韓国も全く沈黙していた。これらの問題は、70年代以後、日本のジャーナリズムによって提起されたものであり、それが政治的に利用できると考えた中韓政府によって、今、日本批判の材料として使われているのだ(p164)


・無条件に相手国の、しかも独裁政権下での証言を正しいものとみなすのは、報道や取材ではなく、ある種のプロパガンダではないか。事実、本多氏が『中国の旅』で紹介したさまざまな証言記録の信ぴょう性に疑いを抱かざるを得ないことは以下の引用部分を読むだけでも明らかである(p166)


・河野談話は、日韓がその内容を事前に協議し、かなりの程度韓国側の言い分を取り入れたものだった。おそらく日本側は善意で、たとえ証拠はなくても、一定程度韓国側の言い分を受け入れれば、この問題は収束できるという判断があったのだろう。だが国際社会では、一度してしまった謝罪は、相手方が利用しようと思えばいくらでも利用される(p174)


▼引用は下記の書籍からです。
犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る 侵略に気づいていない日本人
ペマ・ギャルポ
ハート出版 (2018-02-10)
売り上げランキング: 9,352


【私の評価】★★★★☆(83点)



目次

第一章 私の原風景「六〇年代の日本」
第二章 チベットの悲劇と日本
第三章 失われた日本の文化、言語、国家観
第四章 「国際化」の流れの中で国際感覚を失った日本人
第五章 チベット人が見た覇権国家・中国
第六章 歴史問題と日本の自己責任
第七章 大東亜会議の意義
第八章 日本の難民問題と憲法改正
第九章 「おかげさま」の復興へ


著者経歴

 ペマ・ギャルポ(Pema Gyalpo)・・・1953年、チベット・カム地方のニャロンに生まれる。1959年、中国軍の侵略によりインドに脱出。1965年、日本に移住。1976年、亜細亜大学法学部卒業。1980年、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表。現在、拓殖大学客員教授、チベット文化研究所所長、アジア自由民主連帯協議会会長。2005年、日本に帰化。


チベット問題関係書籍

中国人の少数民族根絶計画」楊海英
中国の移植犯罪 国家による臓器狩り」 デービッド・マタス、トルステン・トレイ
「犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人」ペマ・ギャルポ
チベット大虐殺と朝日新聞」岩田温
チベット入門」ペマ・ギャルポ


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