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「チベット入門」ペマ・ギャルポ

本のソムリエ 2022/03/05メルマガ登録
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「チベット入門」ペマ・ギャルポ


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 ロシアのウクライナ侵攻もあり、大国が小国を侵略することはよくあることということで、手にした一冊です。現在の中国の「チベット自治区」は、チベットという独立国家でした。ところが1949年、中国共産党が内戦で勝ち政権を取ると、中国は武力を背景に、チベットを併合してしまいました。


 その時の「17条協定」では軍事・外交以外の内政はチベット政府の自治にゆだねることになっていましたが、結局中国は軍を派遣し、内政干渉し、仏教を弾圧しました。1959年には、これに反発したチベット民衆が決起しましたが、人民解放軍はこれを殲滅する作戦を実施し、多くの死者を出しました。現在のウクライナ危機もウイグル問題も、実は歴史の繰り返しにしかすぎないように私には感じるのです。


・中国解放軍は八方面からチベットに侵入を開始、東チベット首都シャドムに全面攻撃を加えていた(1950年10月7日)(p119)


 チベットは自治や宗教の自由を保障すると騙されて中国の併合され、7,8年すると農業の集団化が強制されたり、寺院が破壊されてしまったのです。1959年の血塗られた金曜日と呼ばれる弾圧では、裕福な地主や村のリーダーが野原に集められ、中国人によって銃殺されたという証言があります。また、裕福な人を磔にして火あぶりにしているのを中国人に見ているよう命じられた人もいたそうです。


 1950年から1984年までの間に死んだチベット人は120万人以上になるとチベット亡命政府は発表しています。割り引いて考えても万人単位でチベット人の命が失われたのは事実なのです。中国はこれをウイグルで再度行っているにすぎないのです。武力と騙しで併合。土地と富を奪い、反発したら住民を殺害、収容所送りというのが中国のパターンであることがわかります。最近は、収容所の犯罪者を臓器提供の資源としても有効活用しているのです。


・数多くの人々が財産を公開しなかったという理由で処刑された(p199)


 朝日テレビの玉川という人間が現在のウクライナへのロシア侵攻に対して、「圧倒的な戦力差があるなかで、長引けば、市民の犠牲が増える・・・命を守ること以上に、大事なことは果たしてあるんだろうか」と述べています。私はこの本を読んで「命を守ることを選んだチベット人は、国を失い、結局、多くの命を失った」ことを知りました。当時のチベットには表面上もっともらしいことを口にする人間を信じる人が多かったのでしょう。そしてその先には地獄が待っていたのです。


 ギャルポさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・1959年の侵略以後、中国はチベット人の教育に全く努力を払っていません・・・1984年に中国が発表した資料でも、分盲半文盲の比率が74.83%(p13)


・約4500あったチベットのお寺は99%破壊され、1984年段階で寺院活動しているのは、中国側の発表でも45寺院にすぎません(p15)


・公安局というのはナチスのゲシュタポのようなものであります。彼らは地方においては法律であり、その法律の執行者であり、唯一絶対である共産党の代弁者でもあります(p34)


・汚職は資本主義の生産物ではなく、むしろ共産主義社会において、それが慣習のようなものであることを、今回の訪問で知りました(p36)


・立派な毛織物工場を見せてもらいました・・・こういう工場では、チベット人はほとんど働けないのです(p33)


・一部の過激な青年たちの中には「我々を本当に助けてくれるのはソ連だ・・・ソ連に対する見方を変え、助けを求めるべきだ。」と訴える者もいました(p38)


▼引用は、この本からです
「チベット入門」ペマ・ギャルポ
ペマ・ギャルポ、日中出版


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

チベット紀行
チベットとは
チベット小史



著者紹介

 ペマ ギャルポ (Pema Gyalpo)・・・1953年、チベット・カム地方のニャロンに生まれる。1959年、中国軍の侵略によりインドに脱出。1965年、日本に移住。1976年、亜細亜大学法学部卒業。1980年、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表。現在、拓殖大学客員教授、チベット文化研究所所長、アジア自由民主連帯協議会会長。2005年、日本に帰化。


チベット問題関係書籍

中国人の少数民族根絶計画」楊海英
中国の移植犯罪 国家による臓器狩り」 デービッド・マタス、トルステン・トレイ
犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人」ペマ・ギャルポ
チベット大虐殺と朝日新聞」岩田温
「チベット入門」ペマ・ギャルポ


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