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「「リーダーの条件」が変わった」大前 研一

2018/03/16公開 更新
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「リーダーの条件」が変わった (小学館101新書)


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

リーダーには、平時のリーダーと有事のリーダーがあるという。原発事故、高齢化、減る人口、政府の借金の膨張、伸びないGDP。今、日本は右肩下りの時代にあるのです。この時代を乗り切るためには、まさに有事のリーダーが必要であるということです。


あらゆる組織において、大きなリストラや方針変更は、トップでなければ決断できません。そうした決断を先送りすれば、業績を維持するのが難しいだけでなく、破綻は時間の問題。実はどうあるべきか、何を優先し、何を切るべきか、誰もが知っているのに、できないことがあるのです。


そうしたしがらみの中で正しい決断ができるのが、有事のリーダーなのです。日立グループを再構築した川村隆さん、クロスファンクショナルチームで日産を立て直したカルロス・ゴーンが頭に浮かびます。


・リーダーの役割は、尖閣諸島問題のような重要な案件が発生した時に自分の意見を述べることではない。過去の経緯を調べ、複数の専門家を呼び、歴史的、地理・地政的、国民世論的などの多面的な立場から意見を出させ、最終的な判断を下すことである(p110)


リーダーシップの定義が面白いと思いました。リーダーシップとは、自分以上の知識や能力を備えた人材を選び抜いて部下としてそばに置き、彼らが上司(すなわち自分)の判断に対しても異を唱えられるような有機的なチームを作る能力のことなのです。


例えば大前さんが日本のリーダーだったならば、農家の高齢化という深刻な問題に対しては、円高であるとすれば、アメリカのカーギルやADM、フランスのルイ・ドレフェス、オランダのブンゲなどの穀物メジャーを買うという。また、世界の農地に日本の農業技術・ノウハウを売り込んで、ウクライナ、アルゼンチン、ブラジル、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、タイ、ミャンマー、中国、インドといった世界の農業最適地に投資をして現地の農民を支援し、生産物を買い上げるという。


・会社を横切る問題、すなわちクロス・ファンクショナル(機能横断的)な問題を解決するのは各部門のトップの仕事であって、中間管理職レベルの仕事ではない・・横の風通しが悪いのは、そもそもCEOの責任なのである(p65)


最強の軍隊とはアメリカ人の将軍、ドイツ人の参謀、日本人の兵士と言われるくらい日本人は優秀なのです。ただし、良い将軍と参謀がいればの話なのですが、良いリーダーはどこにいるのでしょうか。


アメリカの「フォーチュン500」(全米上位500社ランキング)の300社以上にインド人の副社長以上がいるということは、アメリカは人材を世界に求めています。日本人の副社長以上のインド人はゼロでこの差は大きいのでしょう。大前さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・川上哲治・元巨人軍監督が「ファインプレーが多いのは二流の選手だ。一流の選手は考えているからファインプレーが少ないのだ」と解説しているのを聞いたことがあるが、それは経営者にも当てはまる(p20)


・取材攻勢を受けたが、「政策」に関心をもっている政治記者には会ったことがない。彼らは、永田町で次は誰と誰が組むのか、誰が政権を握るのかという「政局」にしか関心がないのである(p37)


・水道事業を集約して広域化し、少なくとも道府県単位、できれば道州単位で再構築すべきだと思う・・最も上流の美味しい水が農業用水、次が工業用水となり、水道水は最も下流の汚い所で取水している(p150)


・日本の個人部門の金融資産は約1400兆円から借金を差し引いた正味の約1000兆円、不動産資産は約1500兆円と言われているから、税率を時価の1%と設定すれば、税収は年間約25兆円。これに法人部門の約10兆円を加えると、合計で年間約35兆円に達する(p169)


・"ジェラシー動機の権化"が相続税である。あいつはろくに仕事もしていないのに親の遺産で高級外車を乗り回している、という類のジェラシーが背景の税金なのだ。ところが、農家は相続税が免除されている・・農家の7割が兼業農家で、その収入の9割が農業以外と言われる状況になっている(p173)


▼引用は下記の書籍からです。
「リーダーの条件」が変わった (小学館101新書)
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大前 研一
小学館
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【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

はじめに―能力なきリーダーしかいない日本の不幸
第1章 現状認識―東日本大震災でわかった「危機に克つリーダー」の条件
第2章 対策―組織を元気にするリーダーシップの育て方
第3章 比較研究―日本が学ぶべき世界のリーダーシップ
第4章 提言―私が「リーダー」だったら日本の諸課題をこう乗り越える
おわりに―「強いリーダー」は強い反対意見の中から生まれる



著者経歴

大前 研一(おおまえ けんいち)・・・1943年生まれ。経営コンサルタント。マサチューセッツ工科大学博士。日立製作所、マッキンゼー日本支社長を経て、1992年に「平成維新の会」を設立。1994年マッキンゼーを退職し、「一新塾」「アタッカーズ・ビジネス・スクール」を設立。現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授、スタンフォード大学経営大学院客員教授等を務める。


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