【書評】「1分間孫子の兵法 差がつくビジネス教養2」孫 武、齋藤 孝
2018/01/10公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
「孫子」は現実主義
「孫子」は、紀元前500年も昔の書です。「孫子」が読み続けられるのは、その内容がドラッカーと同じように現実を表現しているからでしょう。その軍略は軍事だけでなく、ランチェスター戦略と同じようにビジネスにおいても参考となるものです。
例えば、自軍の兵力が十倍であれば敵軍を包囲し、五倍であれば敵軍に正面攻撃をかけ、二倍であれば敵軍を分断し、互角であれば必死に敵と力戦奮闘し、少なければ巧みに敵の攻撃圏内から離脱し、まったく兵力が及ばなければうまく敵を回避して潜伏するとしています。大軍は分散させて個別に撃破すればよいのです。
兵法家の間で優れていると称されるのは容易に勝てる態勢の敵に勝つ者である。それだから優れた者が戦う場合は、世間を驚かせるような奇抜な勝利もなく智将だとの名声もなく、勇敢な武功もない(p25)
外交とは詭道なり
世界の国家間の衝突を見てみれば、まさに「外交とは詭道なり」だと思います。いかに自分側が正しいのか、開戦理由を作り出すという工作は当たり前におこなわれています。
市民団体、マスコミに細胞を送り込み、自分に有利な世論を作ることも基本的な工作といえるのでしょう。戦争は始まっているのです。
兵とは詭道なり・・戦争とは敵をだます行為である・・正面衝突して多くの血が流れ、資産が失われるよりは、偽ったり、弱みをついたり、油断させたりして戦いを早く終結させるほうがいいのです(p35)
外交とは詭道なり
「不利を承知で」勝負に出るのは愚かであり、「不利を知らずに」進むのは敗北を招くと、耳に痛い言葉が続きます。
唯一、孫子の時代と違うのは、どのような手段を用いても勝てば良いわけではないことだと思いました。つまり、情報が簡単に世界中に発信される時代には、嘘であっても、より合理的で道義的にも正しい行動が求められるのです。
齋藤さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・勝利する軍は、勝利を確定しておいてから、勝利を予定通り実現しようと戦闘するが、敗北する軍は、まず戦闘を開始してから、その後で勝利を追い求める(p15)
・1戦ってよい場合と戦ってはならない場合とを分別しているのは勝ち。
2大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通しているのは勝ち。
3上下の意思統一に成功しているのは勝ち。
4計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待ち受けるのは勝ち。
5将軍が有能で君主がよけいな干渉をしないのは勝ち(p23)
・はじめは粗暴に取り扱っておきながら、後になって兵士たちの離反を恐れるというのは、配慮が粗雑なことこの上ない(p122)
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【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第一章 自己に勝てる者が相手を制する--強さとは何か
第二章 一つの戦い方に依存しすぎるな--戦略とは何か
第三章 情報を握る者が人心を掌握する--情報戦の心得
第四章 敵を破壊せずに敵の利を奪え--実戦の心得
第五章 部分最適より全体最適が正しい--進退の心得
第六章 感情を統率するのは合理性である--リーダーの心得
第七章 時間と状況が味方につくまで待て--好機とは何か
第八章 すぐれた上司ほど部下を追い詰める--戦意とは何か
第九章 できれば静かに生きられる道を選ぶ--人生とは何か
著者経歴
齋藤孝(さいとう たかし)・・・1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。日本語ブームをつくった『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞。著書に『語彙力こそが教養である』 (KADOKAWA)、『知性の磨き方』『悔いのない人生』(小社)など多数。NHKEテレ「にほんごであそぼ」総合指導。
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