「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)」マイケル・サンデル
2014/06/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
要約と感想レビュー
本質を議論する
ハーバードで2005年に行われたマイケル・サンデル教授の白熱教室です。サンデル教授の特長は、日常にある物事について議論することで哲学上の課題を浮かび上がらせることです。
例えば、高額所得者から高い税金を取るのは正しいのか。税金は富を盗むことだ、と考える人もいるし、富の再配分のためには必要と考える人もいるのです。
ノージックは、税金を課すことは所得を取り上げることに等しいと言う・・リバタリアンにとっては、再配分のための課税は盗みである・・課税は道徳的に強制労働に等しい(p102)
徴兵制と志願制はどちらがいいのか
「お金」の議論では、徴兵制と志願制はどちらがいいのか?代理母の契約は成立するのか?といった議論が行われています。つまり、徴兵制は平等なのか、強制なのか。志願制は、命と金を交感しているのではないのか。それとも、愛国心の問題なのか。いろいろな論点があり、考え方によって結論が変わってくるのが面白いのです。
また、家族を養うためにパンを盗むのは間違っているのか?子どもが死なないように必要な薬を盗むことは許されるのか?などと、学生に問いかけています。
面白いのは、会費制の消防会社の事例でしょう。つまり、会費を払っていない人が、家が火事になったから、消防会社と契約しようとしたです。消防会社は契約を拒否したというエピソードです。なぜなら、事前の備えを怠っておきながら後から保険に入ることはできないからです。
これは、東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所がメルトダウンしましたが、東京電力が負担すべき原子力賠償費用の半分を他の電力会社が保険のようなものとして負担していることを揶揄しているのだと、私は日本人として感じて恥ずかしくなりました。
南北戦争の間、北軍は兵士を補充するのに・・・徴兵によって兵士を採るが、招集されても軍隊に行きたくなければ、自分の代わりに誰かを雇うことが認められていた。・・・これが公平だと思う人、南北戦争のシステムに賛成する人は?(p165)
ロジックで議論する
欧米の人は、ルール、ロジックで議論すると言われます。つまり屁理屈で勝負する。そのために理屈を研究する仕組みが必要であり、その一つが哲学だと思いました。
そして、サンデル教授は、生徒の名前と意見を覚え、議論を仕切っています。すごい記憶力です。サンデルさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・リバタリアニズム[自由原理主義、市場原理主義]・・・リバタリアニズムは、個人の自由や所有権を含む権利を非常に重要と考える。(p94)
・功利主義は、最大多数のための最大幸福に重きを置いているため、個人の権利を尊重することができない(p67)
・リスク分析センターが行った費用便益分析では、運転中に携帯電話を使うことでもたらせる便益と、失われる命の価値はほぼ同じだという結論が出た。・・命の価値をドルに換算するのは間違いだとは思わないかな?(p58)
▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★★★★(90点)
目次
第1回 殺人に正義はあるか
第2回 命に値段をつけられるのか
第3回 「富」は誰のもの?
第4回 この土地は誰のもの?
第5回 お金で買えるもの 買えないもの
第6回 なぜ人を使ってはならないのか
東京大学特別授業―イチローの年俸は高すぎる?
著者経歴
マイケル・サンデル(Michael J. Sandel)・・・1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者として知られる。ハーバード大学の学部科目"Justice(正義)"は延べ14,000人を超す履修者数を記録。建学以来初めて講義を一般公開することを決定。
ハーバードの関連書籍
「ハーバードの人生を変える授業」タル・ベン・シャハー
「ハーバード日本史教室」佐藤 智恵
「ハーバード白熱日本史教室」北川 智子
「新ハーバード流交渉術 論理と感情をどう生かすか」R. フィッシャー、D. シャピロ
「最新ハーバード流 3D交渉術」デービッド・A・ラックス、ジェームズ・K・セベニウス
「ハーバード式 最高の記憶術」川﨑 康彦
「ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ 」ロバート・スティーヴン・カプラン
「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)」マイケル・サンデル
「ハーバード流宴会術」児玉 教仁
「ハーバードからの贈り物」デイジー・ウェイドマン
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