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「自衛隊の情報戦―陸幕第二部長の回想」塚本 勝一

2014/06/20公開 更新
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自衛隊の情報戦―陸幕第二部長の回想


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

 慰安婦関係で情報収集するなかで、実際に南京に従軍した塚本さんの一冊を発見しました。塚本さんは陸上幕僚監部第二部(情報担当)長、西部方面総監を歴任しています。


 中国大陸での戦いは、軍隊と住民の見分けがつかない中での戦いであり、誤って民間人を殺すこともあったようです。ゲリラ戦ですので、民間人と軍人を見分けるのは困難です。欧米なら「人間の盾作戦」とかいって非難するのでしょうか。


・敗残兵へ軍服を脱いで便衣(一般人の衣服)に着替え、難民や一般住民のなかに紛れ込む。日本軍が手薄と見るや、隠し持っている武器を向ける。(p48)


 南京事件にしても、従軍慰安婦にしても、完全に情報戦に完敗したとしています。軍隊が慰安所を設置するはずがないはずで、当時従軍した人はすべて知っているはずです。国内外のメディアで、事実と違うことが報道されてしまっているのです。


 さらに、慰安婦への軍の関与を認めた「河野談話」は、中国、韓国の外交の勝利ということなのでしょう。情けない話ですが、諜報の世界では、ゾルゲ事件並の成功事例ではないでしょうか。


・そもそも軍は、慰安所の設置、運営にまったく関与していないのである。・・・衛生面では、軍医が定期的に性病の検診をしており、これは厳格であった。(p55)


 こうしたことは、やはり日本における広報、情報戦への理解が少ないためでしょう。アメリカでは、攻撃ヘリの攻撃画像が録画され、YouTubeで公開されている時代です。オサマ ビン ラディン 殺害時には、特殊部隊からの画像が、ホワイトハウスで生中継されている。一方、日本ではスクランブルしても、敵機の写真しかないという淋しさです。


 著者は当時の日本軍の指揮官や参謀の広報不足と指摘しています。これは情報機関がない日本だからなのか、そもそも日本には情報戦のセンスがないのか。まことに残念ですが、今後に期待したいものです。


・日本軍の高級指揮官や参謀が、広報の重要性を認識していれば、多くの外国人ジャーナリストを従軍記者として招待したであろう(p52)


 本日、「河野談話」の検証報告書について、衆院予算委員会が、政府から報告を受けるそうです。マスコミはどう報道するのでしょうか。塚本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・民間の業者が慰安婦を募集して遊郭を作り、それを戦地に設営することは、軍とはまったく関係ないことだ(p55)


・慰安婦問題の例を見ても、謝罪に謝罪を重ねて、ついには「河野談話」にまでなってしまった。・・・ここに記載されていることは、私、そして戦友たちが現地で実際に見聞したことと、まったく相反している(p63)


・「南京事件」では、広報、宣伝戦において最初から日本は完敗した。・・・まるで事実と違う内容の本が世界中に出回っている・・・それどころか、日本の大手メディアまでも、中国の宣伝に便乗し、ありもしないことを報道している。(p60)


・昭和12年7月29日に中国保安隊による日本人虐殺事件が起きた。犠牲者は軍人と在留邦人合わせて106名と記録されている・・・通州事件は・・とにかく凄まじいことで、いかに人を苦しめて殺すか、そのことにかぎりない愉悦を見出すというのだから、大陸の民は恐ろしい(p46)


・敵と接触すると・・ほとんどオウム返しに「攻撃」と答える。「防御」などと答えた学生は落第である・・・私が学んだイギリス陸軍の参謀大学では、攻防の選択を「任務の達成の可能性によって決める。もし防御で任務が達成できるならば、防御を選べ。防御であると戦力が三分の一で済む」と教育していた。合理主義の国民性がうかがえる(p229)


・北朝鮮が核実験を強行した・・・日本に届く弾道ミサイルの実験をして、すでに配備を終えている。・・・今すぐ対処の方法を立てなくてはならないほど切迫しているのである(p231)


・人には、能力のシーリング(天井)というものがある・・・たとえば連隊長として優れた能力を発揮した人だからといって、次の段階の師団長としてよい成績を上げるとは限らない・・己のシーリングを超える職責には就かないほうが賢明である(p204)


自衛隊の情報戦―陸幕第二部長の回想
自衛隊の情報戦―陸幕第二部長の回想
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塚本 勝一
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

1部 歴史に学ぶ
2部 「よど号事件」に見る危機への対処
3部 金大中事件にまつわる誤解、中傷に終止符を
4部 国防と情報のあり方を考える



著者経歴

 塚本勝一(つかもと かついち)・・・1921年、兵庫県生まれ。1940年、陸軍士官学校卒業(54期)、1945年、陸軍大学校卒業(60期)。1951年、警察予備隊入隊。1955年、アメリカ陸軍歩兵学校留学(通信将校課程)。1959年~1960年、イギリス陸軍大学校留学。1967年~1971年、在ソウル日本大使館防衛駐在官。この間に「よど号事件」突発。1971年~1973年、陸上幕僚監部(陸幕)第2部長。1973年、陸将。1973年~1974年、通信学校長。学校長就任直後に「金大中事件」起こる。1974年~1976年、陸幕副長。1976年より西部方面総監、1978年、退官。1979年~1987年、サンケイ新聞客員論説委員。1986年~2003年、平和・安全保障研究所理事、理事長


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