「これだけは言っておきたい21世紀への遺言(エール)」糸川 英夫
2013/12/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(89点)
要約と感想レビュー
バブル崩壊中の1996年にペンシルロケットを開発した糸川教授が書いた一冊。糸川教授は1987年のバブルまっただ中で、日本経済が危ない!と警告しています。その眼力のすごさがわかりますが、糸川先生から見た21世紀は、どんなものなのになるのでしょうか。
まず、未来の有望な技術としてクローン技術、水資源、小水力発電を挙げています。特に小水力については、太陽光と比較して、発電電力量が多く、安定して出力を出すことから有望であるとしています。
現在でさえ、あまり光が当たっていない水力の将来性、可能性を指摘しているのはすごいと感じました。iPS細胞のようなクローン技術も的中していますし、水資源についても最近、重要性が高まっています。
・ボランティアでの水車発電を再考せよ・・・年間発電量は同じ定格出力について、水力は太陽の十倍近い・・・今流れている水のエネルギーを幾分でも回収しようという簡便な水車の場合、もしそれが個人の自由に任せられ、しかも太陽発電並みの売電価格だったらなら、それでも利益を上げようとする人間、集団はいくらでも出てくる・・(p291)
国家戦略としては、3点。
まず、日本をドル通貨圏にしてしまう。これで、アメリカとの経済戦争は回避することができ、日本の通貨を基軸通貨にできます。
そして産業のアジア進出の先には、"アフリカ"に進出します。中国は独裁国家ですから、いずれ発展は止まります。先の先を読んでいるのですね。
最後は、封建時代のなごりである官僚制度をなんとかする。官僚を改革する打ち手としては、民間の力を利用した第四セクター(NPO等)だとしています。
・円が基軸通貨になれない理由は、第一は日本の円は土地本位制で印刷されており・・第二に、通貨発行の前提としての土地本位制を防御する能力もない・・・世界全体のどこの国の侵略に対しても、それに太刀打ちする国力、政治力(理念力)、軍事力がないと、円は基軸通貨にならない(p121)
17年前の本とは思えませんでした。未来はすでに起きている。見えている人には見えているのですね。糸川さんの考え方を学ぶべく書籍を追加購入しました。後でご紹介します。
糸川さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・人類は永久に生命を創ることはできない。ただ生命を理解することはできる。・・・これは生命のクローン系を利用することが始まるということでして、巨大な産業を生む(p98)
・水をこれからどう守っていくかは人類の新しい仕事になっていくと思います・・・(p241)
・中国をはじめアジアへの進出ラッシュですが、その先にはアフリカがあるのです。アフリカまでを射程に入れた世界のシステムづくり、新しい創業社会化に日本も経済的に参加していくことが、重要でしょう(p267)
・政府が税金でやれば・・・どうしても国債の発行に頼り、未来へつけを回すことになります。それなら、第四セクターでそれをやればどうかというのが私の考え方です(p275)
・「官」は「民」より上位にあるという、日本の封建時代の長い歴史を引きずっています・・・「シビル・サービス」という言葉を浸透させておけばよかった・・・そうすれば、日本ももっと機敏な行政、親身な立法の国になっていたでしょう(p202)
・たくさん持っている外準ドルで、日本は一体アメリカから何を買うべきか・・・アメリカのビルより、アメリカの土地、潜在的にまだ利用されていない土地の使用権を買うべきだと私は思います(p123)
・円とドルの対立ということが結局問題になるから、それは面倒臭いから、今のうちに、そういう問題が起きる前に、日本をドル通貨圏にしちゃったほうがいい。(p127)
・私が特に懸念しているのは原子力発電です・・・放射性廃棄物といわれるごみが出す放射能は数万年にわたって人類を脅かすものです。・・・我々の後に生まれる生物系に悪影響を及ぼすことは必至です(p224)
・法律上、官吏としての犯罪(直接管轄における便宜供与=汚職)さえ犯さなければ、退職後に地位を利用してお金がもらい放題・・・高級官僚ほど高い退職金をもらって退職し、民間や半官の法人組織への天下りを繰り返すのが当然となっています(p244)
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【私の評価】★★★★☆(89点)
目次
第1章 世紀末をこのビジネスで乗り越えて二十一世紀につながれ
第2章 二十一世紀大予想
第3章 二十一世紀に日本はアメリカの五一番目の州となる
第4章 二十一世紀のストーリー―断片知識の夢の島を脱出せよ
第5章 ソフトマテリアル・パス―未知の無公害技術
第6章 民主主義から「人間原理」へ―二十一世紀には政治の目標が大変革
第7章 「個在共存」、二十一世紀を予測する条件
第8章 ポピュレーション・セオリーが二十一世紀の哲学になる
最終章 「二十一世紀人類大繁栄」を逆転予測する
著者経歴
糸川 英夫(いとかわ ひでお)・・・・日本の工学者。(1912年7月20日生まれ、1999年2月21日没)専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットに始まるロケット開発で「ロケット開発の父」と呼ばれる。1967年、東大を退官し組織工学研究所を設立。
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